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剥製屋事件簿<山わらわ>  作者: 仙堂ルリコ


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4/4

マユの推理

「不可思議な事件ね。犯人は簡単には捕まらないかも」

 マユは事件に興味を持った。


「被害者の投稿を見た奴には違いないんだ。フォロワーなんじゃないの」

「……」

 マユは指を頬にあて、ゆっくりと工房の中を歩く。

 推理が始まったのか。


「分かっている被害者の行動は、時系列だと、こうね」

 ①2時半  県道北側、看板地点 

 ②4時15分 県道南側 楠本酒店(G駅始発のバス)

 ③5時までに死亡(殺害) 

 ④6時5分から7時の間に橋に遺棄された


「うん。①で『誰か車で来て欲しい』と投稿してる」

「それから?」

「犯人が車で……あ、違う。誰も来ないからバスで酒屋に移動……これも違う」

 看板地点から酒屋までをバスでは行かない。 看板地点から一番近いバス停が酒屋前だから。


「看板のところに2時間も居ないでしょ。バスに乗ってG駅前に行ったのでは?」

 4時以降に行くと犯人から連絡があったのかもしれない。 

 誰からも連絡が無かったのかも知れない。

 G駅まで行けばコンビニもカフェもある。

 時間つぶし、できる。

 その後……日没前に、目的地近くにバスで戻った。


「薫さんが姿を見た後、被害者はトイレに行った。犯人との接触は4時20分以降でしょうね。犯人と接触から殺されるまで最長で40分。短い時間に何があったのか謎ね。殺害方法も不可解。帽子を喉に突っ込むなんて」

「……そうかなあ」

「犯人の車に乗ったとして……運転中は不可能でしょ?」

「それは……無理だね。犯人は1人じゃ無いかもしれない。けど、フォロワーなのは確かだよ」


「……本当にフォロワー?」


「被害者の投稿を見て接触したんだよ。『生首現場』で、あの橋と分かったんだから」

「セイ、それなんだけど……間違えてると思うの」

「間違えてる?……何を?」

「『生首現場』って、あの橋かしら?」


「マユも憶えてるよね、あのグロい事件。橋の上に女の……」

 思い出したくない陰惨な事件。

 回顧してみて、やっと気づいた。

 アレは、生首、じゃ無い。

 ……首が、無かったんだ


 女の『首無し死体』だった。


「思い出したみたいね。……じゃあ、『生首現場』はどこかしら?」

「そうだ、首の方は、後から見付かったんだ。上流の河原だ」


「ええ、そうよ。『生首を抱えている死体』が見付かったの」

 男の死体が、女の生首を抱いていたのだ。


「うん。思い出した。……けど、あれって『生首現場』じゃないよな。『イノシシ男現場』だよな」

「そうね。あの場所を『生首現場』とは呼ばなさそう。で、他にもあったでしょ、『生首』。心当たりは無い? 忘れちゃったの?」

 

「生首……あったっけ。うっ、あった」

 アルミホイルに包まれた生首、

 記憶の端からヒョイと脳裏に出現。

 シロとアリス、犬2匹が河原を運んできた光景が蘇る。

 あの<生首>の発見場所は、報道では剝製工房下の河原。


「看板の写真は、現場到着の意味だったんじゃない?」

「犯人は勘違いしたのか。俺みたいに」

「ここの地名と生首、死体遺棄、で検索してみて」

 検索してみると……。

「T橋、女性の首無し遺体、イノシシ男……『首無し』の方ばっかりだね。やっと『生首』があった」

「地名、生首、死体遺棄のワード検索で、有名な事件が先に出てくるのね。犯人は検索して『生首現場』は『橋』だと、思い込んだじゃない?」

「猟奇事件マニアでは、ないな」

「フォロワーでも無いかもしれないでしょ」

「被害者の最後の投稿を見ただけってこと?」

「それも、殺した後で見たかもしれない」

「殺した後で? どうやって?」

「被害者の携帯電話よ。ロックしていなかった可能性はあるでしょ」

 被害者はSNSをチェックし続けていたのでは。


「つまり、通りすがりの殺人鬼の可能性もあるのか」

 聖はマユの推理が分かってきた。

 

 日暮れ近い山道を若い女が1人で歩いている。

 行き交う車は少ない。

 辺りに民家は無い。 

 人影は全く無い。

 (よかったら送りましょうか?)

 声を掛けられ

 被害者は、知らない男をフォロワーだと思い込む。

 警戒せず車に乗った。

 犯人は人目に付かない場所に連れて行った。

 泣き叫んでも誰にも聞こえないところに直行。


 犯行後、遺体は車のトランクに入れ、どこかに遺棄するつもりだった。

 しかし『生首現場』にいく予定と知り、その場所に遺棄するのが簡単で安全だと考えた。

 

 行きずりの犯行であったなら、犯人は簡単に捕まらない。

 携帯電話の履歴を調べても無意味。

 山道に防犯カメラは無い。

 通過した車のドライブレコーダーを頼るにしても

 被害者が犯人の車に乗っていた時間は長くても40分間だけ。

 ニット帽もボアジャケットも、指紋の検出は困難。

  

 その後

 2週間が過ぎても、事件の続報は無かった。

 薫からも何も言ってこない。

 マユの推理通りなのか……。


 12月1日。

 聖はビールを買いに楠本酒店に行った。


「セイちゃん、久しぶりやなあ。待っててんで」

 と、店主はいつも以上に愛想良い。

 何か頼みたい事があるに違いない。


「急がへんねやろ?」

「うん。で、ばあちゃん、何?」

「あんな、お手洗いの鍵、直して欲しいねん」

 3つある個室トイレの1つの鍵が壊れているという。


「いいよ。見てくる。見てから、(車から)工具箱とってくる」

 

 奥の引き戸を開ける

 トイレはその先、突き当たり(通路の右に一段上がった20畳ほどの座敷がある)


 お手洗い、の札が掛かったドアを開ける。

 正面に引き戸(裏口)。その右に手洗い場、簡易水洗の洋式トイレが3つ(男女別れてはいない)

 トイレのドアはベニア張り。内開き。鍵はネジが2カ所とシンプル。

 鍵が壊れているのは右奥のトイレだった。


「鍵が掛かってるのに、無理に開けたのかな」

 フックがねじ曲がり、ネジが1つ抜けていた。

 

 裏口から、駐車場に行く。

 すると


「セイ、どっから出てきたんや」

 薫の声。

 オートバイで今来たばかりのよう。

 まだヘルメットを被っている。


「なんだ、カオルか。偶然一緒になったんだ」

 聖は嬉しい。

 自分の所に来るつもりで、ビール買いに寄ったのだと思ったから。

 

 薫はヘルメットを外しながら、聖の横を通り越して

 聖が今出てきた裏口へ向かう。


「こっからも、外に出れるんか……」

 裏口の存在を知らなかったようで、驚いている。

 裏口は駐車場からは見えない。 

 薫は聖ほど、この店に精通していない。

 トイレを使ったことが無ければ裏口の存在を知らなくて当然。


 薫は、裏口の前に立ち尽くしている。

「そっか。知らなかったんだ。そんなに驚いた?」

「……」

 

「トイレの鍵が壊れたんだって、それで……」

 薫が黙っているから、聞かれもしないけど状況説明。


「何やて? 鍵が壊れてる?」

「……うん」


「セイ、現状保存、触ったらアカンで」

 振り向いた顔は

 鋭い刑事の目つきだった。



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