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後日談。

これは、本当にあった悲しき恋の物語。


あなたは、日頃から大切な人に直接言葉を贈っていますか?

今から伝えるのは、自分の中で大切で特別な存在になっていく人に——直接言葉を贈らず、突然の別れを迎え——今も後悔の念で、時折涙を流す女子生徒のお話です。

電話を受けた夜も、涙を流し続けた。枕を濡らして声を堪えて、ひたすら泣き続けた。

しかし、彼女の中で約束した“あの人の言葉”「ちゃんと学校に行くんだよ」という言葉が、背中を押し続けた。


結局、“家庭の事情”という説明だけで、どうしていなくなったかの、本当の理由は何も分からなかった。



****** ****** ******


学校に着いた。はじめに職員室に行って、神田先生のことを知らせてくれたのに対してお礼を言うと、電話をくれた主任・水野裕子みずのゆうこ先生が、申し訳なさそうに言った。


「ごめんね、昨日は、直前に知らせることになって」


「いいえ、大丈夫です……わたしが行かなかったのが悪かっただけなので」


確かに、前日から聞いていたなら、もう少し早く知らせてほしかったのも本音だった。しかし、わたしの自責であることは、変わりない。


周りには普通を装った。

神田先生のことを気にしていないかのように、元気に振舞っていく。

でもやっぱり“大好きだった”という感情に、嘘を吐くのは苦痛でしかなかった。


その日は雨で、わたしの心情を現しているようだった。

二年の教室。喪失感消えぬまま席に着こうとすると、森下先生から声を掛けられた。


「神田先生から、メッセージを預かってて……」


渡されたのは一枚の四角いメッセージカード。


佐紀へ

直接お別れ言えず、ごめんね。

明るく元気で笑顔一杯の佐紀が

一番似合っています。

何事にもチャレンジして、素敵な

先輩になりましょう!!

ありがとう!!!

        神田大輝


最後に残してくれた、神田先生からのメッセージカード。

再び涙が溢れそうになったけど、必死に堪えた。


「ありがとうございます……」


たったその一言。

わたしはメッセージカードを、丁寧にしまった。

今でも大切に保管して、時折元気をもらうことがあるくらいだ。



****** ****** ******


でも現実は厳しい。


あの日から、新しく中年くらいの女性介助員が二年を担当することになった。

だけど、毎日ストーカーまがいな行動、迷惑でしかない言動にストレスが溜まり、殺意すら湧くようになった。


神田先生のいない世界で、生きていく。

自殺だって、何度も考えた。実行しようとしたことも、一度や二度じゃない。


わたしは精神的に限界を迎えた。


登校拒否から始まり、新型コロナウイルスも相まって中学校を卒業した。


あれから何年の月日が経ったでしょうか。

今でも、あのときを思い出すと涙が溢れてくる。


今のわたしなら、あの電話を受けたとき、這いずってでも会いに行く自信がある。

もし過去に戻れるなら、別れる未来が変わらなくても、後悔のないように残りの時間を一日一日、過ごしてくでしょう。


そして、あなたにもう一度逢えるなら——

また、話しがしたい。


願いを、なんでもひとつ叶えられるなら——

一目だけでも、あなたの笑顔をもう一度見たい。

本作は、実際に体験した出来事を元にしたフィクションです。

登場人物の名前や、地名・学校内の配置など一部の描写には、個人が特定されないよう配慮した変更を加えております。


実在の人物や団体を特定するような行為は、どうかお控えください。

あくまで一つの物語として、心に留めていただければ幸いです。


そして、「感動した」「共感した」などありましたら、下記の☆や感想、何度も読み返せるようにブックマークなども大変励みになります。読んでくれる皆さんが、僕は大好きです。

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― 新着の感想 ―
未熟な佐紀の純粋な恋心が育っていく様子と、きっと誰にでも優しい神田先生を阻む現実。読者視点では「片思いだよそんなの!」と思ってしまっていましたが、神田先生の優しい手紙が本当に強烈で、最終話のところでは…
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