後日談。
これは、本当にあった悲しき恋の物語。
あなたは、日頃から大切な人に直接言葉を贈っていますか?
今から伝えるのは、自分の中で大切で特別な存在になっていく人に——直接言葉を贈らず、突然の別れを迎え——今も後悔の念で、時折涙を流す女子生徒のお話です。
電話を受けた夜も、涙を流し続けた。枕を濡らして声を堪えて、ひたすら泣き続けた。
しかし、彼女の中で約束した“あの人の言葉”「ちゃんと学校に行くんだよ」という言葉が、背中を押し続けた。
結局、“家庭の事情”という説明だけで、どうしていなくなったかの、本当の理由は何も分からなかった。
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学校に着いた。はじめに職員室に行って、神田先生のことを知らせてくれたのに対してお礼を言うと、電話をくれた主任・水野裕子先生が、申し訳なさそうに言った。
「ごめんね、昨日は、直前に知らせることになって」
「いいえ、大丈夫です……わたしが行かなかったのが悪かっただけなので」
確かに、前日から聞いていたなら、もう少し早く知らせてほしかったのも本音だった。しかし、わたしの自責であることは、変わりない。
周りには普通を装った。
神田先生のことを気にしていないかのように、元気に振舞っていく。
でもやっぱり“大好きだった”という感情に、嘘を吐くのは苦痛でしかなかった。
その日は雨で、わたしの心情を現しているようだった。
二年の教室。喪失感消えぬまま席に着こうとすると、森下先生から声を掛けられた。
「神田先生から、メッセージを預かってて……」
渡されたのは一枚の四角いメッセージカード。
佐紀へ
直接お別れ言えず、ごめんね。
明るく元気で笑顔一杯の佐紀が
一番似合っています。
何事にもチャレンジして、素敵な
先輩になりましょう!!
ありがとう!!!
神田大輝
最後に残してくれた、神田先生からのメッセージカード。
再び涙が溢れそうになったけど、必死に堪えた。
「ありがとうございます……」
たったその一言。
わたしはメッセージカードを、丁寧にしまった。
今でも大切に保管して、時折元気をもらうことがあるくらいだ。
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でも現実は厳しい。
あの日から、新しく中年くらいの女性介助員が二年を担当することになった。
だけど、毎日ストーカーまがいな行動、迷惑でしかない言動にストレスが溜まり、殺意すら湧くようになった。
神田先生のいない世界で、生きていく。
自殺だって、何度も考えた。実行しようとしたことも、一度や二度じゃない。
わたしは精神的に限界を迎えた。
登校拒否から始まり、新型コロナウイルスも相まって中学校を卒業した。
あれから何年の月日が経ったでしょうか。
今でも、あのときを思い出すと涙が溢れてくる。
今のわたしなら、あの電話を受けたとき、這いずってでも会いに行く自信がある。
もし過去に戻れるなら、別れる未来が変わらなくても、後悔のないように残りの時間を一日一日、過ごしてくでしょう。
そして、あなたにもう一度逢えるなら——
また、話しがしたい。
願いを、なんでもひとつ叶えられるなら——
一目だけでも、あなたの笑顔をもう一度見たい。
本作は、実際に体験した出来事を元にしたフィクションです。
登場人物の名前や、地名・学校内の配置など一部の描写には、個人が特定されないよう配慮した変更を加えております。
実在の人物や団体を特定するような行為は、どうかお控えください。
あくまで一つの物語として、心に留めていただければ幸いです。
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