第5話 天才すぎる妹、常識という授業に挑む
次の日学園にて、
朝のチャイムが鳴り、兄・春の高校では1時間目の数学が始まる。
朝から妹の結衣を振り切って学園に来た。
教師「では今日は、数列の漸化式について説明します」
春(ふう、ようやく“平穏な日常"が遅れそうだ……)
その瞬間、教室のドアが**ガラッ!**と勢いよく開く。
結衣「失礼しまーす♡ 今日から兄さんの授業、全部出ることにしました♡」
春「ちょ、待て!誰も許可してな──」
教師「あ、ああ、どうぞどうぞお入りください結衣様!!」
春「お前、教師まで手懐けたのかよ!!」
──そして、悲劇(?)は始まる。
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1時間目・数学
教師「では、この漸化式の一般項を……」
結衣「先生、その式、収束条件が抜けてますよ」
教師「えっ……」
結衣「このままだと、無限級数の評価に矛盾が出ますので、まずa₁の定義を補足しないと♡」
教師「え、ええ……あ、はい……では、じゃあ、代わりに解説を……」
結衣「では♡」
黒板前にするすると歩き出し、チョークを手に取る結衣。
書き出したのは、大学数学の教科書でも見かけないような美しい証明式。
文字が流れるように板書され、グラフと図が完璧に交わる。
生徒一同「(ポカーン……)」
春「いや、なんで中2でコーシー・シュワルツの不等式使ってるんだよ!」
男子生徒「もしかして……あれが“美”ってやつ……?」
女子生徒「なんか分かんないけど……涙出てきた……」
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2時間目・体育
「よし、男子 vs 女子でバスケやるぞー! ただし女子には城ヶ崎結衣が入る!」
笛が鳴る──そして3秒後、試合終了。
ドリブル→切り返し→スリーポイント →またスリーポイント →さらにスリーポイント。
教師「じょ、女子チーム……20点差で圧勝……(目が点)」
春「いや、体育の授業で“ディフェンスの概念”が崩壊した瞬間を見たわ」
結衣「兄さん見ててくれました?この角度♡」
春「お前の髪の毛が物理法則超えてるのは見た。あと、どうしてシュートフォームに回転エフェクトが……」
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3時間目・英語
先生(ネイティブのALT)「Okay everyone, today let’s talk about international business. For example, do you know what global economy means?」
クラス「……(しーん)」
先生「No problem! Let’s start with easy English. Global economy means…」
結衣「Excuse me, teacher?」
先生「Yes, Yui?」
結衣「I think it’s better to say, ‘The global economy refers to the interconnected economies of nations through trade and finance.’ Right?」
先生「……Yes!?」
結衣「Also, maybe we should mention recent examples like inflation in the US and its effect on Japan’s yen.」
先生「……I was going to talk about… apple exports…」
春「何だよその差!!先生が小学生レベルに見えるぞ!」
男子生徒「えっ、あれって中学英語なの?翻訳アプリみたいだったけど……」
女子生徒「結衣ちゃん、発音もキレイすぎてCD音源かと思った……」
結衣「兄さん♡ 発音も、兄さんと発音したい英語もいっぱい覚えてますよ♡」
春「今のはいろいろアウトだろ!授業中だぞ!あと“兄さんと発音”って何だよ意味不明だよ!!」
▷ 4時間目・理科
先生「この実験でわかることは、金属と酸の反応……」
結衣「あ、それ無駄です」
先生「へ?」
結衣「私、試験管の中にナノレベルの観測チップ入れてきたので、リアルタイムの分子振動出せます♡」
先生「じょ、助教授かな……?」
春「なんで高校の実験に量子顕微鏡持ち込むんだよ!?」
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▷ 昼休み
男子A「城ヶ崎結衣ちゃんって、IQ200超えてるらしいぜ……」
女子B「なんか髪の毛からいい匂いした……」
男子C「天才すぎて怖いけど、あの笑顔見たら好きになっちゃうよな……」
春「……おい、なんでまだ昼休みなのに“妹速報情報”が各教室に届いてんだ?」
クラスが違うのに学園中で結衣のハイスペックが噂になっていた。
結衣「兄さん……兄さんのそばにいるだけで、毎日がパラダイスです♡」
春「それが全部、学園を破壊してるんだよ!!!」