第12話 生徒会の日常③
昼休み。
生徒会室の扉が、**バンッ!**と景気よく開かれた。
「副会長として認めるのはまだ早いわよ、橘花 凛!」
ツカツカと革靴の音を響かせながら、生徒会長・霧島 梓が登場する。
クールなロングヘアに整った顔立ち。制服の着こなしは一分の隙もない。
その後ろから副会長・橘花 凛が余裕の笑みを浮かべて続く。
「会長の圧、今日も強いですねぇ~。でもご安心を。もうお茶は淹れてありますよ♪」
「……ぬかりないのね、ほんとにあなたは」
そして、その様子を壁際から眺める中等部代表・城ヶ崎 結衣(中2)。
彼女は窓辺の椅子に腰かけ、紅茶を静かに口に含む。
「お二人とも……学園運営、順調そうでなによりですね♡」
梓は結衣にじっと視線を送る。
「……あなたのせいで、学園内の権力構造が根本から狂い始めてるのよ」
「お褒めの言葉、ありがとうございます♡」
「誉めてない!」
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その日の放課後、梓は会議室で各クラブの資金帳簿を睨みつけていた。
「おかしい……どの部も、予算が“急増”している」
その原因は、“結衣グループ”からの支援金。
買収というより、もはや“社会福祉”。
「学園を買い取って私物化なんて、あってはならない……!」
そんな中、梓の元に報告が入る。
「会長、校門前で『結衣様像』の建設が始まったそうです!」
「はあああああ!?像ぉぉぉぉぉぉ!?」
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その晩、春は自宅のリビングでコタツに突っ伏していた。
「もうダメだ……うちの妹が学園を支配しようとしてる……いや、もうしてる……」
そこへ現れた結衣が、当然のように春の背中に乗っかる。
「兄さん、今日もお疲れさま~♡ 膝枕する?お風呂入る?それとも結衣?」
「帰れぇぇぇ!! って、ここ俺の家だ!」
「違うよ? **“私たちの家”**でしょ♡」
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そのまま妹が甘え倒すところに、お買い物から帰ってきた凛が登場。
「たっだいま~。結衣様、日用品と指定された投資信託、両方買ってきましたぁ~。あ、兄さんには缶コーヒーを。ブラック派ですよね?」
「地味に気が利く!」
そして、妹の背中乗っかり甘えプレイを見て、凛はうっとりと語る。
「……ああ、この身長差、この距離感、この寄り添い方……尊い……」
「え、なんで実況してんの!?てかやめろ!」
「どう見ても、兄×妹というより、妹×兄の構図ですね……逆・逆カースト……尊……」
「解説はいい!!止めろ!!」
「えー止めちゃうんですか?では代わりに私が兄さんに膝枕を──」
「お前もやめろォォォ!!」
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その頃、生徒会室。
梓はホワイトボードにこう記していた。
『対・城ヶ崎結衣作戦 第1段階:資金源の遮断』
その目は鋭く、意志は固い。
「どんな天才でも、学園は“秩序”の上に立つべきなのよ。見せてもらうわ、結衣――あなたの覚悟を」
結衣の微笑みが広がる。
「学園運営、もっと楽しくしてあげるから……♡」
夜の公園。
ベンチに座る春の隣に、制服姿のままの霧島梓が静かに腰を下ろす。
春「で……話って?」
梓「あなたにしか頼めないことがあるの」
春「え、なんで俺!? 妹じゃダメなの!?」
梓「あなたは唯一、あの子に“ブレーキ”をかけられる存在……だからよ」
春「うちの妹にブレーキなんて、あったっけ?」
梓「存在はしている。ただ、効かないだけよ」
春「意味ねえじゃん!!!」
梓「でも……あなたが“結衣を止める理由”を、ちゃんと口にすれば――きっと彼女は立ち止まる」
春「……どういうことだよ?」
梓「学園は……本来、政治や金で動く場じゃない。
でも、あの子はあなたのために“最短距離”を突っ走ってる。
だからこそ、彼女の中で“目的”が変質し始めてるのよ」
春「……」
梓「『兄のため』が、『兄の世界そのものを作ること』になってる。
あなたにしか、それを正せない」
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そのころ結衣の部屋。
広すぎない6畳間、机の上には新しい学園改革プランの資料が山積み。
モニターには、複数の役員と企業とのリモート会議。
結衣「はい、“生徒用デイトレーニング講座”の導入ですね。OKです♡
兄さんの高校生活が“資本的に”充実するなら♡」
凛(小声)「……誰か、止める人いませんか」
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翌日。登校途中の道。
春は意を決して、結衣に話しかけた。
春「なあ結衣」
結衣「はい、兄さん♡今日のタイ株の件ですか?それとも米国債?」
春「違ぇよ!!!……いや、違くはないけど!もっと根本の話!!」
結衣「?」
春「結衣、お前がやってること、間違ってるとは言わない。でも……
“俺のため”って言うなら、そんな風に“世界ごと作り変える”必要、ないから」
結衣「……兄さん?」
春「俺はただ、普通の高校生活がしたいんだよ。
クラスの奴らとだべって、部活とかちょっとして、テストでヒイヒイ言って……
“妹が全部用意した理想世界”じゃない、自分で感じる普通の日々が、俺は好きなんだ」
結衣「……」
春「それに、お前自身が楽しそうにしてるのが一番嬉しい。
兄のためだけじゃなくて、結衣自身の“好き”もちゃんと持っててくれよ」
結衣「……」
少しの沈黙のあと、結衣が小さく笑った。
結衣「兄さん……それ、すっごくズルいです♡」
春「え、なんで!?」
結衣「そんなこと言われたら……ちゃんと“兄さん中心の世界”にするの、
もう少し優しい方法でやらなきゃ、って思っちゃいます♡」
春「やめろぉぉぉぉぉぉ!!!」
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結衣の“改革”は、ややスローダウン。
しかし、それは次なる戦略の始まりでしかなかった。
そしてその頃――
梓(心の声)「……春が言った“普通の日々”。
私も、忘れていたのかもしれない。もう一度……信じてみようかしら」




