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非粛々  作者: 林幸
父の死
7/8

火葬

内縁云々の話を聞いた母は激怒した。

別居生活が長く、とうにやきもちを妬くような間柄ではない筈なのにと聞いてみると「本妻としてのプライドが許さない」と言う。ああまあそれはそうかもしれないが、そろそろ悟りを開いてもいいようなお年頃、もうちょっとマイルドにならないものか。という私の方がマイルドすぎるのかもしれない。


葬式もなし、墓も用意しなくてもいい、誰にも知らせるなと母。結婚当初から逆鱗に触れっぱなしなのだから仕方がない、火葬&永代供養となった。

住民票のある自治体でないと火葬できないということなので、車で2時間かけて戻り、翌日火葬ということになった。

内縁野郎が葬式はいつかとしつこい。やらないと言うと、「では火葬は?」と食い下がる。当然ながら母は一切参加しないし、そのくらいは仕方がないかと火葬場と時間を伝えた。


参加者は5人。内縁は娘だかを付き添いに連れてきていた。泣いているのは内縁1人という何ともシュールな絵面だが、火葬場の人は慣れているのか粛々とこなしていく。

内縁がいなければ、血の繋がった娘2人と孫娘1人、少しはしんみりとなれたかもしれないと思うと忌々しい。心の中で(クソが!)と悪態をつく。父も悪かったのだろうが、血が繋がっている分、悪者感は薄まってしまうのだ。


墓はどこにするのかと聞かれるが、母からは絶対に教えるなと言われている。そう伝えるとまた泣かれる。私が悪いみたいじゃないか!と苛立ちが増す。

さっさと終わって忘れたいのに、人間を焼く時間は思ったよりも長いらしい。どんよりとした冷たい空気が流れていく。


骨を分けてくれと言う内縁。やめた方がいいと言うその娘。そりゃそうだ。

もし内縁が亡くなったら、残された父の遺骨をどうにかしなくてはならなくなるのはその娘だろう。そんなこともわからないのかと、苛立ちが再燃する中、またまた泣き崩れる。

一体どこがそんなに魅力的だったのだろう。不思議で仕方がないが、知りたいとは全く思わない。


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