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非粛々  作者: 林幸
父の死
6/8

死以上の衝撃

元夫が亡くなる数年前、父が亡くなったと、入院先の病院から連絡があった。

とりあえず母と妹に連絡したが、かれこれ40年以上前から別居状態の母は「死んでも家には入れない!」と宣っている。

父は車で2時間先の街に住んでおり、病院もその近く。隣の県在住の妹も病院までは同じくらいかかりそうだ。


支度に取り掛かっていると、再度、病院からの電話。

「あのぉ〜、内縁の妻とおっしゃる方が来られているんですが〜」

はあぁぁぁぁぁ!? 何ですと!?

いやいや、看護師さんにキレてはいけない。相手を間違っている。


父は既に卒寿に近く、入退院を繰り返していた。退職金を注ぎ込んで母が今住んでいる家を建てているので、財産だってないはずだ。母に言わせればチビハゲ出っ歯で見てくれも悪い。外面だけは良いのだがモテるとは思えない。

一体何が目当てだ?保険とか掛けてたとかか?

とりあえず病院には取り合わないようにお願いし、即、出発だ。


そういえば1ヶ月ほど前、死期を悟ったらしい父から電話があり、住んでいるアパートの押し入れの布団の間に大事なものを隠してあるから、自分に何かあったら宜しく頼むと言ってきていた。

「大事なもの」が一体何を指すのかはわからないが、内縁の妻を名乗るほどだ、合鍵だって持っているに違いない。これはヤバいぞ!


慌てて向かった病院で、押し入れの秘密に後ろ髪をひかれつつも手続きを進める。内縁云々の輩は毎日のように父の見舞いに来ていたらしく、偶然、亡くなった直後に見舞いに来たようだ。が、追い返してくださったらしく、私が病院に到着した時には影も形もなかった。


妹が到着し、一緒にアパートへ。

「合鍵を持っていたとしたら、あちらにとって必要なものは、もう持ち出されていそうだよねえ」と話しながら布団の間を探るも当然のように何も出て来ない。

半ゴミ部屋状態の中を探ってみるも大したものは何もない。通帳にはせいぜい火葬代程度の残高しかなかった。


父は比較的きちんとした性格で、三男らしく自分のことは自分でやるタイプ。それでなのかどうなのか、女性と暮らしていた形跡はなかった。

何だかよくわからないが、こちらに害がなければ放っておく方針でいいかもしれない。何せ私がまだ10代の頃から父と一緒に暮らしてはいなかったし、20年ほど前の伯父の葬式の時に顔を合わせたきりだ。

失われた「大事なもの」とやらは気になるが、出て来ないのだから仕方がない。


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