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非粛々  作者: 林幸
遺体
3/8

尻拭い

実は、亡くなったひとり暮らしの男性の部屋に入るのは初めてではない。

数年前、ひとり暮らしをしていた私の実の父が亡くなった時にも、妹と2人で片付けに入ったことがある。

その時も色々とアレなことがあったのだが、それはまた別の機会に。


というわけで、故人の不要な物たちは全て業者に引き取ってもらうことにし、私達は重要書類等を捜索することにした。

最重要テーマは財産関連だ。誰だって負の遺産は引き継ぎたくない。もしそういったものがあるのなら、即、相続を放棄するべきだろう。

家探しでその証拠が出てこなくても、誰かが借用書っぽい物を持っていたりするかもしれない。早速、同時並行で調査も依頼、相談もした。


なぜそんなに怪しんでいるのかというと、大家さんの「あの豪遊ぶりからして、かなりのお金持ちだと思っていたんですが」というひと言がひっかかっていたのだ。

たとえ大企業に所属していたとしても、いわゆる窓際属だった筈で、扶養家族がいないとはいえ、毎晩飲み歩くなんてことができたのか疑問なのだ。

兎にも角にも酒癖が悪くてかなり迷惑をかけていた様子に、唯と2人で何度も頭を下げた。


さらに元夫はギャンブルが盛んな県出身。子どもたちがまだ小さかった頃は、競馬場や競輪場に連れて行かれたこともあるし、趣味はパチンコで、たまに持ち帰る子どもへの玩具はそこで仕入れていたらしかった。


もし借金があれば、死後1年ぐらいまでの間に弁護士などから連絡が来るだろうから、もし届いたら転送してくださると大家さん。何から何まで申し訳ない。

もしかしたらこの方たちも私たちと同じで、亡くなってホッとしている側かもしれない。


初日はあまり時間がなく、通帳やキャッシュカードを押収するくらいしかできなかったが、治安が悪いと噂の危険地帯。あまり夜遅くならないうちにホテルにチェックインすることにし、夕食と朝食は駅前で惣菜を調達した。

ホテルはアパートを改造した建物だったが、この辺りではそういうホテルは多いらしいと後で息子から聞いた。元アパートだからかちょっと広いしなかなか快適で、少しぐらい良いことがないとやってられないねと唯と話した。


が、翌日、驚きの急転直下に頭がおかしくなってしまうとは、この時の2人は知る由もなかった。



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