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非粛々  作者: 林幸
遺体
2/8

往路

娘との2人旅だなんて初めてのことなので、ちょっぴり嬉しくなる私。

行き先で待っているのは、どうせ楽しいことなんかじゃない。だから道中ぐらいは楽しみたい。そんな気持ちは唯も同じなのか、暗い雰囲気ではない。


空港までは車で1時間半、コンビニでトイレ休憩方々、コーヒーやお菓子を買う。亡くなった彼には申し訳ないが、すっきりした気分なのだ。

それというのも、彼には2人とも、SNSでストーカーまがいのことをされたことがある。これからはもうそんなことはなくなるのだと思うと、心も軽くなろうかというもの。


飛行機で1時間、さらに電車で1、2時間、先に警察署に寄り、故人の所持品を受け取らねばならないのだと唯が言う。

今回の段取りや手続きについては、ソーシャルワーカーという仕事へのいい経験になるだろうからという唯の申し出により、全てを任せることにし、私は移動と宿泊の手配だけを担当した。

警察署の近くで、この地方にしかないという美味しい弁当屋さんを見つけ、ちょうどお昼だったので、そこで昼食を済ませた。美味しかった!


ちょっとした繁華街を抜けたので、母へのお土産にと、ちょっと小洒落たマスクを買い、再び電車で彼の人が住んでいたアパートへと向かう。

アパートの位置を息子に伝えた時、「うわ!治安悪っ!」というリアクションだったので理由を尋ねたら、外国人がやってきて治安が悪くなった街として有名な場所らしかった。

都会育ちの私はさほど気にならなかったが、田舎育ちの唯は怖がるだろうから黙っておいた。


大家さんと一緒にアパートへ。一歩足を踏み入れ、る前に、中からいろんなものがなだれるように出てきた。大家さんは心得たもので、足でそれらを中へ押し込むと、持っていたスリッパをその上に置いて勧めてくれた。ゴミ屋敷とはこれ如何に。


2DKという、一人暮らしには贅沢な広さの部屋は、足の踏み場もなければ物を置く場所もない。大家さんは同情するような目をしているが、わかっている。手伝ってはくれない。一泊しか予定していないのだから、残された時間は僅かだ。ここは覚悟を決めなくては。



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