嘘が苦手な君へ
注意事項1
起承転結はありません。
短編詐欺に思われたら申し訳御座いません。
注意事項2
異世界転生ネタのあの二人です。
『お近付きの印に』の旦那目線です。
僕の父は野心家だった。交わす話と言えば金と権力、そしてその橋渡し。そんな事を言われ続けていたら此方の気が滅入ってしまうのかも知れない。けれども父の良い所はそう言った強欲な一面を、例え目上であっても特段隠さないところ、美学として悪徳に手を染めないことにあった様に思える。何と言うか、清々しいのだ。だから余り憎めなかった。この嘘と欺瞞に溢れた社交の場で、唯一信頼を寄せても良い相手だと思っている。
「お前は明日、政略結婚の相手に会う。くれぐれも不敬の無いように。我が一族の繁栄に大切な橋渡しとなる」
「はい。理解しております」
目に金の単位が描かれているのは言うまでもない。本当に清々しいな、この方は。
そうして翌日お会いした子は、社交場である様な可憐なドレスを身に纏い、当たり障りの無い笑顔を浮かべた。何時もの事だ、腹の探り合いは今から始まっている。
「何れお前の政略結婚の相手となる。仲良く出来るかな?」
政略結婚の相手の前で堂々と『政略結婚』という単語を投げ付けるのは、社交場探しても我が父くらいのものである。さり気なく相手の父と令嬢の表情を観察する。どうやら何時もの事だと流してくれた様で、表情に変化は見られなかった。
それから相手の令嬢と二人きりとなり、手作りの菓子を貰った。菓子作りが初めてという通り、所々焦げていて少し苦かった。でも、これはこれで悪くない。
令嬢を見ると、僕が渡したものよりも大部分が黒くなっているクッキーを口に入れている。やはり苦いのか眉間に皺が寄る。はたまた失敗した自分に対する怒りか。隠さずに表れた本心。思わず零れ出た言葉。
「……貴方とは仲良くなれそうだ」
内心目を見開く。そしてさり気なく息を飲む。今の自分の行動に驚いた。
社交場では嘘と欺瞞が横行する。だがそれを皆武器として戦う為に、誰も咎める者はいない。寧ろ使わない者を皆軽んじて扱う。だから僕自身も、そうやって生きてきたのだ。上手い作り笑顔で、世界を渡り歩いて来たのだ。なのに……。
「それは嬉しく存じます。政略結婚故に、貴方様が成長すれば外に恋人を作る事も御座いましょう。それでも時折こうしてお話出来る関係ならば、良いと思いますよ。恋愛はなくとも、親愛は欲しいと望むのは、私の我儘で御座いましょう」
「貴方様は嘘が苦手な様で御座いますね」
それから吹き出した様に一頻り笑った。作り笑顔ではなく、心から。
この世界の武器を捨てて、さも何でもない様に本音で語る。この方とは生涯を掛けて傍に寄り添いたい。水面下で戦火舞うこの世界で唯一見つけた野花、それが僕の政略結婚の相手だった。
「今日は珈琲のケーキを作ったんだ」
「そう。口の中をふわふわのスポンジで満たしたくなったから。ふふふ。名店を歩き回って、レシピ聞いてきたから、この間よりも美味しいと思うよ」
私達の習慣として、互いに余裕がある時に午後の茶会に明け暮れる。前までは彼女が興味を持っていた二人の話ばかりだったけれど、今は時折僕の話をしてくれる様になった。
「じゃあ御礼として、はい」
自分の取り分をフォークで掬って、彼女の口元まで持って行く。すると戸惑った様に凍り付いた。
「お行儀悪いですよ」
「良いじゃないか。どうせ未来は確約されているのだし」
血の通った人間だと理解してるんですよ。
ただ嫁ちゃんは
・自分がやってた乙女ゲーの転生者、
・今の旦那は元々攻略対象外、
・この依代の感情は恋愛ではなく親愛だった。
この考えから、
『外に愛人作ることもきっと有り得る。だったらいっそ推させてくれ!! 頼むから!!』
そんな事から『愛人作っても、友達でいよーね』という返答。
なんなら依代ちゃん、ゲーム公式の短編スピンオフでそんな台詞見て言ってそう。
友達に恋人出来たら恋バナで盛り上がるじゃないっすか。
あのノリなんですよ。沢山揶揄う気だな( ˙-˙ )
でも傍から見たら自分蔑ろにしてる様に見えるんだよなぁ。
元ネタ乙女ゲーでの旦那の設定は、恋愛感情より、親愛感情だった。でも嫁ちゃん以外興味無い。
だから攻略対象にもなってないですし、スチルは愚か、立ち絵も少なそうな気がします。
嫁ちゃんが主人公ちゃんに時折、自分の旦那の話投げてるから知ってる程度だと。
何ならこの旦那にしつこく迫ったら、破滅までは行かないまでも微妙なエンド行きそうですし。
最後のシーンは、『嫉妬しちゃう』と言われて以降の話。
恋心に気が着いているし、異性として見始めてるので、恥ずかしながらも彼の話をしてます。
最後のシーン、半分は旦那、からかってるよね?