選択の自由
「お城の階段を降りて右側のところに、晩酌のできる大聖堂があります。バイヤンとバレスおじさんは、そちらで会議をしております。あまるほどの、食事がありますので言ってくだされば、ご用意します。好きなだけ召し上がってください。フリッグ王女の出番はまだ先です」と、バイヤンの従兄弟にあたるモンバールであった。わたしは小さな聖堂に案内された。
「少し話しをしましょう。シャンバラと地球について知っておくに越したことはありません」
「ええ、ありがとうモンバールさん」
「バイヤンもキレイな女性を連れてこられた。従兄弟のわたしも花が高いよ」
と、言ってヘルさんが「あら、鼻の下を伸ばして、エロスに取り憑かれるでないぞ。そなたにもそなたにあった魂の娘がいるのじゃからな」と、言った。
「魂のあった?」と、私が聞いた。
「ほっほっほ。そなたたちの国ではエロスに取り憑かれておるからの。地球上で魂のあった者はほとんどおらん。性を子孫を残すときのツールにしか思っておらんのじゃ。野獣のパートナーになっておるのじゃ。ベストなパートナーと世間から憧れても、結婚相手のリスペクトの関係までしかできておらん。それ以上の関係にはなれないのじゃ」
まったくこの人たちの言っていることが呑み込めない。
「叔母さん、あまり未開の世界に多くのことを求めるのはよしましょう。子孫を残すための育児をしている。それも尊いこと。なかなか出来るものでない。歪みを産みながら、子供を生かすことがどれだけ苦労なことか、それを耐えうる魂でもあるわけです」
「そうじゃな。だが、学んで欲しい物だよ。歪みから純白な子どもたちが汚れていく。大罪じゃぞ。その子供がまた大人になり子供を汚す。この連鎖を断ち切る勇気も学んでほしいものじゃ。それだけで、次の時代がどれだけ輝き、地球上とシャンバラの交流に役立つことか」
「そう思わんかね?フリッグ姫」と、興味を示していない事を察し質問をしてきた。
「あなた達の話を聞いていると、地球人は野蛮なサルに聞こえるわ。とても侵害よ」と、言ってしまった。
「ほっっほほほ。そうじゃの。けど、猿になるときはないかね?性犯罪や子供をつくるとき、その辺の猫とやっていることと、対して変わらんじゃろう。どうして、獣たちは性をするとき痛い思いをするのであろうか。けど、人類は気持ちよくできる。なぜ、あんなにも、甘くなるのか考えたことはないかね?」
「そんなこと考えたこともないわ。なんなら、そういうことは恥ずかしいことで話すのもタブーといった感じよ」
「ほっほっほ、性について生を産む通過儀礼にも関わらず、その性については考えないというわけじゃな」
「仕方ありません。まだまだ、恥がある世界ですから」と、モンバールが口を挟んだ。
なんだか、自分が野蛮人と言われている気がした。
「ほっほっほ、そんなに自分を責めるでない。自分と見つめ合ってこそ、成長ができるものじゃ。汝『自身を知れ』じゃったな。あれは確か、3代前の大じいが訪れたときに置いていった言葉じゃな。」
「それは、ソクラテスの言葉よ」
「ほっっほほ、プラトンがここに出入れして追ったらおかしいかの?」
「すると、あなた達は何歳なの?」
「さっきも話したじゃろ。時間と空間は位置すると」
「その位置するというのが、よくわからないのよ」
「ほっほっほ。紙はあるかな」紙とペンがゆらゆら飛んできた。そして、何かを書いて
「あなたたちの世界がこの点とする。そして、未来の世界をこの点とする。過去の点をこれとする。これを位置させることは可能かの?」
「できないわ。そんなこと、過去にも未来にもいけないもの。」
「ほっっほっほ」そう言って髪を折った。
「ほれ、こうやって折り曲げれば点と点は重なる。未来にも、過去にも行けるのじゃ。いまを通しての。ただ、そこには紙の性質だけじゃなく、時間と空間の性質やさまざまな選択の自由があってこそ可能になるのじゃ。過去や未来はデリケートなのじゃ。ワタシ達ですら、未来は位置できない。過去はすべて録音、蓄音されているがの。いつでも見ることが可能じゃ。」
「どうやって?」
「ほっっほっほ、空気にしろ。物は振動しているじゃろ。その振動が耳に入って聞こえる。空気の振動から記憶を辿れば簡単なことじゃろが、もちろんイデアの関係性の理解を深めていかない限りできないことじゃがな。そなたたちの録音機も同じ仕組みじゃろ?」
どうやら、私が思っているより、ここではより多くの選択の自由ができるようだ。
「地球に直接あなたたちが、教えることはできないの?智慧を使えば、もっと発展すると思うわ」「さっきも言ったじゃろう。自分たちでやっていかない限り意味がないのじゃ。野蛮のままでは、自分の都合のいいように使うのじゃ。サルに鉄砲を持たしても誤作動したら、自滅しかねないじゃろう?それだけじゃない。このシャンバラだけでなく多くの絶妙な関係性で成り立っている。容易に智慧を渡しても壊れてしまうだけじゃ」
「そうなんだ。フリッグ姫。この技術は、さっきの紙でいう。あなた達できる選択の自由の外に位置するんだ」
この紙を使っての表現は、明快でわかりやすかった。
そして、授業でなぜこのようなことを教えないのかも少しわかった気がする。
先生自体もイデアのことが全然分かっていないのだ。
「そうなのじゃ。さっき純白な子供が大人の教育で汚れていくと言ったのは、そのことなのじゃ」
「心を読み取れるのもどうやってやっているの?」
「ほっっほ、すべてを急ぐでない。物事には時期がある。機が熟してないぶどうを採ったらどうなる?」
「食べることができないわ」
「そうじゃろう。技術も智慧も機が熟してないのに学ぶことはできないのじゃ」
「だから、我々も直接には手を加えることはできない」
「こうやって、ツールのある人を通じて伝えることはできるのじゃ。プラトンという人がソクラテスとうツールを使ったように、数人で釈迦というツールを使ったようにの。時間と空間を超え伝わっていくのじゃ。ほっほほっほ」
わたしは、なんのことか分からなかった。
ほかにも、多くのことをこの晩酌で喋った。
聞けば聞くほど、常識からはかけ離れていた。しかし、どれも納得のいくものばかりであった。
そして、いちばん重要な主題に入った。
モンバールさんが真剣になって話しだした。
「あなたをお呼びしたのは、シャンバラと地球の関係性についてです。いま地球は、新たな段階に入りたがっている。」
「地球が新たな段階に?」
「そうですね。そこから話さないといけませんね。地球も生きている。ワタシ達が呼吸をするように、噴火をしたり、身震いして地震をしたりして。そして、その細胞の一つみたいなものが人間でもあります」
「え〜〜、信じられないわ。地球が生きているなんて」
「ほっほっほ。やはり、そこでいると生きているとも思わないじゃろうな。けど、いろんなところにヒントとして伝えておるのじゃ。手のひらの孫悟空をしらんかね。あれは、仏という生き物がいて自分は、ちいさな手のひらでしか動いていなかったと言っている。あの仏を地球に、置き換えればわかるじゃろう。フリッグ王女のなかにも細胞がいっぱいおろう。その細胞一つずつはあなたを認知していない。けど、細胞の一つずつがあなたとなり体として動いておる。ほっほっほ。人間も同じなのじゃ」
「・・・」
「いまは、あまり時間が有りません。会議を見たところあなたの意見を述べる時間が迫っています。とりあえず聞いてください」
「分かりました。地球が新たな段階に入るため、いままでみたいな野蛮のままでいるわけにはいきません。少し選択の自由を増やした者たちが求められます。そのため、天変地異がおきます。そして、それは地球の外にも大きく影響してくる。このシャンバラも例外ではありません。地球人と直接なやり取りはまだしませんが、どのような選択をしたいのかを選択する必要があります。そして、どのようなことを求めて実行していくのか、生き残る種族のなかで平均の人を選び招きました」
「えっ、バイヤンは白馬の王子様じゃないの?」
「ほっほっほ。さっきもいたじゃろう。補い合った魂になったときにベストなパートナーと出会える。イデアによる最高のご褒美なのじゃ。そこには野蛮な自分を乗り越えないといけない」
「白馬の王子様に見せたのは、そうでもしなければ、ここに来なかっただろう。そなたの選択の自由で、こちらの世界に入ってくるためじゃ。ほっっほほほ」
「まだ、終わってません。いまあなたは地球についてどうお思いでしょうか?その意見を予め聞いておきたいのです。」
なるほど、流石は知的文明、いきなり会議に出るより、ある程度、意見を纏めておいて本番に向かわせるようアプローチをしていたようだ。
「たしかに、あなた達の言っていることは腑に落ちます。一人ずつの争いごとは減っている。けど、国や組織の争いは絶たない。けど、多くの人が争いをしたくないのも事実だわ。けど、生活をするためにマネーを中心に国や組織に属する必要があるわ。個人一人ずつが、立ち上がるしかないわ」
「ほっほっほ。良くぞ言ったフリッグ王女。その意志が大切なのじゃ。ただ、そこに対する具体的なアプローチは持ち合わせていないのが事実」
「一人の個では到底、理解できない物凄く精密に密接に関わりを持っておるのじゃ。その中で地球とシャンバラに言及して提案されているのが、7つの冒険じゃ」
「すべてに情報がある理由ではないが、6つは分かっておる。
・大海原の世界
・いまはなき世界
・沼と大地の世界
・アブソルーブ・メタユニバースの世界
・死と生の世界
・太陽と月の世界」
「これらに協力を求めることで新たな段階に地球は入れる」
「しかし、危険も伴っておる。そなたの忍耐力が求められよう」
「私が、その異世界にいって協力を呼びかけるわけ?」
急にヘルさんは真剣な表情になった。さっきまでの「ほっほっほ」と笑顔になっていた人とは別人のようだった。
「さよう。しかし、強制的にやる必要はない。先ほども言った通り、そなたにもそなたの選択の自由がある。だれにもその自由意志を妨げることは許されておらん」
「国や組織の争いを止める方法はないの?」
「もちろんある。そして、それは同時進行で行われておる」
「だが、地球も待ちはしない。どうやって、ションベンをしたがっている子供に5時間も待たすことができようか。それに、そなた一人で行くわけではない。ワタシ達、シャンバランの人間も出来る限りの尽力する。その一つに、バイヤンと回ることになる」
わたしは彼の顔を思い出した。
「少しでも可能性があるのであれば、私やってみるわ」とその瞬間右側の大聖堂から、トゥーリッキに乗ったバイヤンが現れた。
「よくぞ。言ったフリッグ姫。では早速行こう」
「あれ?会議はでなくていいの?」
「実は、もうあの話自体が会議だったのじゃ。わざわざ国会議員みたいに数百人あつまって、時間を持て余す必要もあるまい。数人ずつが話して、まとめて行くのが効率的じゃ。そして、そなたは選択した。バイヤンは、協力してくれる人やそれぞれの異世界の情報を話し合っておったのじゃ。そなたが行こうが行かまいが、シャンバラから冒険にでることは決まっておった。」
「まずは、大海原の大冒険。濡れる準備を整えよう。その格好では、持たないからね」
「ほっほっほ、張り切りおって、バイアン気を抜くでないぞ」
トゥーリッキが近づいて、オジキをしてきた。頭を撫でると「ハイヨー!シルバー」と、言ってきた。
そして、王子が手を差し伸べ、背中に乗った。
背中に乗った直後に、ヘルさんが
「見栄っ張りなんじゃから、まずはこの宮殿で着替えからじゃろう」と言った。
準備を整えるため私は、ヘル王妃と違う場所で着替えた。
そのスーツは、あらゆる場所で順応するらしい。
どんな空気の密度でも一定に調整する。重量、有毒ガスにも耐えうるのだとか。
「油断するでないぞ。いくら便利なものでも注意散漫な人に効く薬はないのじゃ」と、言った。
「保護フィルムで覆われ、一定の範囲内は空気内の水蒸気に栄養素を入れる。飯いらずじゃ。
ただ、弱点もある。人は口をもぐもぐして食べ満腹感を得るものじゃ」
私は、説明を受けた。
「攻撃する武器とかはないんですか?」
「ほっっほっほ。それこそ争いの元じゃろが、剣を握れば剣が返ってこよう。そのため、魔法使いは安心に使える杖を開発したのじゃ。そなたたちの世界では三種の神器とか呼ばれてなかったかの?八尺瓊勾玉、八咫鏡、草薙の剣じゃな。杖は、剣に置き換えられ剣になってしまったがな。波動を帯びさせ、何でも跳ね返したり姿を隠す鏡じゃな。そなたにそんな者をもたせたら危なすぎる。条件が整った場合、与えられるのじゃ」
「こんかいは、ヒツジが助っ人になってくる。すぐに大地の恵みの楽園にいくのじゃ。そこでバイヤン王子もまっておろう」
そういって、ヘルと大地の恵みの楽園に向った。
「やぁ、来たね。大海原の大冒険では、ヴェッラモ、ポセイドンが協力してくれるよ」
急にヒツジであるはずが、赤いダイヤのアクセサリーに、そしてもう一方は角笛になった。
「これを身につけて置くと良い」
「さぁ、出発だ」
「ハイヨー!シルバー」トゥーリッキも合わせて言った。
王子が手を差し伸べ、背中に乗った。
また、空を飛び雲からなる2つの柱に向った。