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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

童話集

最期まで可哀想な雛鳥

※救いのない可哀想な話です。こころが折れかけの人は読まない方がいいかもしれないです。



 むかしむかし、可哀想な雛鳥がいました。


 その雛鳥は他の雛鳥とは違い、翼が片方奇形で、羽毛もところどころボロボロでした。


 だからその雛鳥は、親鳥には「出来損ないの子」と言われて半分捨てられたように育てられ、他の兄弟には「キモい!」「お前なんかおんなじ兄弟じゃない!」と罵られていました。



 …僕は何で生まれてきたんだろう?


 可哀想な雛鳥は眠りに就く時、そんなことを思いながら声をおし殺して泣く夜もありました。

 



 そんな苦しい日々を生きていき、可哀想な雛鳥そして、他の雛鳥たちはすくすくと成長していきました。



◇◆◇



 そして今日は巣立ちの日。


 雛鳥たちは青くキラキラと艶めく綺麗な羽毛になり、立派な大人に成長しました。けど、可哀想な雛鳥はところどころ羽毛がボロボロな大人の鳥になりました。右の奇形の翼は、折れ曲がったまま成長してしまいました。


「あーあ、あんたは大人になっても惨めなナリだね。とっととここを出ていきな。まあ…どうせ飛べずに地面に落ちてキツネとかにすぐ食われるんだろうけどね」


 と親鳥が言うと、他の兄弟鳥たちもピロロロと笑いました。


「─笑ったな?見てろよ~…」


 大人になった可哀想な雛鳥は、歪な翼をぱたぱたとさせました。

 そして────



 バサッ!



「…飛んでる!僕、空を飛んでるっ!!」


 大人になった可哀想な雛鳥は、折れ曲がった方の翼を一生懸命にバタバタさせながら大空を飛んでいました。

 そうです。この日のために大人になった可哀想な雛鳥は、みんなを驚かせるためにこっそりと飛ぶ練習をたくさんしていたのです。


「まじかよ!?」

「俺まだ飛べないのに…」


 大人になった可哀想な雛鳥が飛んでる下の方の巣で、親鳥と兄弟は驚いた声で言っていました。


「ふっふ、すごいでしょ!?」


 歪な翼を一生懸命にバタバタさせながら、大人になった可哀想な雛鳥は、下の巣の親鳥と兄弟たちに自慢げに大声で言いました。


 その時でした。



 バクッ!!



 大きな鷲が飛んできて…大人になった可哀想な雛鳥は、食べられてしまいました。


 薄れ行く意識のなか、大人になった可哀想な雛鳥は悲しんでいませんでした。むしろ、喜んでいました。


 

 兄弟たちより先に飛べて良かったと。そして、お母さんと兄弟たちに『こんな奇形な翼でも飛べるんだ』っていうことを証明できて…良かった。




 と。




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