第8話『夏休みのボクシング部を激励』
ここで「でかくて」「凶悪な顔で」「強いのに」「弱い」に変化しました。
でも、これはこれで別作品として挑戦作とさせて頂きますm(__)m
☆★☆ 7月22日 ☆★☆
今日も今日とて立花がうちにやってきた。一応午前中にジムは済ませておくようにとメッセージが来ていたから、まあ来るだろうな、とは思っていたが。
「オレはお前のボディガードなんだから、呼んでくれたら迎えに行くぞ? ここに来るまでにまた変な奴に声を掛けられたらどうする気だ?」
嬉しさと心配を秤にかければまだまだ心配の方が勝る。
「えへへ~ 心配?」
「当たり前だ」
「真田くんって、そう言う事、結構ズバズバ言うよね?」
「心配だから最優先でボディーガードをやっている」
「そっか~…… えへへっ」
☆★☆ ☆★☆
「そう言えばはなちゃんから聞いたんだけど、渡辺くん地区予選の一回戦で負けちゃったんだって」
「なにっ? アイツ結構オレのお気に入りだったんだけどな~」
やっぱ防御とかフェイントとかもっと見てやればよかったかな?
「でね、ボクシング部がさ、その…また真田くんに道場破りして欲しいみたいな? そんな空気になってるんだって。出来れば入部して欲しいっぽい」
「入部は無理だな~ オレ、フィットネスからプロコースへのスカウト狙ってるし」
「え~と、普通にプロコースに転向とか出来ないの?」
「出来るよ?」
「じゃあ、転向したらいいじゃん?」
「それだと月謝が16500円になるんだ」
「え~と、良く分かんないんだけど…?」
「スカウトされると月謝が無料なんだよ。特待生っぽい扱いになるからな」
「そ、そうなんだ……それは大きいよね……」
「それに祖父から『プロを志望したらダメ』ってきつく言われてるからよ、自分からってのは厳しい。だから『誘われちまって断れなかったんだ』みたいな言い訳が欲しい」
「『そふ』ってお爺さんって事だよね? 絶対いうこと聞かなきゃいけないの?」
「う~ん……今のオレが全力で掛かっても絶対勝てないくらいには強いからな~。逆らいたくないって言うか逆らえないって言うか……」
「そんなになんだ……怖いね」
「あ、いや、怖くは無いんだ。ただ……言いにくいんだけど、オレは祖父を心から尊敬してる。いつまでもどこまでも、オレは祖父の味方でありたいって感じだな」
「……なんかいいねっ、それ。ちょっと感動って言うか憧れた」
「ま、まあな……」
「で、話は戻るけど、ボクシング部に顔…出して見ない?」
「え? 今?」
「うん。はなちゃんが彼氏とボクシング部を激励しに行くから、よかったら一緒にって誘われたの」
「そうか……興味あるな。渡辺以外の連中もどうしているのか、ちょっと気になるしな」
「じゃあ、はなちゃんにラインするねっ」
「おう!」
☆★☆ 柔剣道場 ☆★☆
「たのもー」
やはりボクシング部への挨拶はこれに限る。心がウキウキする。
「おう、来たか……って女連れかよッ!」
「あ!? 立花が誘ってくれなきゃ、オレ来てないんだけど?」
オレは『オラ!』キャプテン三上も『オラ!』でオラオラな雰囲気だ。
「おい、渡辺!」
オレは一旦三上を無視して渡辺に話しかける。
「はい!」
渡辺の返事は気持ちいい。好きだなコイツ。
「何で負けた? 思いつく限りの原因を言ってみろ」
一応先輩だし、この位の言葉遣いでいいだろう。
「はいッ、試合は終始攻めまくりましたが、ここぞという時に大振りになり、カウンターをもらってしまいました! 最後にはフェイントにあっさり引っ掛かり頬に相手の右フックを受け1ラウンド終了間際にRSC(プロで言うTKO)負けしました!」
「お前が与えた有効打は?」
「すみません……全部ブロックか回避されてました」
渡辺が俯く。なんかしょんぼりした子犬みたいだ。ワイルド系イケメンで弱い子犬って可愛い…
「よし、次! 一回戦突破した奴はいるか!?」
オレは全体を見回して問う。
「三上! 現状を全て報告しろ!」
「な、なんだ偉そうに……?」
「いいから早く言え」
三上はオレの気迫に負けて、現状を報告する。
まず三上は『ライト級』の予選を決勝まで勝ち進んだものの、決勝で負けて引退が決定した。
同じく3年のもう一人は1回戦負け。引退。
ただ一人の2年生の松田は2回戦負け。
1年生渡辺と関口は1回戦負け。
だが、三人目の『奈良』が『ウエルター級』で準決勝まで行って負けたとの事。
「つまり、誰も全国には行けなかったって事だな……」
少し残念に思ったが、まあ弱小と自ら名乗るくらいのレベルだ。
三上が決勝まで行ったことがある意味凄い事なんだろう。
「お前らの基本性能を知りたい。フットワークエクササイズ、3分10ラウンドやるぞ。みんなリングに上がれ」
「真田くん……先生みたいでカッコイイね」
立花……気が抜けるからそういう事言わないで~?
「タイマー! 3分と1分で×10だ! セットして始めろ!」
渡辺がタイマーをセット。
「準備出来ました」
「よし、みんなオレの動きを真似して動け!」
こうしてオレたちは約40分のフットワークを特訓するのだった。
☆★☆ ☆★☆
「亜優ちゃん? 今これ何やってるの?」
遅れて来たはなちゃんが立花に不思議そうな表情を向ける。
一緒に来た渡辺の友達らしい男子(1年生)は笑いを堪えているようだ。
「え~と……基本性能のテスト? かな?」
立花は分かっているようなわかっていないような微妙な表情ではなちゃんに答えている。
オレはフットワークエクササイズしながらでも余裕があるから立花たちの会話に耳を傾けることが出来るが、そろそろ終盤、9ラウンド目だ。部員達には余裕がなさそうだ。
案外基本が出来ていないんだな。
「ねえ、なんか、ボクシングの動きって言うより……ダイエットしてる人っぽいんだけど?」
あ、気にしている事を…… でもな、これって大事な基本が全部詰まっている最高の練習なんだぞ?
ちょっと泣きそう。オレ。
部員たちはへばっている。
特に3年生。
「俺らってもう引退してるんじゃなかったっけ?」
知るかよそんな事、それよりもあと1ラウンドだ。頑張れ。
「最後までついて来い!!」
オレの気迫に押されて、引退3年生も最後までやり切る。
そしてオレは奴らにとどめを刺す。
「これを…あと2セットだ!」
「「「「「「えええええええ!!!???」」」」」」
オレはこれを毎日やっている。その後で筋トレしているんだがな……
「まあ、疲れが取れるまで、柔軟でもやってろ」
こいつらが強くなるのはまだまだ先の事なのかもしれないな……
☆★☆ 立花亜優視点 ☆★☆
ボクシング部のみんながへばってるのに、真田くんだけは全然平気な表情?
なに? 真田くんってホントに凄い人なの?
「亜優ちゃん? 改めてもう一回聞くけど……真田くんってどんな人?」
はなちゃんが本気で不思議そうな表情で私に聞いてきたけど……
「え、と。優しくて、口下手で、強くて、紳士な人…だよ?」
私は『優しくて口下手』ってところに、いまいち自信が無くなっちゃいました。
「大弥、おまえ、いい師匠に拾われたな~」
渡辺君を揶揄うはなちゃんの彼氏の楽しそうな声が何となく耳障り。
でも、渡辺くんがはなちゃんの彼氏に『ニコッ』と笑いかけた表情がとても真っすぐで、何となく子犬っぽくて羨ましくなった。
憎まれ口? 揶揄い? 私もいつか真田くんにそんな事自然に言えるかな?
う~ん…まだまだそこまでの信頼関係は無いかも……
そう思ってちょっとだけ落ち込む私でした…
2023年7月中旬頃には削除する予定でした。
が、最後まで挑戦させて頂きます。評価とかは気にしません。自分が納得できるかどうか、続きを書かせて頂きますm(__)m




