最終話『ボディーガードから始まった、オレと亜優の現在の関係』
没案から蘇ったこの物語、なんとかエタラずに書き切ることが出来ました。
評価してくれた皆様ありがとうございます。イイネしてくれた皆様感謝します。
そして、感想を書いてくれた皆様には最大限の感謝を申し上げますm(__)m
☆★☆ 帰り道 ☆★☆
「今日……守流くん、ジムに行くんだと思ってた」
帰り道、オレたちは手を繋いで歩く。
もう、手を握っているなどと言う言葉遊びによる誤魔化しと誤解は解いた。
「昼にラインした時点では行くつもりだったんだが、時間に余裕があったから亜優から借りていた小説を読み返していたんだ」
「へ~? 読み返したって事は2回目を読んだって事?」
「そう。どうしてもあのヘタレた主人公が気になってな」
「そりゃあ、守流くんから見たらヘタレかもしれないけど……私はいい感じの主人公だと思うけどな~」
「そうだな。それは認める。なかなかの漢だった」
「ふふっ、そっか……守流くんとはタイプが違うって事ね?」
「そう言う事だ。オレが今日、亜優に告白したのも、あの主人公に背中を押されたから、だからな」
もうすぐ亜優の家が見える。
「その髪型、似合ってるよっ」
唐突な亜優の誉め言葉に、今日はちょっとだけオシャレをした自覚のあるオレは正直照れる。
「学校にもその髪型で来てよ」
亜優が望むのならば……
「わかった。この髪型を作るには1分くらいしか時間はかからないから、別に簡単な事だ、任せろ」
「えへへ~」
そういえば、2人きりのうちに言っておきたいことがあった。
「ところで……亜優の『告白ノート』だが、これでとうとう終わりだな」
急な話題の転換に亜優が少し驚いたみたいだ。
「な、何で今、そんな話?」
「へへへ、オレが『28番目』だ。それでお終い。もう2度と誰も亜優には告白させない」
「なッ! 守流くんは『28番目』なんかじゃないよッ! 何言ってんのよ!」
亜優がおかんむりだが……あれ? 理由が良く分からん。
「どういう事だ?」
確かにオレは亜優に告白した。途中でオレに邪魔をされた、あの『引退元キャプテン三上』とは違う筈だ。
「どうもこうも無いですぅー! アレは『怒りの告白ノート』! 私を外見でしか判断しなかった人だけが名前を書かれる『ブラックリスト』なんだからねー! 守流くんが28番目になるワケ無いじゃん」
「そうだったのか……実はオレ、あのノートにオレの名前を書かれる事をな、少し楽しみにしていたんだ」
「……! え、あ~、じゃぁあ~……フッてあげよっかっ?」
亜優さん? えげつない冗談を……って、冗談だよな?
「待て待て待て、オレの話を聞け」
「なにさ~?」
「告白するのにオレはな、言葉だけじゃなくて『花言葉』も使ってだな、頑張った事を書いてもらえるんじゃないかと思って、そのな? ワクワクしていたと言うか……」
あぁ、オレのセリフが尻切れトンボに……
「え、えぇ~!? じゃ、じゃあさ、日記でも書く? 一緒に」
「日記!?」
「うん。あの小説の、病気の少女も書いてたし……私たちは別に病気とか無いから、2人共同で一冊。出来れば毎日会ってさ、お互いに書きたい事があったら、書きたい時に書く、みたいな?」
「いいな、それ」
「でも……ぷぷぷっ」
「何だ? 今何で笑った?」
「だって……守流くんが日記を書くなんてさ『見かけや見た目』で判断する人たちには、想像もできない事だろうな~って思ったの」
「おぉ! そうだな。オレをちゃんと理解できてるのは亜優だけだって考えると、それはそれでワクワクするな」
「じゃあ、明日にでもノート買いに行こっ? ……一緒に」
「さっそく明日会う約束だな? 是非とも喜んでだ」
☆★☆ カランコエの花言葉 ☆★☆
「ただいまー」
「お邪魔します」
「お、帰って来たねー! 早く手を洗って席について!!」
お姉さんがなにやら落ち着きを失っていらっしゃる。どうした事か?
オレたちは仲良く並んで洗面所で手を洗う。
ぴったりと寄り添っている距離は今までに無かった距離感で新鮮な感じだ。
「今日もご馳走になります」
オレはぺこりと頭を下げる。
だが、そんな事など興味も無いと言わんばかりのお姉さんに嚙みつかれた。
「ねえねえ真田くん? この花『カランコエ』なんだね~?」
思いっきり揶揄い口調なのだが別に隠す事でもなかったからオレは
「そうです。良く分かりましたね」
などと、通常対応だ。
「この花の『花言葉』わかってて亜優に贈ったのかな~(ニマニマ)」
「もちろんです。花屋の店員に聞きながら選びましたが……?」
お姉さんは自分で話したそうな素振りを一瞬だけしたが、思いとどまって
「亜優! 今すぐ『カランコエ』で検索しなさいっ!」
オレ、何かやっちゃいました?
カランコエの花言葉を検索したのだろうか、亜優が驚いて目を丸くした。
「『守ってあげたい…』ほかにもたくさん、凄く……凄く良い言葉ばかり……でもこれって」
「そう、告白に向いた花言葉じゃないわね。これはむしろ……」
一旦言葉を区切ったお姉さんがオレを見てまたニヤニヤする。
なんか楽しそうだな、なんて思った。
「プロポーズする時に贈る花みたいだよね、亜優?」
「うんっ」
亜優が嬉しそうに頷いたのを見て、お姉さんも嬉しそうに微笑んだ。
「良かったね」
それからオレたちは、立花祖父母とも一緒に、全員で美味しい夕食を頂いた。
☆★☆ フィットネスジム ☆★☆
お盆明けの8月21日から『升形ボクシングジム』のフィットネスに亜優も通う事になった。
オレはもうプロになる気は無くなっているので、通う時はオレと一緒。帰りも一緒。
亜優は毎日通うと言うわけではなく、いつ通うかは毎晩のラインか、直接会っている時に大体そういう話になる。
ただ、初めて亜優がジムに入った日は荒れた。大荒れに荒れた。
☆★☆ ☆★☆
「なッ!? なに? この女子率!?」
そう、フィットネスコースの生徒は約95%が女性だ。しかも若い。
「守流くん?」
亜優が白い目でオレを見つめているが……
「なんだ?」
オレは特に気にはならない。何と言っても中学1年から既に4年半ほど通い続けているジムだ。これで当たり前の状況だし慣れ過ぎていて、今さら気にするほどの事でもない。
「薄着の、若い女性がたくさんいますね?」
フフッ、亜優が丁寧語の時は、大体機嫌が悪い。
「そうだな」
「ほとんど毎日のように通っていたんですよね?」
「そうだな」
今さら何を当たり前のことを……
「ふ~ん……楽しいわけですね~」
だが、何だろう? この敗北感。
初回と言う事で、亜優にはトレーナーさんが付いて案内やら説明やらをするはずだったのだが、亜優はその全てを拒否して、オレにトレーナーさんの役割を強要した。
「真田くんでしたらもう4年も通っていますし、大丈夫だと思いますんで……思い切って任せちゃってもいいかな?」
このトレーナーさんも結構若くて綺麗な部類の女性である。
そんな女性にオレが信頼されている様子を見、挙句は『バチコーン』と、オレにウインクをかましてくれちゃった為に、先に述べたような『大荒れに荒れた』状態になってしまったのだ。
「じゃあ亜優、準備運動の後にエクササイズ。その後は柔軟をして、少しだけマシーントレーニングをして終わるってパターンでどうだ? 大体1時間半から2時間のコースだ」
「むぅーーーーー」
「一緒にやるからさ、どう?」
「やる! 絶対にずっと一緒なんだからねッ」
亜優が結構なヤキモチ焼きだと言う事をオレはこの日に初めて知った。
何故か嬉しい新発見だった。
その日、ジムを終えてからオレのアパートに入るなり、亜優は力いっぱいのハグを長時間に亘って仕掛けてきたが、オレにとってそれは別に痛くもなんともなかった。
むしろあまりに可愛すぎて、頭を撫でて頬を撫で、存分に堪能させていただいた。
☆★☆ 新学期 ☆★☆
朝、オレは立花家に亜優を迎えに行く。
一学期の頃は帰りだけ一緒だったが、二学期から……と言うか、恋人同士になったんだから、と言う訳でお互いの意見が一致し、朝も一緒に登校する事になった。
「お、はなちゃん、原田くんおはよー!」
亜優が友達カップルを見つけて挨拶すると、手を繋いでいた筈の川原・原田ペアが手を離した。
「お? 亜優に真田くんおはよー」
オレたちも手を離した方が良いのかな? などと思ったが、亜優はオレの手を繋ぐ力を強めて『絶対に離すんじゃないわよ』のオーラを撒き散らして来た為、オレも少しだけ強く握り返してみた。
「ねえねえ原田くん? どうしてはなちゃんと繋いでいた手を離したの~?」
亜優が原田くんを揶揄っている。
この揶揄い方、間違いなくお姉さん譲りだな。
「亜優ちゃん……そっちは手を繋いだままなんだね……」
川原の表情が寂しそうなのが気になったオレは、なにか出来る事は無いだろうか? と考えてみる。
「えへへへ~」
逆に亜優は楽しそうな表情だ。
人に見られたら手を離す。人に見られても手を離さない。
ここにどんな気持ちの違いがあるんだろうな?
そんなことを考えながらもオレは
「原田、川原。その……おはよう」
自分から挨拶をしてみた。
友人やクラスメイトと挨拶なんてした事など無かった。
過去のオレはずっとボッチだったからな。
それが今や……変われば変わるものだ。
「真田先輩、立花先輩、おはようございます」
原田くんも爽やかに挨拶を返してくれた。
空がいつもより青く見えて、風がいつもより気持ちよく感じる。
道がいつもより広く見えるし、視界全体が色濃く艶やかに見える。
「オレたちはな、学校に着くまで、手を離さないんだぜ?」
オレは原田くんに対して、亜優と繋いだ手を見せつけ、得意気に言ってやった。特に意味は無い。無かったはずだ。
「……はな」
だが、原田くんが川原に呼びかけて、手を差し出した。
「陸っくん……」
オレのおかげで? この二人も学校に着くまでは手を繋いでいくのかもしれない。
そう思うと何故か、嬉しくなった。
「守流って意外と世話焼きだよね?」
「そうだな……金を払っているただの会員なのに、わざわざ亜優の専属トレーナーをしてしまうくらいには世話焼きかもな」
学校に着いて、上履きを履き替えた後もオレたちは再び手を繋いだ。
教室に入り、お互いの席に着くまで離す事は無かった。
オレたちが『バカップル』と呼ばれる日もそう遠い未来の話では無い。
そうオレは確信した。
☆★☆ ボクシング部 ☆★☆
「今まで通り、たまに遊びに来て稽古をつけてくれるだけでいいんだ。ボクシング部にお前の名前を貸してくれないか?」
とある昼休み。新キャプテン松田がオレのクラスに殴り込みをかけて来た。
「いいぜ」
「そう言わずに頼むよ~って……え? いいの?」
「ああ」
「た、助かるよ。練習メニューのアドバイスやスパーの指導を頼みたい。試合に出たかったらもちろん選手登録もする。そういった事務手続きは俺の得意とする所だからな」
オレは週に2回くらいのペースでボクシング部に顔を出すことにした。
☆★☆ ☆★☆
10月7日~8日
県高校ボクシング連盟秋季大会。
地方大会も全国大会も無い、県内だけで行われる小さな大会だ。
各階級4名までの出場枠で、一人1日に1試合。トーナメント制で2回勝てば優勝と言う本当に小さな大会だ。
だが、年度末の選抜までに実践の経験を積む貴重なチャンス。棄権する訳にはいかない。
「なんとか関口以外の部員は全員出場できるな」
ボクシング部人口の低下から、抽選漏れの可能性は低かったが、ライト級は6人登録者がいて出場は抽選になった。松田にとっては最後の秋季大会。出場出来て良かった。
「今日から一週間、スパー中心で実践感覚を養う。最初にオレと1ラウンドずつだ! 各自課題を明確に意識しろ!」
「「「はいっ!」」」
キャプテン松田まで良い返事を返してくれる。
それだけオレを信頼してるって事か……
だったらその『信頼』って奴に応えないわけにはいかねえな。
オレは全力を出し切る。
戦うための全力ではない。
奴らの力を引き出すために全力を振るう。
☆★☆
「大弥! まだガードが甘いッ!」
オレはガードの中央のわずかな隙間から拳を捩じり込み、顎に右ストレートをぶち込む。
「パーリングをもっと意識的に使え!」
☆★☆
「サトシ! 攻めろ攻めろ! このラウンドでRSCをもぎ取れ!」
オレはもう、わざとガードを崩すような小細工などはしていない。
「スタミナに不安があるならペース配分を工夫しろ! 試合中に回復する方法だってあるぞ、教えたろ!」
「押忍ッ!」
あと10秒……
「ゴングまで打ち続けろ! 有効打1個でもラウンドを取れるんだぞ」
「押忍ッ!」
☆★☆
「松田は回避と防御がやっぱり上手いな……」
「へッ、言ってろ」
かつてオレは松田の事を気性が優し過ぎるとか、根性が足りないとか思っていたが……
オレのスタミナは奪いきれないと判断した松田は徐々に攻撃に転じてきた。
1ラウンド限定だからこその判断だ。
打たれる、だがガードする。反撃は出来ない。何故なら松田はすでにそこにはいない。
打つ、だが躱される。反撃される。オレはそれをガードする……!?
ガードの上から振り切って押されて、オレは一歩下がる。
下がった時のオレの足の運びは? フットワークの動きではない。押されて下がっただけで、ボクシング的バランスを保てていない!
松田のラッシュが始まった。
以前、立花の名前を叫びながら攻めてきた時とは質が違う。
丁寧で正確で速いし重い。
重い? だと!?
オレは松田の全体の動きを見る。まだ見る余裕があるからだが、コイツは……
コイツとは一度、本気で試合してみたい。
オレの闘争本能を刺激された。
あと、30秒はあるか。
オレは一旦ロープに身体を預けて深く沈みこむ。
そのせいで距離感が狂った松田がついに空振りをした。
振り切っていた訳じゃない。バランスも保っており、松田はすぐに拳を引いて次の動作に移る。
だが、一瞬の余裕をもらったオレは既に攻撃に移っている。
ボディボディーボディー! 押す押す押す!
リング中央まで押し戻した瞬間
『カンッ!』
松田とのスパーが終わった。
☆★☆
「試合当日は、全試合オレがセコンドに入る。文句ある奴いるか?」
「「「ありません!」」」
「よし、じゃあ今日はもう帰るがあとはお前らで勝つためのイメージをキッチリ作れ。シャドーはいつもより多めにやれよ」
「「「はい」」」
「それから関口……」
「な、なんでしょう?」
「おまえ、太り過ぎだ。一学期から20キロは太っただろ?」
「はい……」
「試合に出たかったら痩せろよ」
「は~い」
「よし、亜優、帰るぞ」
「うんっ」
☆★☆ 秋季大会 ☆★☆
「卒業までに一度は勝つ、卒業までに一度は勝つ!」
「大弥、それ、何の呪文だ?」
オレは入れ込み過ぎている大弥を見かねて声を掛けた。
「オレ、弱いっすからね……一度でいいから勝って遥香にいい所を見せてやりたいっす」
「ふーん……」
大弥なら心配要らないと思うけどな……でも、不安そうにしていた方が見ていて面白そうだからそのまま放置する事にした。
☆★☆
軽い階級から始まった秋季大会の初日。
他校の試合を見学していたオレは驚いた。
なんてレベルが低いんだ……と。
そういえばオレって普段、プロの練習を見学してて、それをこいつらに押し付けていたような気がしてきた。
我が北高は、ライト級の松田から始まり、ウエルター級の奈良、最後にミドル級の大弥。
この日のオレはただ、セコンドに居ただけだった。
一言くらいは声を掛けたがな……
☆★☆
大会2日目。つまり決勝。
流石に初戦を勝ってきた連中だ。昨日よりはいい試合をしている。
だが
「よっしゃー!」
まずは松田が秋季大会を難なく制した。
「押忍押忍押忍ッ! 真田先輩のおかげっス!」
奈良サトシも危なげなく勝利。
そして大弥。
開始5秒。
相手の左ジャブにサウスポースタイルからの右ジャブカウンターがクリティカルヒット。
繰り返す。開始5秒。
北高ボクシング部員はみんな……いつの間にか化け物揃いになっていた。
☆★☆ その後のオレと亜優 ☆★☆
3年生になってオレは進路を体育学部がある、近くの私立大学一本に絞った。
理由は地元に残る亜優と離れたくないことが第一で、あとは『スポーツインストラクター』の資格が欲しいのと『升形ボクシングジム』でのアルバイトを続けたいからだ。
オレがジムでバイトを始めた理由は、亜優を指導した実績が買われて、『インストラクター補助員』という立場で誘われたからだ。
仕事は主に、エクササイズのお手本の講師役。それとマシーンの調整や雑用を行っている。
薄着の若い女性が多い職場で、しかも薄着の若い女性客が多い事から嫉妬に狂ってしまった亜優とは、卒業式の翌日に籍だけ入れて結婚する事になった。
両家の家族も納得済み。
むしろ立花家の祖父母殿からは『出来るだけ早く亜優と結婚してあげてくれ』と懇願された。
一体何をどうしてこのような状況になったのか? いつか亜優のお姉さんにでも聞いてみたい。
もちろんオレも喜んで婚約した。
但し、式や披露宴は就職が決まるまでお預け。
そして、オレが立花家に婿入りし卒業後オレの名前は『立花守流』になる。
ところで亜優の進路だが、亜優は大学受験はせず、近所の『栄養調理師専門学校』に進学する。
既に受験を終え、合格。
相変わらずオレのアパートで毎日晩御飯を作ってくれている。
そしてオレのバイトの日には必ずジムに一緒に通い、エクササイズを楽しんでいる。
ん? 金を払って通っていたのに、今度は金を貰って通っているのか、だと?
………………。
その通りだ。
やってる事は案外変わらん。
だからオレは楽しくアルバイトできている。
それにな、実は……
大学を卒業したら、ここの正式な『スポーツインストラクター』としての就職を狙っている。
だってよ、体育教師とかになったら『人事異動』とかあるだろ?
単身赴任とかしちゃったらさ、亜優が凄く心配しそうだからな。
☆★☆
「守流、今日こそは美味しい『あんかけ湯豆腐』を作るわよ。期待しててね」
「何言ってんだ、この間のだってちゃんと美味しかったぞ?」
「嫌! お世辞嫌い。あれ、絶対違う。だから今日こそ納得がいく味にして見せるんだからね」
「なんかここだけ世界の色が違うんですけど……」
「そうね、なんかこう『ピンク色』みたいな?」
「紳士な真田くんに亜優が襲い掛かるイメージしか湧かないわね」
「見た目だと真田くんが肉食獣なんだけどね~実際は亜優の方が……」
「みおちゃんはなちゃん? 私たちまだ、そんな関係になっていませんからねっ!」
「みおちゃん聞きました?『まだ』ですって~」
「はなちゃん聞こえましたよ『まだ』ですってね~」
ははははは……
「ちょっと!? こう言う揶揄われ方は慣れてないんだからね! ちゃんと手加減してよねッ!」
懐かしい感じだけどそれってオレのセリフ……
ボディーガードから始まったオレと亜優の関係は現在『恋人』に進化している。
それに、もうすぐ『結婚』し『夫婦』になる事も決まった。
オレはもう生涯に一片の悔いもない。
だが、だからこそ、生きていける限りは全力でこの先を亜優と共に生きていきたい。
オレはもう誰に揶揄われても、例え笑われても、亜優を愛している事を隠したり照れたりなんかしない。
覚悟はできているからな。
だから
『UR亜優専用エターナルガーディアンエヴォリューションMKⅡファイナルヴァージョン改』
この話だけはどうか忘れて……忘れさせてくれ……
《《《 完 》》》
作中登場映画の参考作品:「花束みたいな恋をした」
作中登場小説の参考作品:「君の膵臓をたべたい」
┏○多少違和感を感じる場合が御座いますでしょうが、フィクションですので何卒ご承知おきください┏○




