那珂川の決戦 2
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そんなある日。
〈副委員長を拉致した。無事に取り戻したかったら誰にも知らせずに、お前一人で那珂川の河川敷にチャリで来い。警察や、ほかの者が来るのを見張りが察知したら、車で逃走し、高木さやかをマワして、さらし者にする〉
という暴走族〈紅孔雀〉からのメッセージが届いた。メッセンジャーは小学生低学年だった。休み時間に校門で遊んでいた一年生が受け取って二年生の光に届けに来た。それを読んで、光は最も信頼のおける公司に相談した。
「マワすてどういうこっちゃろうか?」
「何だろう? 吊るして、コマみたいに回すのかなあ…。ネットで調べてみるよ」
公司がスマホのヤフーで検索したら、ピクシブ百科事典には輪姦と出た。
「輪姦やて」
「リンカン? バイクで轢き殺すこと?」
「いや、ちょっと、ヤバイなこれは―」
「なんだよ、勿体ぶらずにいえよ」
「一人あるいは少数の女性を多数の男が代わる代わる犯すことだって。念仏講ともいうらしい」
「それ、そうとうヤバイな。やっぱ、オレが一人で行くしかなか」
「オレって完全に男言葉になってる。でもそれは無謀だよ。いくら君が強いからって。相手は鉄パイプや金属バットやナイフで武装しているし、改造車も、改造ピストルだって摘発されたことがあるくらいだから。数も多いし。勝ち目はないよ。
ここはヒカルの助力が是非とも必要だよ。奴らは二人には勝てないから一人ずつ潰すつもりなんだよ。一人で行っちゃあダメだ」
「―ダメダメッ! あいつには弱点がある」
「弱点? 確かに、顎の下をこちょこちょするとネコのようにうっとりしておとなしくなるけど」
女子だからとはいえない。
「絶対にあいつにはいうなよ。ほかの誰にもだけど。オレ一人で、きっと救出して来るから」
そういって城島光は放課後チャリで出掛けた。自分を犠牲にするつもりなんだ。公司は居ても立っても居られず、教室に居残ってウロウロしていた。
(どうしよう。担任にいおうか。でもそうなると警察沙汰になって高木が危うくなる。ケガ上がりの先輩にもいえないし…)
そこに、ヒカルが教室に入って来た。
「チビちゃん見なかった?」
「彼ならもうチャリで帰ったよ。何か用?」
ヒカルは胸を押え、なんだか胸がざわつくのよね、といって窓の外を眺めた。
「気になる?」
「そばにいるとウザイけど、いないと気になるんだよね」
「今日に限ってどうして胸騒ぎがするのよ」
「わかんない。ウチら」
「親戚だというけど、どういう親戚?」
「知~らない」
「てゆうか君、女言葉になってる」