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けっちゃ面とキツネ面の赤マント  作者: ミニマムコスモス
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第三章 六星学園中学校の乱 6


     6


「あいつが榊原ヒカルという奴か?」

「そうです。先輩より背が若干高く、強いのなんのって」

「それがどうして二年一組の副委員長と睨み合っとるんだ?」

 放課後のグランド中央で、榊原ヒカルと高木さやかが向かい合って立っている。

 公司と退院したばかりの稲垣生徒会長が土手の上からこれを眺めている。野球部員やテニスコーかからテニス部員も見ていた。

「ナンパですかねえ。高木さやかは学園きっての美人ですから」

「奴は硬派なんだろう?」

「それが女生徒にモテまくりなんですよ。まあ、背は高いわ、スタイルは良いわ、マスクはいけてるわ、ケンカは強いわ―ですからねえ」

「俺みたいじゃないか」

「あははは。確かに。でもなんか、先輩のような男臭さが感じられないんですよねえ」

「そうなのか? まあ、ちょっくらご対面といこうじゃないか。俺のいない間に、ヤンキーどもを打ち平らげた奴の顔を見てみたい」

 といって稲垣先輩は土手を下りて向かった。


 二人の間には殺気のような緊迫感があった。

 稲垣生徒会長と公司が近づいてようやくそのテンションの糸が切れて、二人はこっちを向いた。

「どうした?」

「別に」といって高木さやかはクールに前髪を掻き上げ唇を少し曲げた。「歩いていたらこうなった。お互い道を譲らなかっただけ」

「こんな広い所でか。第一、野球の練習の邪魔になる」

 稲垣先輩は遠巻きに見守る連中を見回してから榊原ヒカルを見た。

「君が転校生の榊原ヒカル君か」

 榊原ヒカルは表情一つ変えずに「あんたは?」といった。

 ―頭が高い!

「生徒会長の稲垣幸太郎先輩だ」と公司がいう。

「話は聞いている。大した活躍だそうじゃないか」

「雑魚ばっかりだからね」

「感謝する。おかげでみな安心して学園に通えるし、学園生活をエンジョイ出来る」

「イジメ見回り隊も出来ましたしね。あとは影番を倒せば。僕が思うに、族と繋がっているのは影番だけですよ。トラの威を借る何とやら、案外目立たないチンケな奴かも知れませんよ。それらしいのは彼が大方潰して、黒染めスプレーで真っ黒けにしちゃいましたから、虚勢を張ることも出来ずに、尻をすぼめてコソコソ歩いてる」

「ははは。そうなのか。公司お前、俺の傍ではそんな大言壮語出来なかったのに、榊原ヒカルが傍にいると、えらい威勢がいいんだな。そんなこといって影番の報復を受けても知らんぞ」

「それじゃあ私は弓道部に」黙って聞いていた高木さやかがいった。

「おおそうか」

 高木さやかは弓道部がある体育館に向かった。

 稲垣先輩は高木さやかを見送ってから榊原ヒカルに向き直った。

「俺と目線が合うのは高等部でもいない。俺は179センチ、君は?」

「181センチだそうですよ。担任がいってた。体重は先輩の方が重いはずです。同じようにスポーツ万能で、見てください、胸の筋肉の盛り上がりを。そのくせ腰は女のようにくびれていて、尻がきゅっと上がっているから、足がべらぼうに長い。城島光なんか立ったまますり抜けて行きそうですよ」

「ははは。彼が聞いたら怒るぞ」

「でもほら」といって公司は榊原ヒカルの手を取った。「手は柔らかいんです」

 長袖シャツの裾を持ち上げて、「色は白くてすべすべ、気持ちいいくらいに」という。

「女子なら俺の好みなんだがなあ」と稲垣先輩もいう。

 ―何こいつら。

 という顔でヒカルは目を眇めた。



 

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