第二章 水森美玖の投身自殺 6
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目には目を―教師がこんな脅しをかけて良いのだろうか。
しかし、その脅しは効果てきめんだった。クラス内は責任のなすり合いの場となった。他のクラスや上級生になすりつけようとする者もいた。金村郁子らはそれに加わらずに、互いに顔を見合わせているだけだった。
始終一緒にいて仲良しだと思われていた水森美玖と佐藤妙子が、実はそうではなく、そこに上下関係があり、水森美玖は佐藤妙子の植民地であり、奴隷だったという者がいた。
当の佐藤妙子の目は月夜の晩の湖面に揺れる月影のように怪しく光っていた。
城島光は何が本当で何がウソなのかじっと見極めようとしているように見えた。
生徒会長の稲垣先輩は、町の空手道場に通う三年生二人と二年生一人を、城島光に張り付かせて、影番勢力から守ろうとしている。そうすることが学園生徒をけっちゃ面から守ることにもなると。
二年一組の生徒は戦々恐々としていた。
何人かが固まって歩くようになった。その数が多いほど安心出来るのか、塊は徐々に大きくなった。心当たりのない者たちは一人か、いつものように二人ずれで歩いた。
その構図を見ただけで、水森美玖をイジメた者とそうでない者がわかるような気がした。
公司は今のところ城島光と歩くことが多かった。
いつも水森美玖と二人連れだった佐藤妙子は一人で歩いた。
そうして幾日かが事もなく過ぎた。
そして事件は起きた。