追放無双~追放すればするほど強くなりますが、罪悪感でいっぱいです~
「レーナ。お前をこのパーティーから追放する」
「え……」
魔法使いレーナ。
彼女は、勇者レオンから告げられた一言に「信じられない」という表情をしていた。
勇者レオンは、冷たい目でレーナに言う。
「お前のレベル、18だったよな? 俺は48で、ザックスは38、シレーヌは39だ。どう考えてもお前はお荷物。ここからの戦いに付いていけないんだよ」
「で、でも!! 私の魔法は」
「ああ、高位魔法も使える立派な魔法使いだ。でも……このパーティーにはいらん」
「そ、そんな……」
「お前の代わりはいくらでもいる。じゃ、元気でな」
「れ、レオン!! どうして……」
レオンはレーナに手切れ金を渡し、去って行った。
残されたレーナは、ひたすら泣き……フラフラとどこかへ消えた。
レオンは、宿屋へ戻り、酒を飲んでいる仲間たちの元へ。
「おう、レーナは?」
「ああ、追放した」
剣士ザックスはエールをグビグビ飲み、笑っていた。
「かかか。まぁシカタネェよな。あいつ、お荷物だし」
「ああ……」
「ま、しょうがないね。適当なところで新しい魔法使い見つけよ?」
と、僧侶のシレーヌがワインを飲みながら言った。
レオンは頷き、大きく伸びをする。
「はぁ~……わり、ちょっと眠いから部屋に戻るわ」
「おいおい、まさか勇者様が仲間を追放して心を痛めたとか?」
「ばーか。レオンがそんなヤワなわけないでしょ? 追放したの、もう五人目よ?」
「だな。ははは、ま、オレらみてぇな真の仲間にはなれなかったってことだ」
レオンは部屋に戻り、鍵をかけた。
そして……ボソリと呟く。
「スキル『追放』発動」
そして、レベルが48から57に上がった。さらに、レーナが習得していた魔法を全て覚えた。
勇者レオンのスキル『追放』は、追放した仲間のレベルの半分を自らのレベルにし、習得していたスキルや魔法、ステータスの半分を引き継げる。
強大な力ではあるが……代償は、罪悪感。
「う、ぐぅぅ……ごめん、ごめんよレーナ……きみは役立たずなんかじゃない。俺の大事な仲間。仲間なんだ……でも、きみのレベルの限界値は20。これ以上は上がらない。もう、危険な目に合う必要もないんだ……ごめん、ごめん」
仲間を追放することで強くなる。
いずれ、ザックスやシレーヌも追放する。
レベルの限界値が来たら追放する。
罪悪感で胸が潰れそうになるが、スキル『追放』の効果は『相手に本心が知れると追放が無効化される』という弱点もある。だから、この罪悪感や本心は決して知られるわけにはいかない。
「アイゼン、ホーマー、ロッシュ、ミケ。そしてレーナ……安心してくれ。俺は必ず魔王を倒す」
追放勇者レオンは、拳を強く握りしめ、これまで追放した仲間全ての名前と顔を思い浮かべた。
◇◇◇◇◇◇
「お、オレが……追放だと!? なんでだ!? ずっと一緒にやってきたじゃねぇかよ!!」
「そうだな。でも、お前のレベルは上限に達した。これ以上は成長しないし、強くなれない。これから先の戦いでは足手まといなんだよ」
「ふ、ふざけんじゃねぇ!! オレは」
「もういい。ほら、手切れ金だ」
「れ、レオン……クソ!! もうお前の仲間になるやつなんかいねぇぞ!!」
「だからどうした? ったく、役立たずばかりだ。もう仲間なんて必要ないかもな」
「言ってろ!! このクソ野郎が!!」
剣士ザックスの追放。
ザックスのレベルは80。半分の40がレオンのレベルとなる。
旅を始めてからすでに3年。レオンのレベルは200を超え、世界最強の勇者と呼ばれていた……が、その名声よりも、『追放勇者』としての悪名のが有名だった。
勇者レオンは、仲間を喰い物にしている。
勇者レオンは、仲間をすぐ追放する。
勇者レオンは、誰も信じていない。
勇者レオンは、強いけど最低。
勇者レオンは。
勇者レオンは。
勇者レオンは。
勇者レオンは───。
「ずいぶんと、嫌われたモンだ」
レオンは、一人苦笑した。
レベル200。
人間の最高レベルが100で、勇者であるレオンにレベルの上限がない。だが、悪名が広がりすぎて、もはやレオンの仲間となる人間は存在しなかった。
今は、たった一人で焚火の前にいる。
「魔王を倒せば、世界は平和になる。もう、俺の存在も必要ない」
世界は、レオンを祝福するだろうか。
魔王を倒せば世界は平和になる。その世界にレオンは必要なのか。
「全て終わったら、畑でも耕して暮らそう。犬を飼うのもいいな……一人だけど、きっと寂しくない」
レベル200の力がみなぎっている。
これなら、魔王を倒せるだろう。
「さぁ、世界を救おう」
そして、孤独な追放勇者は、魔王を倒して世界を救った。
魔王が討伐され、世界が救われた。
だが───勇者レオンを祝福するものは、誰もいなかった。
仲間を信じず、一人で戦い勝利した勇者だが、その偉業よりも悪名のが優っていた。
勇者レオンが新たな魔王になるのでは、なんて声もあった。
だから勇者レオンは、魔王討伐の報告をすると、何の礼も受け取らずに去った。
どこへ向かうのかも明かさず、ひっそりと消えたのである。
◇◇◇◇◇◇
とある小さな村の外れに、一人の若い男が住んでいた。
小さな家に住み、大きな犬を二匹飼い、狩りや畑を耕して暮らしていた。
男の名はレオン。世界を救った勇者である。
レオンは、畑を耕しながら汗を拭った。
「ふぅ」
『ワン!!』『ワンワン!!』
「おお、喉が渇いたのか? 今水をやるからな」
二匹の大きな犬が、尻尾を振ってレオンに飛びついてくる。
すると、一匹が明後日の方を向き、吠え始めた。
「ん? どうし───「見つけた、レオン」……え」
そこにいたのは、魔法使いレーナだった。
大きな荷物を持ち、レオンを見て嬉しそうにしている。
「れ、レーナ……どうして」
「あなたを探していたのよ」
「あ、いや……その」
「ずっと不思議に思ってた。あなたが、私を……私たちを、本当に追放するのかって。あんなに私を大事にしてくれたあなたが、レベルが上がらないからって手のひら返しするのは不自然だと思ったの」
「……あー」
「それで、あなたが追放した仲間を集めて話し合ったのよ。そして、勇者のことを調べた。古い文献をいくつも読み漁って、ようやく可能性が見えたのよ。スキル『追放』……レオン、あなた、レベルを上げるために、わざと追放したわね?」
次の瞬間、レオンのレベルが9下がった。
レーナはすかさず『鑑定』スキルでレオンを見る。レオンのレベルは191になっていた。
「やっぱりね。当時の私のレベルは18。追放するとレベルの半分を自分のレベルにできるのよね? やっぱり……あなた、優しいんじゃない」
「…………ああ、負けたよ」
レオンは認め、レーナに頭を下げた。
「レーナ。心無い言葉でキミを傷付けた。本当に……申し訳なかった」
「いいのよ。あなたのことだし、レベルを上げて最後は一人で魔王と戦うつもりだと思ったわ。そうすれば誰も傷つかないしね」
「……」
「でも、もう大丈夫よね?」
「え?」
「レベル。下がっても大丈夫よね? あなたが掴み取った平和があるし、最強の勇者が最弱になっても、大丈夫よね?」
「レーナ……それって」
「ふふ、何日かすればみんなここに集まるわ。みんな、あなたの謝罪を待ってる。それと……世界を救った勇者を祝福したいってね」
「…………そんな資格」
「いいの。私たちが勝手にやりたいだけだから。悪いと思っているなら、付き合いなさい」
その後───勇者レオンのレベルは10まで下がった。
魔王よりも、自分の仲間たちよりも弱くなったが……勇者レオンの周りには、信頼できる仲間たちが大勢集まったという。