76 浅川さんと一緒に①
昨日は女の家で一晩を過ごし、今日は別の女とデートをする。
文字面だけ見ると結構なクズっぽいのに何で俺はこんなに女性に振り回されているのだろう。
ばしっと言うべきなのかもしれないけど、そんなこと出来たらこんな苦労人生送ってないんだよなぁ。
昨日はいろいろ発散して、美容院行って洗車などできることを行った。
とりあえずこれで好感度20点くらいは稼げるだろ。言動の危うさとか話のつまらなさで減点30点されて、-10点の面白みのない男くらいで終了できれば御の字だ。
お仕事の担当者を変えられてしまうほどの減点男に思われないようにしないと……、そこだけは避けたい。
集合場所は浅川葵さんが住んでる浜山市東区の最寄り駅の駐車場である。
そこで拾って、掛河花鳥園の方まで俺の愛車で向かうことになっている。
元々どこへ行きますか? と葵さん相談した上での決めた場所だ。
浜山からそう遠くはないし、お互い幼少時に行ったっきりの場所である。
バードショーとか久しぶりに見てみたい。
「お待たせしました」
葵さんが来られたようだ。
「ひゅぅ」
淡い色フレアスリーブにロングスカート。何となく大人っぽく見えてしまう。ブランドモノで固める所長や活発な仁科さんとはまた違った魅力はあるなぁ。
この前、映画を見に行った時に比べて格好もお化粧もしっかりとされている。
ちゃんと準備しておいてよかった。向こうがそうならこちらもちゃんとしないといけないからな。
「今日はお誘い頂きありがとうございます」
「いえ、お車を出して頂き申し訳ありません」
相も変わらず栗色のショートボブは美しい。
ロングも好きだけど、ボブタイプも魅力的だ。ずっと見続けたい女性の髪の神秘とも言える。
うーーん?
いつもより髪の量が多くないか? ショートって感じではないような気がするんだが……。会ってなかった期間で伸びたのかな。それともエクステか?
まぁいいか。
「浅川さん、助手席の方へお乗りください」
「今日は宜しくお願いしますね」
うーーーーーん?
「あの……」
「はい?」
「浅川葵さんですよね?」
「ははは……はい、そ、そうですよ、葵ですよ」
じゃあ、なんでそんなに胸が突き出てるんだろうか。
ゲスな話だが、葵さんの胸のサイズは九宝さんよりちょっと小さめくらいなイメージである。
なのに明らかに胸部が盛り上がっている。仁科さん以下で所長以上。
そう、浅川茜さんくらいに思える。
胸パットか? いや、それはさすがにないだろ。
この人、どう見ても茜さんだ。髪も普段は肩まで伸ばしているのに無理やりショートボブにしている。
なぜ、こんなことに……?
替え玉か? そんなことするメリットがあるように思えない。
あるとすれば何かの事情で葵さんがいけなくなって、茜さんが代わりに来たってくらいか。
……正体を隠そうとしてるわけだし、それを無理に暴く意味はないな。
俺からすれば葵さんも茜さんも同じ重要なお客様でもあるのだ。
「では浅川さん、行きましょう」
「はい!」
茜さんだろうが、葵さんだろうが……緊張したデートになるのには変わりないのだから。