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72 仁科さんちで2人きり②

「仁科さん、これお土産に持ってきたよ」

「次郎のバームクーヘン! 美味しいよね~、ありがとう」


 ここが仁科さんの住むマンションかぁ。

 会社の社宅補助上限の1LDK、約6万円。

 駐車場は別で借りてるって言ってたな。


 築10年経ってないので部屋の中はかなり綺麗だ。

 東京と違って、浜山の家賃はそこまで高くないのがありがたい。

 俺の家も東京だったら20万越えるんじゃないかなって思うし。


「そんなキョロキョロしたら恥ずかしいよ」

「あ、ごめん。人の家って何か珍しいじゃないか。俺、女の子の家って行ったことないし」

「そうなんだ。それを言うならあたしだって男の子の家に行ったことないし」


「え、そうなの?」

「そうだよ~。今度、花むっちゃんの家に招待してもらおうっかな」

「俺の家は何ぴとたりとも侵入を許しません」

「なんでそこまで頑ななの!?」


 またタペストリー増えたんだよな……。

 ほぼ全裸のヒロインが触手モンスターに絡みつかれてるイラストが俺の部屋にでかでかと張り巡らされてる。

 今度、等身大フィア(※宮廷スローライフメインヒロイン)のフィギュアも作られて、俺の家に送られてくる予定なので絶対に誰も入れさせない。


「それにしてもいい匂い……もしかして」

「うん! あたしの料理を振るまってあげる。ちゃんとお腹空かせてきた?」

「腹ペコだよ! 仁科さんって結構料理好きだよね」

「実家にいるときからよく作ってたからね」


 仁科さんは確実に外で食べないって分かってる時はお弁当を作って持ってきている。

 仁科さんの弁当を味見させてもらったことあるけどめちゃくちゃ美味かった。


 リビングには大きなテーブルがあり、思わず涎が出てしまいそうなほど良い匂いする料理が並べられていた。

 玉葱とマヨネーズたっぷりのポテトサラダに形が綺麗なオムレツに食欲をそそる豚肉の生姜焼きに特大のハンバーグ、あっつあつのグラタン、彩り綺麗なサラダに……。


「量多くない!?」

「作り過ぎちゃった。てへ」


 この子ってあらゆる仕草があざとかわいい。そりゃ同期のみんなが恋するって分かる。

 椅子に座らせてもらい、炊きたてごはんとお味噌汁が俺の前に置かれる。


「男の子だからめちゃくちゃ食べるでしょ。弟は出したもの全部ペロリだよ」

「学生時代だったら余裕だったけどね……」


「うーん、でも余ったら残してもいいよ。ムリしないでね」

「絶対美味いって分かってるし、腹が限界だったら持ち帰らせてもらおうかな」


「温かいままの方が美味しいゾ」

「確かに!」


 そんなわけで頂きます!

 箸を借りて、一番熱そうなグラタンに箸をつけた。

 スプーンを使うべきだったとちょっと後悔したけど、マカロニとチーズとクリームソースが絶妙な加減で掴めたのでそのまま口に入れた。


「うまっ!」

「そうでしょ、そうでしょ」


 仁科さんがニコニコしながら着席する。

 次にハンバーグを掴んで、口に入れる。ジューシーな肉汁が口の中に溢れて最高に美味い。

 俺も自炊はごくまれに行うがこうはならない。


「ほんと毎日でも食べたいくらいだよ」

「じゃあ毎日食べてみる?」


「んごっ!」

「慌てて食べちゃだめよ。ほらっ、お水」


 今の不意打ちだと思う。

 やめろぅ。女性とまともに付き合ったことのない俺にその言葉はよく効く。

 そんなこと言われてドキっとしない男はいないんだよなぁ。自作のラブコメでもよくそんなシーンを書いてる。


「まったく……仁科さんは冗談が過ぎる」

「ん~~。でも半分冗談ではないよ。結婚したらご飯を毎日作りたいなぁって思うし」


「仁科さんは結婚願望とか強い方?」

「そりゃね。子供だって欲しいもん。花むっちゃんは?」

「……俺はそうでもないかな」


 まだ26歳というのもあって、そこまで結婚願望は強くない。

 遊びたいというより……副業がある程度落ち着くまではなかなか手を出しにくいと思っている。

 でも30前後くらいで考えたいよなぁ。


 できれば俺の副業に理解ある人が……。目の前の子とか……きっと理解してくれるんだろうなと思う。

 ま、そんなこと言えるはずもないんだけど。


「そうなんだ」


 仁科さんの表情が少し曇ったのは気のせいだろうか。

 いや、気のせいだろう。


「まー、あたしも今は仕事をしっかり続けたいし、もうちょっと先でもいいかな」

「そうだね。盆休みが終わったらまた頑張らないとな。そういえば……明後日に帰るんだよね」

「うん、そうだよ~。東京に戻ったらね~」


 それから食事が終わるまでにこやかに話すことができた。

 何を話せばいいやらって悩んでいたけど意外に話せるじゃないか。

 言葉が詰まらず話ができる相手こそ気軽な女友達って言うんだろうな。

 初め電話した時は緊張したけど、もう緊張することはなさそうだ。……仁科さんはもう、俺にとって仕事仲間で同期であり……友達なんだから。


「ごちそうさまでした!」

「全部食べきるなんてすごいね、男の子!」

「腹がやばい……。明日は運動しないとな」


 ふぅ……満腹だ。

 もう何も入らないや……。

 もしかしてデザートとかあったりするのかな。お菓子だろうが、飲み物だろうが……何も入らないぞ。


「むぐっ?」


 仁科さんがエプロンを外して椅子にかける。

 大きなエプロンだったので気付かなかったが、ゆるゆるの胸元が開いたTシャツにショートパンツスタイルだと思う。

 そんなわけでムチムチの太ももが露わになる。


 もしかしてこれがデザートでしょうか。


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