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69 (仁科視点)最近のお悩み

 ふぅ……。


 あたし、仁科一葉は最近よく勘違いされるが、別に花村飛鷹のことを好きでも何でも無い。


 そりゃ相談に乗ってくれるし、優しいし、背も高いし、言葉遣いも落ち着いてるし、一歩下がった視点であたしを尊重してくれる。

 新人の時の酒の席でのフォローはとても嬉しかったし、本社の奴らから受けた嫌がらせの時も……あたしに微笑みかけてくれて本当に嬉しかった。

 この前Y社であった彼のミスで落ち込んでる姿も本当に助けてあげたいって気持ちにさせられたし、彼のありがとうの笑顔はとても朗らかになる。


 ……。


 あれ? あたし、花むっちゃんのことすごく気にしてる!?


 最近そんなことを考えるせいで執筆がうまくいっていない。

 絶好調の陽葵ちゃんは新作がついに日間ランキングの下の方に入っていたし、所長はラブコメオンリーだけど意欲が高くバンバン作品を出している。

 あたしはこの1ヶ月、新作は出せないし、既存作の更新も上手くいっていない。


 ……仕事はわりと快調なのになぁ。

 悩む原因の1つは……アレだろう。


「葵さん、花むっちゃんのことが好きなのかな」


 女子限定のSNS上であたしの歪んだ顔が見たいという戯言から始まった。

 あの時は冗談だと思ってたけど、この間、実際に葵さんは花むっちゃんを誘ってしまった。


 男性慣れしてるなら分かるんだけどのあのSNS上の女性5人、全員モテるけどまともな男性経験のない未経験女ばかりである。

 所長と茜さんは男性にやらかされた経験があっての不信。陽葵ちゃんと葵さんは女性としか接することがなかった環境下ゆえの箱入り感がある。

 あたしはそのどっちでもないけど……まぁそこはいい。


 葵さんも花むっちゃんをからかってるけど、他の男性と一緒で一定のとこまで踏み込まないと思ってたのに……その一線を踏み越えてる。

 ある程度の好意がなければお誘いなんてしない。あたしだって……お誘いするのに結構勇気がいったもの。

 っていうか来週盆休みで一緒に飲みに行こうって言ったのに全然話が進まない!

 花むっちゃんは全然誘ってこないし……! あたしが誘えばいい話なんだけど……そんなグイグイいけるほど気になる男性にアタックする度胸があるわけない。


「はぁ……お茶でも飲もう」


 その時だった。スマホから着信が入る。

 お母さんかな。来週、東京の実家に帰るし……。もしくはその時に会う女友達だろうか。


 スマホの着信相手にあたしの時が止まった。

 思考が追いつかないまま通話ボタンを押してしまう。


「もももも、もしもし!」


 やばいテンパった。


「お、お、お、おつかれさま! は、花村です!」

「に、仁科です。お疲れ様で……って会社携帯じゃないよね」


 フォーレスでは営業全員会社携帯を持たされている。

 通話料金の精算処理が面倒なのと最近ではカメラ付きのスマホの持ち込みを制限する企業が増えているのであたしも花むっちゃんも会社携帯を持っていた。

 花むっちゃんから連絡が来る時は基本会社携帯なので油断していた。


「えっと、そのプライベートな話だし……会社携帯使うのは違うかなって思って」

「まぁ……そうだね」


 真面目だなぁ。

 郵便とか予約とかに個人携帯使って通話料金かかるのが嫌で会社携帯使ってる不真面目なあたしは何も言わない。


「今大丈夫かな? ちょっと話してもいい?」

「うん、いいよ。執筆にも行き詰まってたし」


「ふぅ……そうか。……その俺、仁科さんに伝えたいことがあって」


 胸がドキリとした。


 な、何だろう……そんな改まって。

 プライベートで花むっちゃんがあたしにいったい何を……。


「いろいろ考えたけど、やっぱり仁科さんしかいないって思って」

「ふぇ……」


 やば、変な声が出た。

 何だろう、すごく胸がドキドキする。

 これやっぱり告白とかそんな流れかな……。

 告白なんて今までの人生で3ケタくらいされたのに何で今更こんなにドキドキするの!


「俺、本当に不器用で、でも仁科さんなら支えてくれるって、だから!」

「う、うん!」

「俺と……!」

「っ……」


「ちょっと待って、何かこのやりとりおかしくないか?」

「うぉぉぉぉぉ!?」


 また変な声出ちゃった。


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