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62 男、花村同期と飲む②

 信頼できる面々を集めて、仁科さんに対するいやがらせの件の情報共有と対処を考えたいと思っていた。


「ああ、ちょっと噂になってたもんな」

「花むっちゃんや俺みたいな開発部はみんな知らなかったよ。知ってるの業務部だけだと思うぜ」

「しかし、メールでそんな嫌がらせするなんてな。社内のリテラシー的にバカじゃねぇの」


 同期達が酒を飲みながら各々発言をしている。

 情報統制とまでは言わないが知っている、知らないの境が明確になってきたな。

 この中に1人総務部の人間があり、仁科さんが元所属していた総務部の情報統括する課の話をしてくれた。


「仁科さんの教育者(エルダー)って有坂さんだろ」

「名前は聞いたことあるような……」

「俺達の2期上の女性社員だよ。仕事はそこそこできるけど、口達者で、性格悪いし、ザ・女って感じだよな……俺はあんまり好きじゃない」

「その人が仁科さんを……」

「あとは課長の吉名さんとできてるって噂もある。その2人が組めば……仁科さんを追い出すなんてわけないだろうよ」

「吉名さんってやべぇ人だろ。あの人のパワハラで辞めた人結構いるらしいぞ」


 何だかちょっと腹が立ってきた。

 もちろん仁科さんの総務時代のことはよく知らない。

 仁科さんにも至らなかったことがあったかもしれない。


 だけど……今の彼女を知っているからこそ彼女に協力してあげたい、そう思う。


「俺の嫁が元総務部だし……いろいろ聞いてみるよ」

「僕の後輩が総務の子と付き合ってるし……探ってみるかな」

「俺ももう少し……部内を調べてみる」

「俺は社内ネットワークを洗ってみるかな。変な履歴があればピックアップしておく」


「みんな……助かるよ。でも無理はしないでくれ」


 本当に気のいいやつだ。

 でも彼らは自分達の業務内容で手いっぱいだと思うし家庭もある。

 手を掛けさせすぎるのは良くない。


「ここにいる奴らはみんな仁科さんに告って振られて……若干気まずい時期もあったけどやっぱり彼女のことが好きだったから笑顔でいてほしいと思うんだよな」

「……」

「それに花むっちゃんには恩があるしな。大きなことは返せないけど……これぐらいさせてくれ」


 同期達の優しい言葉に感動していると突然扉の襖がガラリと空いた。

 入ってきたのは少しだけ年上のスーツ姿の同僚だった。


「すまん、遅くなった!」

「おつかれさまです!」


 全員でその人に礼をする。


「まだ終わってないよな?」

「もう終わるよ。笠松さんはカードだけくれりゃいいし」

「ひでぇもんだ」


 俺は来てくれた笠松さんに声をかける。


「お疲れ様。笠松……さんの方がいいかな」

「会社の中じゃないしここでは同期の笠松でいいよ。いくら副部長だからって同期から遠巻きにされたらヤだし」


「よ、さすが同期一の出世頭!」

「仁科フラレ同盟最大手!」

「年収一千万うらやましいぞ、カードよこせ」

「新人の頃、クラブでう○こ漏らした件忘れてねーぞ」


 同期の笠松くんは5年目ながら副部長という地位についている。

 元々この会社に相応しくないほどの実力者でここ最近まで海外で大きな成果を挙げて、日本に戻ってきた。

 美作所長よりもさらに上の出世頭とも言える。

 本気で優秀だからな。新人教育の時にあまりのスペックの差に驚愕したくらいだ。 ま、それでも仁科さんを手に入れることはできなかったけど。


 会社内では役職がついているので笠松さんと礼をつくすが、こういう場では同期なので昔ながらの仲で話し合う。

 新人の頃、キャバクラで全裸で盆踊りしていた彼の姿はスマホのデータとして残っている。

 20年後くらいに彼が重役になったら、お話する時に使うとしよう。


 さらに次の期かその次くらいに総務部の部長になるんじゃという噂もある。

 彼には同期として頑張ってもらいたい。


「仁科さんのことは俺も聞いたよ」


 笠松くんも海外にずっといたから、知っている情報は俺とそう変わらない。


「花むっちゃんには新人の頃に世話になったからな……。俺に出来る事があったら何でも言ってくれ」

「ああ、ありがとう笠松くん。君の力があれば……きっと変わってくるはずだ」


 今はまだこれ以上は無理だろう。

 だけど……いつか危機に陥った時に協力者と共に彼女を守っていきたい……そう思うよ。


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