56 サマー・ビーチ・レクリエーション⑪
何か変な感触がして目が覚めたら黒髪ロングの美女が俺のベッドの中に潜り込んでいたのだ。
半端な覚醒だったが、そこで一気に目覚めることになる。
く、く、九宝さん!? なんで、俺が取った部屋で寝ていたはずじゃ。
慌てて逃げようと思ったが九宝さんが強く俺の体を抱きしめていた。
「ふふふ……抱き枕」
「俺は抱き枕じゃない!」
いやいや、枕と男を間違えるか……?
仁科さんや所長を起こすと面倒くさいので小声で九宝さんに声をかけるが目覚める気配はない。
それよりもさらに強く抱きしめてくる。
パジャマが乱れ、十分に育った胸元と首筋が俺の性癖を刺激する。
真っ暗じゃなければ隅から隅まで見たい所だった。
手の置き所がなく、仕方なく九宝さんの背に触れる。
「髪質やべぇ」
さわさわというか何というか凄かった。
しかも何か良い匂いするし、俺が逆に抱き枕にしたいくらいだよ。
仁科さんや所長に比べればスタイルの良さは劣っているのかもしれないが身長との対比を考えればむしろ最高じゃないか?
いろんな所を触りたくなってしまう……。
落ち着け、落ち着け。
九宝さんだってずっとしがみついているはずがない。
チャンスはいずれくるはずだ……。
そうして1時間ほどが過ぎ、まったくチャンスがこないことに絶望する。
それはそれとして人肌の温かさにちょっと感動している。
26年独り身だった俺は誰かと一緒に寝るって経験がなかったから……こうやって1つベッドに2人ってエロい意味だけじゃなくて安心という意味でも大きいんだ。
彼女が欲しくなってくる。
「ふわぁ……」
「っ!」
気付けば所長が起きてテクテク歩いていた。
この状況をバレるわけにはいかない! 布団を被って俺の存在を視界から何とか外した。
ガチャっと扉を開けた音がしたのでトイレに行ったのだろう。
5分の後、戻ってくる。
これなら大丈夫だろう。
「う、さぶっ」
分かる。トイレ行ったらなんか体冷えるよなぁ。アレなんか生理現象か何かだろうか。
夏とはいえ夜はやはり冷える。
「ふえ、陽葵帰ってきてるじゃなーい」
げっ、九宝さんの存在がバレた。
「陽葵であったまろーーー。えーい」
所長が九宝さん目がけてベッドに向かってダイブしてきた。
なんつーことをしてくれる!?
くそ、これじゃバレてしまう……!
「ぐぅ……」
そして所長からの口から寝息が漏れる。
「うぅん」
あ、ちょ……寝返って俺の体の上に所長の体が……。
待って、これおかしいだろ。どうしてこんなに。
ちょうどいい位置に所長の顔が来てしまった。
今はメイクをしてないから美女というよりは美少女だけど……唇柔らかそう。
思わずチューしたくなったけど何とか耐え抜いた。
しかし、小柄なくせにいいカラダしてやがる。こういう小柄のに覆い被さって心ゆくまでイチャイチャしたいけど、それをしたら間違いなく死である。
「んん」
九宝さんがさらにしがみついてくる。
なんだこの展開。起きる気まったくねーのかよ……。
乱暴にひっぺがすか? でもその衝撃で目覚められて問い詰められたら面倒くさい。
どうすりゃ……。
「んぅ!」
ばっと誰かが起きた。
残るは仁科さんだ。仕方ない、仁科さんに事情を話して助けてもらおう。
「くるしい」
ちょ、おまッ……。
暗闇だからシルエットしか見えないが、Tシャツを脱いでブラジャーを外し始めた。
そうだよねぇ。寝る時ブラ外す人が多いって聞くしねぇ。
できれば明るい時に見たかったよ!
ぶんと放り投げてそれが見事に俺の頭に落ちてくる。
マジかこれ。