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49 サマー・ビーチ・レクリエーション④

 人が増えると車内は騒がしくなり、所長に仁科さんに3人で話が盛り上がる。

 そんなことをする内に九宝さんが住むアパートへ到着した。


「こ、これは……」


 仁科さんが普通のアパートで、所長が高級マンションなら、九宝さんの住む家は……ボロアパートだった。

 九宝さんも浜山出身だから家賃補助は出ない。

 確か家族で住んでいると言っていたからこれが彼女の実家となるのか。


「花村くんは陽葵の家は初めて?」

「はい……そうですね。正直びっくりしました」

「お父さんとの件は聞いてるんだよね。陽葵ちゃんは今、お母さんと2人で暮らしてるんだよ」


 アパートの道沿いにハザードを付けて停め、九宝さんが来るのを待つ。

 しかし……元社長令嬢で没落したと言っていたがここまでになるものなんだな……。


「おはようございます」


 九宝さんが現れた。

 背筋を伸ばし、綺麗にお辞儀をする。

 今が貧乏であっても育ちの気品さはまったく損なってない。

 地味なショートシャツとロングスカートだが九宝さんが着ることでまったく見劣りしていないように感じる。


 九宝さんの私服はこの前喫茶店であった時に見ていたので初見の驚きはないが、やはり美しい。

 しかし、こんな美人がセキュリティボロボロのアパートに住んでいるって大丈夫なんだろうか。


「陽葵ちゃん、おはよ~! 今日もかわいいねぇ」

「阿部さん、おはようございます」

「陽葵ちゃん、今日はおでかけかい?」

「はい、今日は会社の方々とお出かけするんですよ」


 アパートの住民達だろうか……、道路に出るたびに九宝さんに声をかけていく。


「九宝さん、今の人達は……」

「近所の方々です。みなさんお優しくしてくださるので快適に暮らしているんですよ~。この前、変な人に追われたことがあったんですけど、みなさんが守ってくださって……」


「おい若造」

「のわっ!? 住民の方々!?」

「陽葵ちゃんに手出したら許さねぇからな。陽葵ちゃんは俺たちのお姫様だ。なんぴとたりとも触れることは許されぬ」


 何様だよ。

 なるほど、美し過ぎて手を出せないレベルってわけか。

 気持ちはよくわかる。彼らは姫を守るために騎士ってイメージかな。

 住民の方々がガヤガヤうるさいので適当に相手にすることにした。

 くそっ、男だから要注意人物にされてんのか。俺の顔みろ、九宝さんに合うわけないだろうに。


「陽葵」


 九宝さんを呼び止める女性の声に俺もそちらに視線向ける。


 そこに現れたのは黒髪ロングの女性だった。

 その美しさ、見ただけでも分かる血の力、まさしく九宝さんのお母さんという感じの人だった。


「お母様、どうしました?」

「今日は会社の方に同行させて頂くのでしょう? 是非ともご挨拶をと思って」

「そんな! は、恥ずかしいです」


 いきなりの母の登場に九宝さんも慌てている。

 前に九宝さんがいってた話を思い出すとあのお母さんも良いところの人みたいだな……。


「おはようございます。陽葵さんの所属する事務所の所長をしている美作です」


 さすが所長!

 いち早く車から降りて、帽子もサングラスも取って丁寧に挨拶をする。


「あら!  お綺麗なお方。娘がご迷惑をおかけしていないか心配で」

「ご迷惑どころか活躍をなさっていますよ。陽葵さんの成長に所員一同期待していますから」

「所長まで! もー!」

「私は母として不甲斐ないばかりで……。娘のことをよろしくお願いします」

「もう、お母様、いいから! 花村さん、車を出してください、一刻も早く!」

「お、おう!」


 珍しい九宝さんからの押しにびっくりするが、状況的に仕方ないだろう。

 お母さんに一礼させてもらい、さっそく車を発進することにした。



「ああ、もう……恥ずかしいです」

「いいお母さんじゃない。あたしのお母さんはあんなに丁寧なお辞儀できないよ」

「昔から心配症なんです! もうわたしも社会人なので信用してくれてもいいのに」

「母はいくつになっても娘を心配するものよ。私だって実家に帰ったら小うるさいし」


「所長の言う通りさ。お土産でも買ってあげなよ」

「あ、花村さん、お迎えありがとうございます。すみません、乱暴な言い方になってしまって」

「気にしてないさ。じゃあ、改めて出発しようか!」


 所員全員揃ったことで目的地に向かって車を走らせる。

 今日は快晴だなぁ。楽しい日になればって思う。


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