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48 サマー・ビーチ・レクリエーション③

「もうすぐ着きまーす!」


 仁科さんには所長への連絡をお願いした。

 次の角を曲がれば所長の住むマンションに到着する。

 歓迎会の時は俺が先にタクシーを降りたから所長が住むマンションって見たことないんだよなぁ……。

 そこに現れたのは新築に近い綺麗なマンションだった。10階建てくらいありそうだ。さすが所長、いいトコ住んでるな。


「おおー、でかいな」

「一度だけお邪魔したことあるんだけど、部屋も広いよ!」


 広々とした駐車場に止めさせてもらう。


「所長も浜山出身だから……家賃補助は出てないよな」

「うん、でもほらっ、所長は資産運用で結構稼いでるから」


 休憩中に株の動きとか経済誌とかよく読んでるもんな……。

 大学でも経済を学んだって言ってたし、元々出来る人なんだろう。

 俺と違った形の副業ってやつかもな……。


「おはよう」

「おはようございます!」


 おおっ!

 仁科さんにつられて挨拶しようと思ったがちょっとドキっとして声がつまってしまった。

 トレンディな帽子にサングラス、ブランド物に身を包む所長の姿はまさしくデキル女の姿だった。


 なまじ美人ゆえに似合っているのがすごい。大人の女って感じがする。


「へぇ、花村くん、随分と高そうな最上級セダンに乗っているのね」

「し、知り合いから格安で譲ってもらったんです。俺の給料で買えるわけないじゃないですか」


「この車そんなに高いんですか?」

「このグレードなら1千万超えるわよ」

「い、一千万!?」


 仁科さんが仰天な顔をする。

 さすが所長、よく知ってやがる……。

 あぶく銭だと思い、無理して良いの買ったんだけど、墓穴を掘る形になるとは……。


「私も車を買い換えようかしら」


 所長が後部座席でごろんと背もたれにもたれかかった。


「そういう所長もブランドもので身を包んでるじゃないですか」

「経済を回すのは当然よ.ちゃんと使用する額は決めてるから問題ないわ」


 バックも服もアクセサリーもブランドモノだ。

 普段着ているスーツもオーダーメイドらしいし、所長の実力の高さがよくわかる。


 わかるんだけど……。

 その違和感をじっと見ていたら所長がそれに気づいてしまった。


「ねぇ、花村くん、仁科。怒らないから言ってみなさい」


 仁科さんがちらっと俺を見る。仁科さんも見ていたか。

 わかったよ……。俺が言うよ。


「その厚底ブーツは何とかなりませんか」

「うっさいわね! 身長は金でどうにかならないんだから仕方ないでしょ!」


 やっぱ怒られた!

 身長150センチほどしかない所長はやはり小さい。

 びっくりするほど高いブーツを履いてきたからびっくりしたわ。盛り過ぎだろ。


「陽葵くらいあれば……屈辱的な想いしなくて済むのに……」

「でも仕事でばっちり決めてる時の所長もかっこいいし、大きく見えますよ。そんな見栄を張らなくても所長はすごいです」


「ふん、まぁいいけど」


 口ぶりのわりに声は少し優しくなった気がする。

 機嫌を直してくれてよかった……。


「仁科、あなたはもっと良いの着なさい。素材はいいんだから、そんな学生みたいな服をいつまでも着ないの」

「わーーん、気にしてるのにぃ! あたしは所長と違ってお金ないんです!」

「給料は趣味で使う、ぐらいじゃなきゃ高い買い物はできないわよ。ね、花村くん」

「いや~、俺もそんな金持ってないのでわかんないですね~」

「あなたが住むマンションの家賃、私の住む所より高いんだけど、収入源はなにかしらね~」


 さすが所長、鋭い。

 だが作家のことはバレるわけにはいかない……。


「花むっちゃん、危ないことだけはしちゃだめだよ!」

「してないよ!」

「あなたのしてることは両親家族兄弟友人に言えることかしらね~?」


「……」


 作家という職業だけなら余裕で言えるが、作品内容を隅々まで見られるとちょっと言えないかもしれない。

 両親は俺の作家業を知っているが、理解はないので俺の作品までは知らない。

 正直どれだけ稼いでいるかも知らないのだ。


 一番は教えたくない親戚一同に俺の性癖集が広まるのは絶対嫌だ。

 従姉妹とかは面白がってまわりに吹聴しまくるだろうし……。


 とりあえず。


「次は九宝さんちに行きますね!」

「ふふ、今日は楽しいレクリエーションだしね。これぐらいにしておいてあげるわ」


 ふぅ……所長のツッコミは強すぎるぜ……。


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