表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

42/158

42 美人双子姉妹とデートの休日②

 浜山市の集合商業施設の4階に映画館がある。

 浜山の大きい映画館はここか北の方のどちらかしかないので子供の頃からよくここには通っていた。

 見たい映画がなければ名古屋の方に行くことも多かったが……。


 ただ映画を1人もしくは男以外と見たことは一度としてない。

 つまり両手に華の状態で行くのは非常に珍しい状態なのだ。


「っていうかもう良くないですか!?」


「う~ん、もうちょっとですね」

「もうちょっとって何が!?」

「花村さん、ほどよい筋肉ですね。彼も……そこそこ良い体付きだったのにあの女ァ」

「そこ、闇を出さないでください!」


 歩きづらいんですよ!

 くっそ、こんな所を知り合いに見られたら面倒くさい。


「せめてチケット売り場まではお願いしま~す」

「はぁ……それまでは男避けに徹しさせてもらいます」

「あ、花村さん気付いてたんですね」


 葵さんが驚いたような顔をする。

 でぇじょうぶ、そんな展開はラブコメで何度か書いている。

 2人に抱きつかれて分かったが、とにかくこの2人、視線をよく浴びる。

 ウチの事務所の美女3人と同等レベルに視線を集めている。

 1人ならともかく双子の美人姉妹だからな、目新しさ倍だろう。


 俺の姿を見て舌打ちをする男性グループも見られた。

 羨ましいというよりは声をかけようと思ったけど男連れだったため諦めたってことだろう。

 美女3人も出かけるたびに声かけられるって言ってたし、美女特有のお悩みと言ってもいいのかもしれない。


「今日はお姉ちゃんとのデートと映画をすごく楽しみにしてたんです。花村さんには悪いと思ったのですが……」

「ははは、その分美作や仁科に還元してくれるならいいですよ」


 実際役得だし、さっきから鼻が伸びそうでたまらない。


 チケット売り場にやってきた。


「あの……もういいですよね?」

「御礼に私達がチケットを買いますね」

「花村さんは姉と私、どっちにチケットを買って欲しいですか?」


「花村さんは私を選んでくれますよね? 妹ではなく私を」

「え~、私を選んでください。お姉ちゃんじゃなく私を」


「その究極の選択はメンタルに来るので止めてください。自分で買いますから!」


 ラブコメやってんじゃないんだよ……。ルート分岐するギャルゲーじゃないんだから。

 俺が戸惑うのを見て本気で楽しんでいた。シアターで席に座るまで解放してくれなかった、つらい。


 ◇◇◇


 シアター内の3人座れる横並び席を取ることができた。

 真正面の良い位置だ。ここなら十分な迫力を楽しむことができるだろう。

 腕をずっと掴まれていたから何だか痺れているような気がする。

 まぁ……悪くはなかった。

 この後は2人と1人になるだろうし、映画が終わって暗い間に行方眩ませちゃおうかな……。


「よいしょ」

「っと」


「……」


「花村さん、葵の横に座らないんですか?」

「花村さん、早くお姉ちゃんの横に座らないんですか?」


 俺は葵さんを見る。


「今日はお姉さんとデートなんじゃ」

「姉妹でデートなんかするわけないじゃないですか。何を言ってるんですか」

「理不尽! 何で俺が2人に挟まれないといけないんですか。姉妹同士でくっつくべきでしょ」

「私も姉も百合よりBLの方が好きなので」


 そういう意味じゃない。


「ほら、横から人が来たので座ってください」


 茜さんに言われて、俺は仕方なく着席することにする。

 左見ても右見ても同じ顔がいる。違いといえば胸部は姉が大きく、妹が控えめだけど……。

 どうしてこうなった。手の置き場に悩む……。


 シアター内が暗くなり、ようやく落ち着いて来た。

 そういや……カバンどこ置いたっけ。

 少しだけ手を動かす。


「きゃっ! 花村さん、どこ触ってるんですか」

「え!? どこか触りましたか、ごめんなさい」


 茜さんから言われて、慌てて距離を置く。


「やっ、もう! 花村さんったら大胆なんですから」

「俺じゃないですよ!」


「知ってます」「知ってます」


 この女どもおお!

 触ってやろうかと思ったが……こっちに何のメリットもない。悔しい。


「ふぅ……2人ともホラーは大丈夫なんですか?」

「ええ、葵と2人でよく見るので」

「昨日もお姉ちゃんとみて、一緒に寝たんですよ」


 一緒に映画を見て、一緒に寝る。

 本当に仲良しなんだなぁ。


「俺はそんな強くないので……ちょっと羨ましいです」


 ビビって醜態をさらさないようにしないとな。

 そして番宣が始まり、話題作のホラー映画が始まった。


 事前情報だと今回は結構怖いらしい。ま、じっくり楽しませてもらいますか……。



 ◇◇◇


 うーん、うーん。

 思ったよりホラーシーンが怖い。

 普段の俺ならひくついてしまうが、別の意味でひくついている。


 さっきから茜さんと葵さんが俺にしがみ付いてきて、動けない。

 小声をかける。


「あの……2人とも苦しいです」

「い、今怖い所なのでちょっと許してください……」

「うぅ……」


 茜さんが全力でしがみ付いてくる。外から見ても分かるほど大きな胸を押しつけられて恐怖じゃない感情でドキドキするんですが……。

 あの葵さん、顔を寄せるのやめてください。チューできそうな距離に来られるとさすがの俺もどうにもなりません。

 ぐいぐい胸を押しつけてくる茜さんに声をかける。


「ホラーよく見るって言ってたじゃないですか」

「いつも怖がってます……」

「じゃあ昨日一緒に寝たって言うのは……」

「怖くて眠れないので葵と一緒に寝ました」


 ホラー駄目じゃねぇか。

 どうして見に来ちゃったのかな……。あぁ、怖くても姉妹同士で抱きあえば何とかなるってことか。

 じゃあ俺を抱きしめるのやめてくれないかなぁ。


 ガアアアアアアアアアアアアアアア


「ひっ!」

「きゃっ」


「ぐ、ぐるじい」


 手の置き場も困る!

 友人、恋人や家族だったら頭や背中に手を置くこともできるが、それだけの関係を築けてない今は腕ですら触るわけにはいかない。

 誰か助けてくれぇ……。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ