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41 美人双子姉妹とデートの休日①

 書籍化作家お米炊子の休日は忙しい。


 WEB投稿の内容と書籍内容が大幅にズレてしまっているので両方のバージョンで続きの作成。書籍用の書き下ろし短編の作成。店舗特典でSSを10本。キャラクターシートの作製、作家同士の飲み会企画、編集とWEB会議、今週分の更新分の調整、プロの校正が入って返却してきたものの確認。

 本業より忙しいんじゃと思う所がかなりある。

 カニカワの山崎以外の編集はわりと猶予を持って締め切りを立ててくるのでありがたい……。


 まぁサイン本200冊しろって言われた時は目がまわりそうになったけど……。

 そんなわけでリフレッシュで外へ出かけるのは当然のことであり、インプットも兼ねて映画鑑賞へ行くのも当然のことなのだ。


 今日は前々から見たいなと思っていた全米が泣いたと言われるホラー要素ありのハリウッド映画を見に行くのである。

 当然俺はお一人様である。

 ラブコメ主人公みたいにぼっちと思われがちだが、高校、大学とそれなりに友情関係は築き上げていた。

 だが絶望的に休みが合わない。時房を除く俺の友人は皆サービス業で働いてるので土日祝はせっせと働くのだ。


 誰かと一緒に映画を見に行き、昼食を食べながらその感想を言い合うのも楽しいものだ。

 ただ1人で行くのも気楽で楽しいのは事実。


 どっちも良さがあるので誰か知り合いに会えばそれも楽しいだろう、そんなことを思っていたらばったりと遭遇してしまったのである。


「花村さん!」

「アレ? お、おはようございます。浅川さん」


 声をかけられたのでそっちに顔を向けると2人の美女がそこにいた。

 左の人も浅川さん、右の人も浅川さん。

 そう、俺は今、顔がそっくりの上級美女に出会ったのだ。


 左の方、背筋を真っ直ぐに伸ばし、肩まで伸ばしていた栗色の髪をサイドポニーとしてまとめているこの人がS社で所長とやりとりしている浅川茜さんだろう。

 右の方、茜さんの腕へ恋人のように組んでいる、ショートボブの女性がY社で仁科さんとやりとりをしている浅川葵さん。


 双子と言っていたが……ばったり出会うとは。

 2人ともプライベートなのでしっかりと夏先に合った服でまとめている。よく似合ってる、美しい。


「お二人ともこのあたりに住んでいるのですか?」

「はい、私も妹も実家暮らしですから」


 Y社、S社はこの浜山が地元企業で地元の人間を多く採用をしているのは有名な話だ。

 そっか……お客様に会うことも考えて行動しないといけないな。


「今日はデートですか?」


 2人に聞いてみる。


「そーですよ。お姉ちゃんと2人でデートなんです~」


 姉の茜さんがしっかり目、妹の葵さんはどちらかとおっとりしている印象を受ける。顔はそっくりなのでぱっと見間違えそうになるが視線を胸元に寄せると一発で分かる差になっているので安心だ。絶対言えないけど。


 しかし、美人姉妹の触れ合い。眼福です。


「花村さんはどちらに?」

「ええ、先週公開した映画を見ようと思って、あそこの映画館に行こうと思ってるんですよ」

「あ、奇遇ですね! 私とお姉ちゃんもそこに行く予定だったんですよ」


 おお、やっぱ人気作。見に行きたい人は多いんだな……。


「それじゃ映画館で会うかもしれませんね。それじゃ」


 ここで別れようと思ったら浅川姉妹がお互い見つめ合い、頷いている。

 双子特有のテレパシーか何かかな。


「花村さん、良ければ」

「私達と一緒にいきませんか?」


「え」

「嫌ですか?」


 姉の茜さんにぐいっと見られる。

 く、仕事とプライベートは分けたい所だが相手は客で俺は営業。


 男の客だったら、わりと気安く仲良くなって、それこそ仁科さんと浅川さんみたいな関係になってもいいと思ったけど……女性の客はどうしても性差がある。

 しかし、無理に断るのは得策ではない気がする。

 無理に断って、後日何で断ったのって美作所長から苦言を受ける未来が見える。


「その後は予定があるので……映画だけで良ければ」

「ありがとうございます~」


 予防線は張っておこう。映画だけなら見るだけで終わるし、何も不都合は……。


「ん」

「どうしました」

「あの……何で俺の両手を掴むんでしょうか」


 右に浅川姉。左に浅川妹が俺の腕にしがみ付く。

 ラブコメ書いているからよく知っている、これは両手に華というやつだ。


「あの浅川さん」

「はい」「はい?」


 両方反応された。


「もうー。名前で呼んでくれないと分からないですよ~」

「そうですね。名前で呼んで欲しいですね」


 なんでや。

 左向いても、右向いても美人過ぎる。

 絶対この人達俺をからかっている。俺が女性慣れしてないって見抜いてるに違いない。


「す、すみません。不勉強で下の名前を忘れてしまって」


 本当は知っているが恥を忍んで言ってやる。

 これで許してくれるに……。


「はい、私が茜です」

「そして私が葵です~」


 空いている手で名刺を渡してきたのである。両方とも同じタイミングで差し出してきやがった。


「「これで間違えないですよね」」

「何でプライベートで名刺持ってるんですか」

「「こんなこともあろうかと」」


 さすが双子、息ぴったりだった……。

 はぁ……ここまでされて何も言わないってのは失礼だ。

 学生じゃないんだ。大人の対応をせねばただ恥ずかしい奴にしかならない。


「では茜さん、葵さん。上映時間が迫ってますのでいきましょう」

「はい!」「は~い!」


 う、強くしがみついてきて……柔らかい女性の肉感が腕に……。

 落ち着け俺……絶対、からかってるだけだ。勘違いしない程度で不愉快にならないようエスコートしなくては……。


 ああ、でもいい匂いする。

 二人とも結構好みの顔してるんだよな……。くっそ、好きになってしまいそうだ。


 ヨタヨタと歩きながら映画館を目指す。

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