04 転勤後の初出勤②
浜山SOは雑居ビルの2階にある。
オフィスビルと言った方がいいのかもしれないけど外観は雑居の方が合っている。
道すがら仁科さんに聞いた通り、セキュリティはわりとしっかりしていて、警備員にセキュリティカードと何重もロックがかかっている。
女性3人のオフィスなのだから当然と言えば当然だ。
事務所の前に男女別の更衣ロッカーやトイレもあり、性別で苦労することはなさそうだった。
さっそく事務所に入るにもセキュリティカードが必要のため注意しないといけないな。
事務所の広さはそこそこと言った所。縦に2列並んだオフィスデスクに所長用のデスク。
小さな応接室と奥にはテレビ会議が出来る、会議室があった。簡単な台所まである。
本社ビルの方が圧倒的にデカいけど、事務所も悪くないなぁ。
「来たわね」
事務所の中をキョロキョロしていると美人2人が待ち構えていて変な声が出そうになる。
俺は新たな上司に頭を下げる。
「おはようございます花村飛鷹です!」
ネクタイもスーツのばっちりのはずだ。初対面の印象が大事だ。
「設計開発チームからの異動で浜山SOにやってきました。不慣れな点があると思いますが何卒宜しくお願いします」
「花村くん、電話では話したと思うけど、私が美作凛音よ。あなたの経験と知識に期待しているわ」
「は、はい! 宜しくお願いします」
写真で見るよりめちゃくちゃ美人だった。
でも3人の女性の中で一番小さい。でも出るとこ出てるし、暗色の髪はすっごく綺麗に手入れされている。身につけているスーツも時計やネックレスも高級ブランド物だ。
化粧とかもばっちりだし、これで営業来てくれるんなら毎日でも来てほしいと思うくらいだ。
たたずまいがもう仕事の出来る人なんだってことが直感で分かった。
そして。
「じーーー」
美作所長の後ろで俺の顔をじろっと見るのが恐らく九宝陽葵さん。
背中まで伸ばした艶のある黒髪が印象的な子だ。女子アナかってくらい見栄えのよい顔立ちをしている。
今期から俺が5年目になるから2年目だっけ。若さとは逆で3人で一番の背の高い女の子だ。
男の俺よりは当然小さいが……黒髪ロングは実に良き。
「花むっちゃん、陽葵ちゃんに見惚れたらダメだよ!」
「んごっ!」
背中をパンと叩かれる。
「ち、違うよ! ごほん、花村です、宜しく」
「は、はい。九宝と言います。すみません、じっと見てしまって」
奥ゆかしくノートで顔を隠してる所が儚くて美しい。
仁科さんに負けないくらいこの子も可愛いな。3期下にめちゃくちゃかわいい子がいるって聞いたことがあるけど……多分この子のことだろう。
「んじゃ、最後はあたしだね。仁科一葉です。はなむっ……、花村さんとは同期の間柄になります。仲良くしてくださいね!」
「うん、……よ、宜しく!」
やっぱり本社にいた時よりも活発になっている気がする。
ただでさえ可愛らしいのに明るさに眩しくて直視できなさそうだ!
これが陽キャと陰キャの差って奴だな……。
……初対面での好感度はそう悪くはなさそうだ。
美容院に行って髪とか揃えておいて本当によかった。そもそも美容院なんて初めて行ったけどな!
好感度がマイナスにならなければとりあえずはよい。
美作所長が前へ出る。
「じゃあさっそくだけど、私について仕事内容を覚えてもらうわ。代わりにあなたの知っている装置のノウハウを伝えてもらうわよ」
「は、はい!」
「やるからにはトップを目指すわ。来てそうそう悪いけど……しっかりついてきなさい」