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37 好敵手②

「浅川さん、おはようございます。1ヶ月ぶりですね。最近会いにいけなくてごめんなさい」

「いえ、美作さんはお忙しい方ですから。でも今日お会いできて嬉しかったです。それでそちらの方は?」

「花村くん、荷物を下ろしていいわよ」


 許可がもらえたので荷物を下ろすことにした。

 スーツのポケットから名刺を出そうとした時、ちらりと浅川さんの顔を見る。


 ……綺麗だ。


「ほら、挨拶」

「は、はい!」


 あぶね、見惚れてしまってたわ。

 慌てて仕事モードに切り替える。仕事モードであれば動揺することもない。

 浅川さんに名刺を差し出した。


「いつもお世話になります、4月から浜山の営業所へ異動となりました。花村飛鷹と申します。浅川様のお噂は弊社の美作からかねがね……。宜しくお願いします」

「はい、お受け致します。浅川茜と申します。あなたが噂の花村さんですね? 私も噂は聞かせて頂いてますよ」


 ぎくりとした。

 噂と言われると書籍のことを言われるのかと勘違いしそうになるが、あくまで仕事のことである。


「美作さんから真面目で鍛えがいのある子が入ったと聞いて楽しそうにされていたのですよ」

「所長、そうなんですか?」

「浅川さん! もう……花村くんも余計な詮索をしない」

「はい!」


「ふふ、仲が宜しいのですね。それならば安心できそうです」


 あ、今のは試していたのだろうか。

 俺と美作所長の仲を見て、ちゃんと引き継ぎがされるかどうか、そんなところか。

 なるほど、所長が言ってた優秀な点、こういった所から見ているんだな。やはり油断はできない。


「では電話頂いた件のお見積を頂きたいので別室へどうぞ」


 浅川さんが打ち合わせルームへ案内してくれた。



 ◇◇◇



「見積の説明は以上になります」

「なるほど……金額のベースとして、やはり……」


 高度な頭脳戦が展開されている。

 美作所長の言論についていける女性が存在したとは……。

 やばいな……まったく口を挟めないぞ。

 営業経験2ヶ月の俺ではまだまだ難しそうだ。

 今回は俺の得意な装置のこともあまり武器にならなさそうだ。こういう所をもっと学んでいかないといけないな……。


「ふぅ……そろそろお昼にしましょうか」

「ええ、続きはいつもの所でしましょうか」


 お昼? 続き? 時間は12時まであと少しとなっている。

 そういえば今回の打ち合わせ、始まりが11時だったんだよな……。

 10時から始めればお昼には終わったのにわざわざ11時から始めた理由があったんだろうか。


「花村くん、行きつけの店に行くから車持ってきてちょうだい」

「いつもお呼ばれして申し訳ありません」


 なるほど、浅川さんも一緒に3人で食事ってことか。

 美女2人とお食事、最高だな!


 所長の指示通りに運転し、S社から車で10分ほどの定食屋に到着した。

 事前に予約ができる所らしく、店は混雑していたが奥の個室を開けてもらうことができた。

 やっぱり、予めここで食事をする予定だったんだな。


 4人席に3人座って、日替わり定食を注文する。


「じゃあ始めましょうか」


 所長は楽しそうににやりと微笑んだ。

 なるほど……食事をしながら商談バトル第二弾ってことか。

 クールダウンもできたし、2回戦の始まりだ。


 浅川さんの顔も緩む。

 何だろう……さっきの仕事のやりとりよりも楽しそうに見える。

 この二回戦は何どんな攻防が繰り広げられるのか。何だかワクワクしてきたぞ。

 所長と浅川さんは向かい合って口を開いた。


「幼馴染は尊いか!」

「断罪すべきか!」


「討議の」「開始です!」


 あれれ~、何言ってんだこの人達。

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