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26 幼馴染ざまぁされた上司③

「所長、花むっちゃん! どうでした!」

「おかえりなさい……。遅くなって心配しましたよ」


 帰社して即、仁科さんや九宝さんから詰め寄られる。

 二人からは着信が来ていたし、かなり心配させてしまったと思う。


「ああ、何とかなったよ。お互いに譲歩しつつ、これから良い関係でいきましょうってね」

「良かった……。所長が頑張っていたプロジェクトも悪い方向へいかずにすみそうですね」


 トラブルも客先要因であることが判明、所長が上手く取りなしたおかげでこちらも顧客も次に繋げられる関係になれたと思う。

 やっぱ所長はすげぇわ。



「ええ……2人とも、心配かけてごめっ、あらっ」

「危ない!」


 所長が突如崩れて倒れそうになったので慌てて、抱え上げた。

 所長の手のひらを掴んでゆっくりと引き上げる。

 体重軽い! こんな小さな体で気丈に振る舞っていたのか。


「花村くん、ごめんなさい。……思ったよりも疲れていたみたい」

「今日は一日出っぱなしでしたし、お昼もちゃんと取ってなかったでしょ」


 俺が運転していて本当に良かった。

 所長の小さなの手のひらに触れ、こんな小さな体でずっと大きな仕事をやってきたんだなと思う。

 さっきまで大きな背中だと思っていたのに……何て小さい。

 確か浜山SOができるまでは1人でこの地区の案件をやっていたと聞く。

 俺や仁科さんや九宝さんには対応できないほどの仕事をこなしていたんだろう。


 本当にすごい人だ。


「あの……そろそろ離してもらえると嬉しいんだけど」


 どことなく顔を紅くした所長が俺を見つめる。


「あれ……顔が紅くないですか? まさか体調不良!?」

「そのどうしようもない所! あなたも結構鈍感くんよね!」


 ってことは俺は幼馴染クンと一緒で嫌われてしまうのか!

 せっかくこの中の一員として頑張れると思ったのに!


「お、俺……所長に好かれるようにがんばりますから!」


「ば! ……もう、あなたわりと年上キラーね。まぁ悪い気はしないから頑張りなさい」


「頑張ります!」


 すでに時刻は18時を過ぎてしまっている。

 残業をしない方針の浜山SOとしては遅すぎる時間だ。


「花村くん」

「はい?」

「今日は助かったわ、ありがと。また弱音を吐きたくなったらお願いね」

「分かりました。俺で良ければいつでも胸をお貸ししますよ!」


「うん、期待してる」


 そう笑う、美作所長はとても美しかった。

 見惚れてしまいそうで思わず、顔が赤くなってしまいそうだ。


 少し……いやほんと所長が幼馴染だったらなと思うくらい。

 所長の幼馴染の男を羨ましく思い、そしてバカだなと感じた。

 こんな素晴らしい人を手放すなんてな!


「さぁ! あなた達……就業時間の終了よ!」


 この人が上司ならもっと頑張っていける、そう思える今日であった。


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