130 (美作視点)上司で幼馴染で大切な姉さん⑧
義昭は水口さんが引っ張っていって……ここには私と飛鷹の2人だけとなる。
「ありがとう飛鷹。助かったわ」
「うん……姉さんが無事で良かった」
飛鷹は照れくさそうに頬をかく。
どうしたのかしら……ってああ、そっか。
私、飛鷹に好きだって言っちゃったのか。
私は飛鷹に思いっきり抱きつく。
「ちょ、姉さん!?」
「ねぇ、飛鷹、聞いてくれる?」
「うん……」
「私、飛鷹のことが好きみたい。仁科や陽葵、他の誰にも負けないくらい……あなたのこと好きみたい」
「うん……」
「何よ……反応薄いわね」
「そそそそんなことないよ。いや、嬉しいし……正直ドキドキしてる?」
「陽葵に告白された時とどっちがドキドキした?」
「そ、そんなの比べられないよ!」
ああ、そうよね。
好きってこういう気持ちよね。
好きになるかもしれない恋よ。好きな人と恋をしたい……そうよね。
「茜さんを焚きつけたのって……飛鷹?」
「あ……うん」
「ったく幼馴染ざまぁしか書かないと思ってたのに……あんな糖分高めのラブコメを書くなんてね」
「茜さん、本当にすごいと思うよ」
「誰の影響かしらね。もしかして一緒にホテルに泊まった人の影響かしら」
「ちょ! さすがにそれはないでしょ!」
「それにしても同じタイミングでお米炊子先生までも短編を出すなんてね」
「うぐっ!?」
「陽葵の時もいいタイミングだったらしいし、偶然ってあるものね」
「うぐぐぐっ!」
「まっいっか……。こうやって飛鷹が助けてくれたんだから」
11月の夜空は寒い。
でもこうやって飛鷹に抱きついて彼の胸の温かさがあれば私は寒さを感じずにすむ。
とても心地よいのだ……。
飛鷹がゆったりと頭を撫でてくれる。
好き……飛鷹が頭を撫でてくれるのほんと好き。
……言おう。
「で、私と結婚してくれるの?」
「うげっ!?」
「何よ、そう言って登場したんじゃないの」
「そ、それはそうなんだけど……」
知ってた。
そうやって動揺するって分かってていじわるをしているのだ。
飛鷹は本当に優しくて……かっこいい男の子だ。
仕事でもプライベートでも本当に頼りになる。
「冗談よ。……飛鷹が私のこと好きじゃないのは知ってる。でもいいの……。こうやって来てくれて、頭を撫でてくれるだけで嬉しい」
「姉さん」
飛鷹は私の両肩を持ち、私に向き合う。
飛鷹の真剣な顔に見惚れてしまう。
本気の好きを自覚するとこうなるのね……。陽葵の気持ちがほんと理解できる。
「俺……本当は嬉しいんだ。姉さんにも……そして陽葵にも好きだと言われて心の底から嬉しいと思った。2人のような素敵な人に好きだと言ってもらえて……俺の人生幸運なことばかりだと思ってる」
「うん……」
「でも二人に好きだと言われて嬉しいはずなのに……心の奥底で断らなきゃいけない気持ちが芽生えるんだ。……それは茜さんと一緒にホテルで一晩過ごした時もそうだった。どこかで心のセーブがかかるんだ。それが何なのか、全然分からなくて……普通に考えれば、2人のこと同じくらい好きだから交際に発展」
「飛鷹」
私はようやく全てを理解した。
その可能性は初めてからあった。
でももしかしたらと思っていたんだ……。
「その理由、私……分かるわよ」
「え?」
「飛鷹は……気付いてなかったのね。多分……陽葵も分かると思う」
「それってどういう……。姉さん、泣いてるの」
全てを理解しちゃったからね……。
これはでも……悲しい涙だけじゃない。
嬉しい涙でもある。
……それならまだ。
「飛鷹……あなたはね」
「所長と花むっちゃん大丈夫かなぁ」
「そうですね……。連絡も無いし、心配ですね。……せっかく今日は花村さんに甘える土曜日だったのに」
「えー、あたしに甘えてもいいんだよ。うりうり!」
「仁科さん、太りました?」
「ひどい!!」
「仁科のことがずっと好きだったんでしょ」