125 上司で幼馴染で大切な姉さん③
その体は鍛え抜かれいて、不要な所をそぎ落とした肉体の美を感じる。
陽葵が自然的な体の美しさを持っているなら所長は作り上げた美しさといった所か。
小柄な体ながらボリュームのあるバストを支える紫陽花色のブラはイメージ通りとも言える。
ふいに見られたとしても相手の気持ちを下落させないような所長の気配り、用意周到さを感じる。
まぁ、何というかありがとうございます。
「は、花村くん!」
「あ、ごめんなさい」
両手で目を塞ぐ。
指はちょろっと開いてるけど。
所長は慌てて、タオルで胸元を隠した。
「何であなたがここに……」
「えっと……倒れたって聞いて心配になって」
「実家にいるんだから大丈夫よ。まったくもう……」
「あはは……ごめんなさい」
「それにしても」
所長は目を細めて俺を見る。
「あんまり動揺してないわね。女体は陽葵で慣れたってことかしら」
「うぐっ!」
確かに!
以前の俺だったら慌ててすぐさま部屋を出てもおかしくなかった。
しかし日常、陽葵のえっちなメイド姿を見続けた結果目が肥えてしまってもおかしくない。
話題を変えよう。
「体調は大丈夫ですか? 仁科さんも陽葵も心配していましたよ」
「ええ、ごめんなさいね。まったく所長失格ね。……自己管理もできないなんて」
「そんなことないです。所長はいつも俺達のために頑張ってくれてるじゃないですか! そんな所長が倒れたって聞いたら心配になるのは当然です」
所長は目を丸くしている。
少し顔を赤らめて口元に手を寄せる。
「あ、ありがと……。何か嬉しい」
「それより……。毎日浜山と富士を行き来してるんだったら倒れて当然だと思います」
「……知っちゃったか」
所長は目を伏せる。
「ええ、宮永さんが嬉しそうに報告してくれましたよ」
「あのバカ。言わないでって言ったのに」
「やはり……宮永さんが所長の幼馴染だったんですね」
「ええ、そうよ」
所長ははっきりと言う。
できれば違うと言って欲しかった。
「お客様のことや、所長の幼馴染を悪く言いたくはないですけど……宮永さんは同性としてあまり良い人物ではないと思います」
「ふふ、優しいあなたでもそう言うくらいなのね」
「ビジネスパートナーとしてなら我慢できますが、所長に関わるとなると言わずにはいられません」
所長は柔らかな笑みを浮かべた。
「私なら大丈夫よ。幼馴染の今の暮らしがあまりにひどいものだったから昔なじみとして心配になっただけ……」
「でも宮永さんは所長を自分の女だって……」
「男女が同じ部屋にいたならそう勘違いしてもおかしくないでしょう。義昭は元々思い込みが強い人だしね」
「……俺、所長が心配です」
「それは……、どういうつもりで言ってる?」
「え?」
所長はまっすぐ俺を見据える。
「今のあなたにはもっと見なきゃいけない人達がいるでしょ。仕事だって……次のステップに進もうって段階よ。私に構ってちゃだめよ」
「でも心配なんですよ。所長は俺にとって憧れの上司で……姉のような存在なんですから」
「そっか……」
所長は口頭を緩ませた。
「ありがとうね。そう言ってもらえるならもっと……頑張らなきゃね」
「頑張る必要なんて!」
「違うわ、頑張る方向を変えるだけよ。バカな幼馴染の所へ行く回数は減らそうと思う。前も言ったでしょ。やるからには全力にやる。体を壊さないレベルで頑張るわ」
違うんですよ。
俺は所長に宮永さんの所に行って欲しくないんです。
だけどそれは言えない。
俺と所長はあくまで部下で姉弟のような幼馴染でしかないんだ。
それを言う資格が俺には無い。
「ねぇ、花村くん」
「はい」
「……嫌かもしれないけど……汗を拭いてもらってもいい?」
「変なところ触るかもですよ」
「腋さえ舐めなきゃいいわ」
「それは言わないで!?」
所長はぱらっと隠していた胸元を開け、寝間着を緩めて……白い肌を見せる。
白く、美しく綺麗な背中がはらりと見える。
その妖美な裸体に目が外せなくなる。
「……恥ずかしいから早くね」
「は、はい」
真っ赤な顔の所長が急かしてくる。
俺はゆっくりとタオルで所長の背中の汗を拭っていく。
何て綺麗な体なんだ。すごい……。
「ちょっと……フェザータッチはやめて、くすぐったいんだから」
「ほぅ」
そんなかわいいこと言うもんだから、所長の脇腹を軽くつまむ。
「ひゃあああぁぁん」
甘い声が口から漏れた。
そのままつっついたり、背中に指を走らせるたびに所長はくねくねと体を色っぽく動かす。
「ちょ、コラッ!」
ふっふっふ。陽葵の体を弄んできたフィンガーテクニックは相当なレベルに到達してきたのだ。
我慢できそうでできないラインで刺激を与えて楽しむ。
左回りで振り返ってきたので、そのままの勢いで右脇腹を摘まむと。
「ひゃう!」
体が大きくビクンと震える。
やばい……楽しくなってきた。
あの声を録音しておけば良かった!
やっぱり敏感な子はいいなぁ。
そんなこと考えていると真っ赤な顔をした所長に睨み付けられる。
やべぇ。
「そうやっていつも陽葵をいじめてるわけね! 良くわかったわ」
「誤解ですよ! まぁ……陽葵もいい声で鳴いてくれますが」
その後は背中からお腹周りを拭い、正面にまわって胸元の汗を拭う。
ちょっとだけ胸に触れちゃったけど気づいてないよな。
陽葵よりちょっとだけ大きな胸、Fには届かないEって所か。
いい柔らかみ……。
「あなたのこと仕事面や人格はわりと尊敬してるけど、性癖面は最低レベルね」
「え?」
「さっきから横乳に触れてるの分かってるのよ!」
「あ……いや……」
「そんなに触りたいなら……」
所長はゆっくりとベッドに倒れ込む。
そうして天井に向けて両手を挙げた。
「直で触ればいいじゃない。ラブホ行った時みたいにさ」
こ、これは……行ってもいいんだろうか。
このまま覆い被さってラブホの時のように……俺が寝ぼけて触りまくったということを現実に!
……。
だけど、俺はその先に進めなかった。
「やっぱそっか……」
「え?」
所長は腹筋をするように起き上がり、俺の体を抱きしめてくる。
「しょ、所長?」
「ちょっと人恋しいから……しばらくこうさせてくれない」
所長は俺の胸に額をあて……ぎゅっと抱きしめてくる。
フリーになった俺の手はどうすればいいか迷いに迷い、所長の暗色の髪を撫でることにした。
その時間は……とても長かった。
今思えば……あの時覆い被さるべきだったのかもしれない。