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113 作家と絵師と編集の男会議その弐

「俺、モテ期かもしれない」


「……」

「……」


「いきなり無言になるのやめてくれないですか」


 今日は絵師スペシウムとカニカワ文庫山崎さんとの打ち合わせである。

 いつも通りWEBに繋いで会話を始める。

 カニカワ文庫から出している【宮廷スローライフ】に【同天】の今後の展開についての話、【同天】と【美月さん】のキャラデザはスペシウムなので告知漫画とかも含めていろいろと話し合う。

 ある程度話終わった後の一幕として俺が雑談を投げてみたのだ。


 だって……今まで女っ気がまったくなかったので自慢したくなったんだよ。

 ちなみに今日は日曜日なので陽葵が来ない日である。

 陽葵も働いていいと言っていたが日曜日はあの綺麗なお母さんに親孝行してあげなさいと言っている。

 それに陽葵は家事代行始めてから執筆速度がかなり落ちてるし、もう少し頑張ってもらわないと。


「実は前言ってた3人の女の子の1人、ちょっとワケがあって、家事代行って形で雇うことにしたんだ」


「まじっすか! えっと……どの子っすか!」

「黒髪ロングの子。清く正しく雇ってるからね」


「ねぇ……やばくない? 警察に通報した方が」

「さすがにあいつも早まったマネは」


「おい、清く正しくって言ってんだろうが!!」


 スペシウム側の通話でスペと奥さんが小声で話しているのが聞こえる。

 モテないからって監禁とかしてねぇわ! そこまで落ちぶれてない。


「問題ありません。他の同僚も知っていることなので」


「んでヤったんですか」


「家事代行って言ってんだろうが」


 この山崎、マジでそれしか頭にないのな。


「でもわりとその子が……俺に好意があるっぽくてさ……」


「なんでヤらないんですか?」


「そこはさ! いろいろとあるんだよ! もっとプラトニックな関係とかあるじゃん!」


「でも、お米先生さぁ」


 女性の声、恐らくスペシウムの奥さんの声だろう。


「新作の【5000万で美少女を買ったのですが、そろそろ襲ってもいいですかね!】ってその子を題材にして書いてるんでしょ」


「うっ! ま、まぁ」


「お米先生、はよ打診を受けて、ウチから出してくださいよ」


「山崎さん締め切りきついから今作は別から出す。ってか正直書籍化するか迷ってるし」


「俺、その作品読んでないんだけど、そんなすごいのか?」

「女の子を道具かってくらいめちゃくちゃやってるのよね。ちょっと引いたもん」

「マジ!? 俺がおまえにそれやったらどうする?」

「離婚する」


「あ、あくまであれは創作の中だから! 実際はあそこまでしてないから」

「やっぱいろいろやってるんすね! ちょっと動画撮ってみせてくださいよ」

「うるせぇ」


「でも手は出してないんでしょ。鈍感そうなお米先生でも分かるくらい好意を出してるなら抱いてあげてればいいのに。異常性癖のはけ口にするんだったらさ」

「お米なぁ。それでえっちなことはNGっておまえ……女の子のことも考えてやれよ。異常性癖のはけ口にするんだったらさ」

「異常性癖って言うのやめて! ってかあんたらも結構いろんなプレイしてんだろ!」


「夫婦だし」「夫婦だもん」


 メンタル死にそう。

 やっぱ……あれからなぁ。最近調子乗りすぎだったかなぁ。

 抱きもしないのに変な性癖プレイだけお願いしてるもんな……。

 いや、でも金払ってるわけだからさ……。


 この場で金払ってるって話をするとやぶ蛇になりそうなので伏せることにしよう。


「まぁいいじゃないですか。人の生き方はそれぞれ。お米先生だって犯罪をしてるわけじゃないですよね? その人も成人だって話だし。本当に未成年とかだったらウチの会社傾くので即刻止めてください」

「未成年ではないですってば」

「だったらそのままでいいと思いますよ。私はお米先生の判断を信じます」

「山崎さん……」

「じゃ、今度浜山行くんで是非とも3P」


 俺は回線を切ることにした。


 ふぅ……。



 ◇◇◇



「陽葵」

「はい、何ですか旦那様」


 月曜日の夜、いつも通り陽葵に家事代行で来てもらっている。

 晩ご飯は美味しいし、掃除洗濯は完璧だし、かわいいし、胸も大きいし、笑顔がステキで、抱き心地も最高……本当に良い子だと思っている。


 そうだな……。中途半端はいかんよな。


「あのさ陽葵」

「今日はどんなプレイをお求めですか? この前みたいにローションを使うのはいいんですがもうちょっと肌に優しいものに使ってもらえると嬉しいかなって。あといきなり脇腹揉むのも刺激あって決して嫌ではないんですが……お料理中とかはやめてくださいね、危ないから」


 俺、先週何のプレイ何したっけ。

 ローション垂らして透明習字プレイしたんだっけ。我ながら意味不明なことが思いつくものだった。


 って違う。


「俺は今後一切、陽葵に対して悪戯なプレイを行わない。君には家事オンリーでお願いする」


「え」


「性癖にかまけて君のカラダを台無しにしてしまうのは恥ずかしい行為だ。俺は今後」

「ヤダ!」

「へ?」


 今度は俺が変な声を出す。


「なんでですか! 旦那様、わたしにいたずらしてる時にこの世で一番楽しそうな表情を浮かべてるのに止めるだなんておかしい! 誰かに言われたんですか!」

「そ、そういうわけじゃないけど」

「ヤダヤダ、捨てないでください! いたずらしてる時の旦那様を見てるとわたしに興奮してくれてるんだって……嬉しくなるんです」

「お、おう」

「抱いてほしいってのはありますけど……わたしも未経験だから心の準備はいるし、……わたし旦那様にいじめられるの結構スキだし」


 陽葵が変な方向で目覚めつつあるらしい。

 ……多少の罪悪感はあるが……分かった。


「ほんとに……いいんだな」

「はい!」


「ほんとに」


 自分でも分かるくらい。


「いいんだな」


 にやけていた気がする。


「は、はい……」


 陽葵がちょっと怯えてしまうくらいにはやばい顔つきだったんだと思う。

 創作意欲がムクムクと湧いてきた。


 さてと今日は何のプレイにするかな。楽しい一万円の使い方!

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