111 わたしにお世話させてください⑨
「花むっちゃん、あたしも雇ってくれないかな!」
「いや、無理かな」
仁科さんの目から涙があふれ出る。
「どうちてぇ……」
「いやいや、雇う意味ないでしょ! 君は別に借金があるわけじゃないし、わざわざ働く必要なんて!」
「あたしも家事できるし、お世話できるよ……。何だったら……ご奉仕」
「……」
「おーい、花村くん。心惹かれてるんじゃないわよ」
「旦那様、ちゃんと断ってください。わたしの給料が減るのは困ります」
はっ、潤んだ仁科さんの姿に心がときめきかけてしまった。
そ、そうだな。これ以上は困る。
「あたしだってメイド服着れるもん! 陽葵ちゃん、予備ある!?」
「ありますよ」
「ちょ、仁科さん!?」
陽葵は予備のメイド服を持ってきて、それを仁科さんに渡す。
仁科さんはそのまま個室へ入ってしまった。
「仁科のやつ焦ってるのかしら」
「ふふ、仁科さんらしくてかわいいですね」
「2人とも……俺には何なんだかわからんのですが」
とりあえず、あまり良いことではないのは確かだ。
しかし思ったより面倒くさいことになっている。
「まだ予備はあるので所長も着てみませんか?」
「あなたのサイズは背丈的に無理。仁科の背丈でギリギリってとこでしょ」
「俺は興味あるなぁ……」
「花村くん、性欲はある程度隠しておいた方がいいわよ」
「ち、違いますよ!」
「ふぅ。でもあなた達もやることやったんでしょ。付き合うかどうかはともかく……それだけ2人きりでいたんなら……やることはすませたんだろうし」
あ……。
「いいえ」
「え?」
「旦那様はま~~~~ったく手を出してくれません。性行為的なのは何一つないですよ。何度かアプローチしたんですけど……」
「花村くん、あなた性欲あるの?」
「ありますよ! って違います」
「こんな陽葵のえっちな格好見て、ちんちんがイライラしないの?」
「その覚えた単語すぐ使うノリで言わないでください」
「勇気を出して両胸を揉ませたら……20回くらい揉まれて変な部屋に閉じこもって6時間出てこなかったんですよ! 揉まれ損です!」
「花村くん、ナニしてたの」
執筆です。
すっげー捗った。大きくて柔らかいんだもんなぁ。我を忘れかけてしまった。
「ふーん、最後までいってないのか……。ないんだ」
所長の表情が少し緩んだ気がした。
「あ、でも……えっちなことは結構されますよ」
「あ、ちょ、陽葵、それは」
「へぇ、何されてるの?」
「一番ハグが多いですね。事あるごとに私の脇腹揉んできます。あとは膝枕しながらの耳かき、目隠しくすぐり、おへそを筆おろし、他にも赤ちゃんプレイとか……バニーガールの服着て、お世話してほしいって言われましたね」
「わーーーー!! わーーー!!」
「そんなのも家事代行の仕事の1つなの?」
「それは1回、1万円ってことにしてます。旦那様、お金払いすごくいいんですよ。youtuber並に投げ銭されてます」
「へぇ」
所長がにやりと笑って、俺を見る。
あぁ……この性癖を暴かれまくってる感覚に心が傷むぅぅ。
つらい、死にたい。
「花村くん」
「ぎくっ」
「売春法とかどうなのって思ったけど、お金のやりとりをしているわけじゃないのよね」
「そうですね。旦那様が払った2千万の分をわたしのカラダで穴埋めしているってイメージです。私は春を旦那様だけに売ってる感じですね」
何てひどいイメージだ。
陽葵はしっかり集計しているし、毎日のように1万円プレイをやっているので意外に2000万は早く返済できるかもしれない。
「花村くん」
所長が鋭い言葉で俺の名を呼ぶ。
やっぱり良くないよな……これ、絶対怒られるわ。
俺は覚悟した。
「つまり私が1万円を花村くんに払えば、陽葵をむちゃくちゃに出来るってことよね」
うん、いきなり何を言い出すのかな、この人(2回目)