107 わたしにお世話させてください⑤
掲示板回から少し時が遡る。
「ああ……ついに書いてしまった。我慢できんかった」
俺の創作の原点は頭で妄想している物語を表に出すことだった。
それも今も変わらないし、その話は世間一般に広く知れ渡っている。
そして物語上のヒロインに対していろいろやりまくることが自分の性欲を一番発散できることも知っている。
もちろん自○行為もやってるよ! 使わないと機能が死ぬって聞くし……子供は作りたいし。
だけど俺が一番興奮した際は創作意欲が爆発し、怒濤の更新をしてしまうのだ。
最近あったのは夏のレクリエーションの3人の美女とのベッド事件。次に仁科さんちで見続けたおっぱいバルンバルン事件。
そして所長とホテル行った未遂事件。
あの後、俺の性欲が爆発し、怒濤の更新をしてしまった。
今回は九宝さんがえっちなメイド服でお世話するもんだからまた性欲が爆発してしまった。
……まさか新作を書いてしまうことになるとは。
ただ……思い切って新作を書いたはいいものの、いきなりネタに詰まってしまうことになる。
今回のお話はどうやら俺の妄想だけでは限界があったのだ。
「ん?」
九宝さんから連絡、ああ……メシの時間か。
今いる執筆部屋は誰の侵入も許さない極秘部屋である。
まぁ、中に入られても執筆用のタブレットはロックしてあるからバレることはまずない。念には念……ということだ。
今日は土曜日なので一日、九宝さんがここにいてくれている。
メシが出来たらスマホを鳴らしてくれと言っているのでその手はずでやってくれた。
「今日は揚げ物にしました」
「おお~! とんかつだぁ」
黒髪ロング超絶美女がえっちなメイド服着て家事をしてくれている。
結構破格な値段を払っているけど……九宝さんレベルの女の子が家事代行してくれるなら絶対安いと思う。
「う~む、揚げたては美味しい。揚げ物は自分ではしないからやっぱいいなぁ」
「旦那様、料理ができないわけではないんですよね」
お仕事中ってことで九宝さんは俺のことを旦那様って呼ぶようになった。
何だかちょっと嬉しい気分。また興奮してきた。
「なかなか忙しくてね……。簡単な料理ならするんだけど」
それでも最近は作家業がやばくて宅配でメシを済ませることも多かった気がする。
だからこうやって家事をやってくれるのはすごくありがたい。
九宝さんの借金返済が全部終わっても、家事代行自体は続けたいな。九宝さんがそのまま引き継いでくれるのが理想だが……さすがに彼女の人生を縛るのは酷というものだ。
「あのさ、九宝さん」
「むっ」
九宝さんの頬が膨れてしまう。
ああ、しまった。
「ごめんよ陽葵」
「にっこり」
にっこりって言葉で言うやつ初めて見た。
どうやら九宝家の話で彼女の父と母が離婚することを進めているらしい。
今までは別居という形だったがあんな被害が出た以上、本格的にやり合うとか……。
そのため完全に決着がつくと九宝さんは九宝の名を捨てると言っている。
だから。
【わたしのことはこれから陽葵とお呼び下さい】
そんな訳で今の内に陽葵で呼び慣れてほしいとのことだ。
そもそも……所長も仁科さんも陽葵呼びだったしな。
彼女は年下だし、名前呼びは割切ることにしよう。
「陽葵、今日も美味しかったよ」
「どういたしまして~。食後のコーヒーも用意してますからね」
至高の美女のえっちなメイド服眺めながらコーヒー飲むとか最高だな。
陽葵が後ろを向いて屈むたびにミニスカートの中身が見えそうになる。
すっげー綺麗な足。頬ずりしたくなる……。
前に屈めば……豊かに育った胸元が覗けそうになる。
本当にドスケベな体をしている。
ああ、大学時代に出会って交際にまで発展していればもっと早くから彼女を……。奥手だった自分が情けない。
それなのにまた発散したくなってくるぅ……。
「どうしました旦那様」
「な、何も」
「ふぅ……」
陽葵は軽く息を吐いた。
「お仕事し始めてから……まだ2回目のアレをしてませんよね」
「アレ? あれってなんだっけ」
「一万円を払って……わたしを好きにできる権利です」
「あ、ああ……。でもいや……悪いような」
「いいのですよ。旦那様は楽しむことができる。わたしは借金を返済できる。どっちも利益になることです」
陽葵が俺に近寄ってくる。
胸の谷間を見せつけるように少し屈んで俺の手を握る。
「わたしは……今流行のJKではありません。ちゃんと成人しています。服を脱がせて……行くところまで行っても逮捕なんてされませんよ」
「おふっ」
俺はツバを飲み込んだ。
「陽葵……。じゃあ」
「はい、旦那様」
とてもかわいい。陽葵が目をウルウルとさせて俺に微笑みかけてくれる。
こんなに慕ってくれるならいいじゃんもう。
……やることやろうよ。ってなわけで……。
「ちょっと1万で耳かきしてくんない?」
「はい、分かりました。ん? 耳かき?」
そんなわけで1万円払って俺の性癖を満たしてもらうことにした。
今まで妄想の中でしかなかった美女の耳かき。
それ実践するため俺は陽葵の真っ白な太ももに頭を乗せているのである。
「これぐらいならお金もらわなくてもいいですよ」
「いやいや、お金払うくらいだよ」
「そうですか。きゃっ」
うわぁ……太ももスベスベだぁ。
「やっぱりお金もらった方がいいかもですね」
これは対価なのだ。陽葵の柔らかでスベスベの太ももに触れるためにな。
「リラックスなさってくださいね」
陽葵は優しくしてくれる。
元々綺麗な声だし、リラックス効果も抜群。
「あ……」
うっかり、ミニスカートの奥に潜む下着の誘惑から俺は陽葵のスカートを掴んでしまう。
「下着を見るのはさらに有料ですよ」
「何色なんだろうか……」
「耳を動かすと痛めますよ」
これ以上は無理だ。
いや、そもそも下着は見ちゃダメだろ。
あ……でも。
でも、もっと一万円払えばいろんなことをやってくれるのだろうか。
このあたりで性癖のリミッターが外れたような気がした。