105 わたしにお世話させてください④
「な、な、な、何をするんですか!」
両わきを押さえて涙目になる九宝さん。
あ、そんな姿も可愛く興奮してくる。
「悪いね九宝さん。俺は胸や尻より腋の方が好きなんだ」
「ひっ」
何言ってんだコイツ。
自分で言ってダメージを受けてしまう。
九宝さんが嫌悪な顔を隠そうとしなかったので二重でダメージを受けてしまう。
前戯でもないのに腋舐めなんてしたら不愉快に思われるのは当然だ。
「う、うぅ……」
九宝さんが静まってしまった。
暴走タイムの終了だ。
しかし……良い腋だった。所長の時は記憶がなかったからなぁ。
今回は完璧に近かった。
あんな美女の腋を舐められるなんて……一生でもわずかしかないだろう。
あ、これは良いインスピレーションが浮かんだぞ。
「……」
「……」
そしてお互い黙り込んでしまう。
「お昼ごはんにしようか」
「はい……」
◇◇◇
「あ、おいしい」
お昼ご飯は九宝さんが作ってくれた。
ニラ玉に肉野菜炒めにご飯と味噌汁という定番メニューだ。
家事は慣れていると言うだけあって料理は上手だ。
仁科さんといい、九宝さんといい、みんな料理上手だなぁ。
「花村さん、ご飯おかわりします?」
「あ、お願い」
九宝さんは立ち上がり、炊飯器の所へいく。
炊飯器はちょっと低い台にあるので屈まなければならない。
その際、メイドのミニスカートがちらり。俺は顔を寄せて何とか見えるポイントを……。
「ちらっ」
「あ」
突然振り向いた九宝さんと目が合う。
「さっきから視線を感じます」
「そんなミニスカート着てる方が悪いと思う」
「やっぱりお尻好きなんじゃないですか」
はぁっとため息をついた九宝さんがお椀を渡してくれた。
その際少し屈むことになり、豊かなお胸がぷるんと……。
「やっぱり胸も好きなんじゃないですか」
「すみません……」
九宝さんが椅子に座る。
「さっきまでのわたしは……ちょっとどうかしてました」
「だいぶ暴走してたよね、やばいよ」
「腋舐めも十分やばいと思います」
それを言われるとつらい。
それにしても……。
「とても美味しいよ」
「それは料理ですか? 腋ですか!?」
それは言わないでおこう。
「そんなわけで俺に今後迫ろうとするなら……君のワキに俺の舌が駆けめぐることを覚えておいた方がいい」
「格好良く言ってますけど、とんでもないヘンタイ行為ですよ」
分かってる。分かってるんだよ!
でも……俺の理性を抑えるにはそれしかない。
「……花村さん」
「なに」
「わたし……ってそんなに魅力ないでしょうか。そりゃ仁科さんみたいな暴力的な胸はしてませんが」
あれは暴力的だね。
彼女の家に行った時はマジでやばかった。
「こんなことされてもまだ俺のことを好きでいられるの?」
「あ、当たり前です! 花村さんがヘンタイだってことはある程度予想してましたし」
「予想してた!? 俺、全然思い浮かぶフシないんだけど」
「……言いません」
やべ、やべ! 俺気付かず女性陣に何かやってたか……?
胸とか尻とかワキとかガン見してたのは覚えあるけど。
「ワキ舐めはびっくりしましたけど……そんなことで花村さんへの想いを閉ざす気はないです!」
九宝さんは真面目な顔で言う。
そうか……。この場合九宝さんにまったく手を出さないってのもある意味、地雷かもしれないな。
うっかり寝込みを襲われて一線越えさせられる危険もある。今回のように突然襲われたり、脱ぎだしたりされると対応が困る。
だったら時々ガス抜きしてあげた方がお互いのためかもしれない。
「じゃあこうしよう」
「はい?」
「追加料金として1万で俺が君を好きにできる……これでどうだ?」
「新しいパパ活みたいなものですか?」
「その例えは何なんだ。例えば……このコスプレをしてほしいとか……。ちょっとハグして欲しいとか」
「そんなのタダで……」
「金を払うからこそ割り切れるんだよ。俺は心置きなく君に触れられる。君は借金を返せる」
「……分かりました。さっき花村さんが望むもの何でもしますって言ったのでお受けします」
「じゃあさっそく1万円払うよ」
「ま、まさか……またわたしのワキを!?」
「髪の毛触らしてくれない?」
その黒髪ロングに顔を埋めたかったんです……。
呆れた顔した九宝さんの髪をめっちゃくちゃ触らしてもらって最高でした。
だけど、俺は決めていた。
九宝さんに不埒なマネはしないと……。
絶対に絶対にえっちなことはしないと。
この時はそう思っていた。