102 わたしにお世話させてください①
「ごめん、聞き間違いだと思うからもう一回お願いできないかな」
「はい、今日からわたしは花村さんの性欲処理のための性奴隷となります」
「悪化しとる!?」
九宝さんくすりと笑った。
「半分は冗談なのですが……、これは花村さんに対する感謝でもあります」
「感謝? いったいどういう……」
九宝さんは大きく息を吸った。
「わたしは花村さんのことが好きです。この気持ちは紛れもなく本当です」
「九宝さん……」
「あの時に助けて頂いたあなたの姿は本当に悪役令嬢を救ってくれる王子様でした。もう先走ることなく、あなたを好きでいられそうです」
「俺は……」
「返事はしないでください」
九宝さんは待ったをかけた。
「あなたは優しいから……わたしが告白すればそれに縛られる形になってしまいます。わたしはあなたに2000万という大きな借金があります。それを返済して……初めてスタートラインだと思うのです」
「便宜上、貸し出しということにはしたけど、取り立てるつもりはないんだよ」
「そうであっても……わたしは早くあなたに借金を返さねばならないのです」
「そうか……」
「だから花村さんは自由に恋愛をしてください。お付き合いしたい人がいればその人とお付き合いしてください。あなたに片想いの女がいた。ただ……それだけ思って頂ければと思います」
それが九宝さんの決心したことなんだろう。
もし俺が同じ立場だったら馬車ウマのように働いて返済したと思うし……。
しかし自由にしてくださいっていうのも……。
九宝さんのことは好意的に見ているが恋愛感情という視点で見ると……しかし。
ん?
「それで何で俺の家に来たんだ? 何かおかしくないか」
「いろいろ考えたんです。どうすれば借金を返しつつ、花村さんへ御礼をできるかって」
「えっと……」
「なのでわたしを奴隷……じゃなくて家事代行として雇って頂けませんか?」
「まじ!?」
「まじです。平日、あと許可頂ければ休日もお世話させて頂きます」
「いやいや、さすがにそれは! 仕事終わってからだろ! 体を壊してしまうぞ」
「2000万の借金を返すにはそれしかないのです……。フォーレスのお給料では母と2人で暮らしていくのにギリギリですし……」
「だめだだめだ! そんなの許可できない! 俺は家政婦にしたいから金を出したんじゃない! 勘弁してくれ!」
九宝さんはしょんぼりとした顔をする。
そんな顔をされると申し訳ない感が出てくる。
俺の家に入られたら副業のことがバレてしまうかもだし、九宝さんみたいな美女がずっと側にいたら緊張して仕方ない。
「わかりました。ではわたしはもう一つの夜の仕事をすることにします」
「え? 何の仕事するつもりなの」
「これです」
九宝さんはスマホを俺に提示した。
『審査OKなら即日働きOK! 浜山1のソープランド!』
「うおおおおお!?」
大声が出てしまった。
「てっとり早く稼ぐにはこれしかないのです。初めてですけど……がんばります」
「まままままままま待って、お願い、待ってほんと!」
脳内が大混乱を引き起こしていた。
「面接してからになると思うので……まだ働けるか分かりませんが」
いけるに決まってんだろ。九宝さんレベルの女の子がいたら超話題になるわ!
あっという間に人気嬢の1人になるだろう。俺も行きたくなる。
「お、俺は君を風俗嬢にするためにお金を払ったわけじゃないから」
「元々は気持ち悪い人の妻になる予定だったのです。それに比べたら……、嫌ですけど仕事ってことなら我慢できます」
「だからお金はすぐに返さなくていいって! もっと君にあった仕事が!」
「わたしにはもうその2つのどちらかしかないのです!」
この子……本気なのか。
そもそも副業で風俗って、まぁあるんだろうけど……俺が要因でその選択をしてほしくなかった。
ここで俺が断って本当に風俗で働きはじめたら……。
不特定多数の男に清純なカラダを触られるのは何か嫌だ!
「ぐぬぬぬぬ!」
はぁ……。
「分かったよ……君を家事代行として雇うことにする」
「わーい、ありがとうございます」
にこやかに笑う九宝さんを見て、告白からここまでの流れ、全て理解してやってるんじゃないだろうかと思うようになってしまった。
女の子って怖いわ。
「じゃあ……早速今日から」
「九宝さん、どういう形で給料を払うか考えるから2週間待ってくれ」
「2週間って……わたしは今すぐでも」
「2週間だ。この命だけは絶対に聞いてもらう」
「は、はい……。これだけは譲れない気迫を感じます」
さて、準備をするとしようか。
俺がお米炊子ってバレないための下準備、始めるぞ!