小さくて大きい背中
※ホリック・ワーク視点
目の前の地面がゴッソリと抉れている。
数瞬前まであの場に自分が居たと思うとゾッとする。
グラディックスの攻撃を回避するなど不可能な体勢だったはずだが何故自分は攻撃を回避してここに居るのか?
その疑問は振り返る事で氷解した。
「に、兄様!」
そこには剣を抜いた兄様が立っていた。
後に別働隊のメンバーから聞いたのだが、兄様がリュックから飛び出して私を引っ張ってグラディックスの攻撃を回避したらしい。
目の前の光景に私は非常に衝撃を受けた。
グラディックスの攻撃を回避できた事実など些事に過ぎないと言っても過言では無いほど兄様が自らの意思で行動したことが信じられなかった。
兄様の過去を誰よりも知っている私にとって兄様が感じた絶望は想像に難くない。何に対しても無気力になるのも仕方がないと思っていたからこそ結界の発動以外は何も求めなかった。
その兄様が行動した。しかも行動を止める気配は無い。
「…立て」
兄様は端的に私に立てと要求した。
ならば今すぐに立たなくてはならない。
「はい、兄様!」
災厄に等しい存在を相手にしているというのに不謹慎だがこの機会を逃せば二度と兄様と共闘する機会は無いかもしれない。
「俺が攻撃を往なす、お前は俺を背負って走れ」
「分かりました!」
指示通り兄様をリュックに背負い直した所で、グラディックスがこっちを向いて尻尾を大きく振り上げた。
「走れ!」
その声が聞こえると私は背後を気にせず全速力で走った。
直後、背中で兄様が軽く動く感覚を感じ
そして、横の地面が爆ぜた。
兄様がグラディックスの攻撃を往なしたのだ。
技の冴は未だに衰えていない!
背中を預けるのにこれほど頼もしい人は居ないだろう。
これで距離を保ちながらの逃走に集中出来る!
逃げてる途中、何度も後ろで地面が爆ぜる。
周囲の雰囲気がどんどん驚愕に包まれていくのが分かる。
そうなのだ兄様は凄いのだ!
本気を出せば世界中から恐れられてるグラディックスすらもーー
「ぐっ!?」
突如、地面が爆ぜるのと同時に今まで無かった衝撃が背中を襲った。
「えっ!?」
全く想定していなかった衝撃に反応が遅れ軽く身体を飛ばされてしまった。
幸い受け身は取れた。しかし何故飛ばされた!?攻撃は兄様が往なしていた筈。
そう疑問に思い振り向き兄様を覗き込んだ。
「に、兄様!?」
そこには剣を持っていた筈の利き腕が無くなっていた。
「良いから逃げろ」
「で、でも」
「構うな!」
む、無理だ。本気を出した兄様がこんな大怪我を負ってしまったらもうどうしようもない。
私のステータスは高くない。兄様の結界の効果を私だけ受けないから戦いになっているがあんな規格外の化け物相手に兄様抜きで誘導なんて出来るわけない。
こうしている間にもグラディックスが飛び掛かろうと地面を踏み締めている。
「くそっ!」
兄様が残った片腕で私を引っ張ろうと手を伸ばすが、もう詰みだ。兄様もステータスは高くない私を連れて逃げるよりもグラディックスの攻撃が来る方が早い。
ズドン!
遂にグラディックスの攻撃が来てしまった。
せめて兄様だけでも助かって欲しいものだが…
ズゴォッ!
唐突に横合いから勢い良く巨大な岩石が飛んできた。
その岩石は同じく勢い良く飛び掛かってきたグラディックスに激突し弾き飛ばした。
「なっ!?一体何が?」
訳がわからず困惑していると岩石が飛んできた方向から今度は大声が飛んできた。
「馬鹿野郎!死にてぇのか!?」




