誤算
※ホリック・ワーク視点
グラディックスを結界の範囲内に収めるまでに魔獣の群れは壊滅、残りの魔獣が喰われるのも時間の問題だろう。
群れの規模、発見したタイミング共に本当に運が良かった。
「入った!」
作戦の第一段階であるグラディックスを結界の範囲内に収めることには成功した。
グラディックスの動きが結界内に入るよりも鈍くなるのが確認できた。
とは言え元が生物としての枠を超えていると言っても過言ではない圧倒的なステータス。
結界内で大幅に弱体化したステータスですら地域一帯の主と呼ばれる様な存在よりも高いステータスを誇っている。
しかし封印の結界も発動している今、厄介なスキルも効果を発揮しない為ステータスが高いだけの存在となった。
それでも依然として脅威である事に変わりはないが元の存在を考えれば充分過ぎる程に難易度は下がったと言える。
封印の結界の効果によりグラディックスの捕食能力が発動しなかったのか魔獣は尻尾の叩きつけによって捕食される事なく圧死した。
グラディックスも少々困惑した様な様子を見せたが、原因が我々に有ると理解したのか我々に襲いかかって来た。
恐竜の形をしたスライムの様な見た目だが意外にも賢い!
だが、こちらに襲って来るのなら好都合、作戦を滞りなく進めることができる。
後はこのまま近づき過ぎず離れ過ぎずと言った距離を保ちながら目的地へと誘導するだけだ。
激しい攻撃を避け、時には別働隊のメンバーに援護されながらも誘導もとい逃走をし続け転移の魔法陣のある場所まで後半分と言ったあたりまで来ることが出来た。
「後約半分だ!頑張れ皆!」
少しずつ、しかし確実に目的地に近づけている。
あと少しあと少しと互いに声をかけ合い気力を振り絞る。
着実に作戦の成功へ一歩、また一歩と近づいている事実に士気もより上がり始めたその時。
グラディックスが足を止めた。
食欲の化身の様な存在が狙った獲物の追跡を辞める。
誰も予想しなかったまさかの行動に全員の反応が遅れる。
一体何故この様な行動を取ったのかと理由を考えるよりも早くグラディックスが行動する。
ズドンッ!
グラディックスが大きな音を立てて地面を踏み砕きながら大口を開けてこっちに飛びかかって来た。
「ッッ!?」
奇跡的に紙一重で躱すことができたがあの速度の攻撃を何度も躱すのは不可能に近い。
そこで理解した。何故グラディックスが足を止めたのかを。
唐突に足を止める事によって我々との距離が開いたその結果、グラディックスが結界の範囲外に出てしまったのだ。
しかも再び走るのではなく飛びつく事によってステータスの減少によるスピードの低下を回避し最速で捕食を試みて来た。
まさかの結界の外からの擬似遠距離攻撃。
結界の範囲内に収めてから小一時間程度、たったそれだけの時間で結界の効果を見破られてしまった。
恐らくは考えての行動というよりも野生の勘による行動だろうがそんな事は関係ない。
問題なのはこちらの作戦が対策されてしまったという事だ。
まだ目的地までは約半分ある。
この段階でこの状況は非常にまずい。
どうすればいい!?
しかし、グラディックスはこちらの事など待ってはくれない。
結界の範囲外へと離脱し始めたのだ。
またあの攻撃をされるのはまずい!何としても結界内に収めなければ!
そう思い結界の範囲外に出さない様追いかけた。
が、
「!!ガハッ!?」
追いかけて来た私に向かって尻尾による叩きつけ攻撃をして来た。
私が結界外に出さまいと追いかけることを見越していたのだ。
結界によって大幅に弱体化しているとは言えそれでも高いステータス、咄嗟に防御したが完全には防ぎ切れずに大ダメージを食らってしまう。
直ぐに別働隊から回復の魔法が飛んでくるが、ダメージを食らった隙は大きく今度は尻尾の横薙ぎの攻撃を食らって弾き飛ばされてしまう。
これにより再びグラディックスが結界の範囲外に出てしまった。
となると再びあの攻撃が来る!
まずい!今の体勢では躱わせない!
ズドンッ!
グラディックスが地面を踏み砕く音が再びトスレフォ大森林に響いた。




