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歴代勇者の後始末  作者: なななな
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ヘイト・ワーク

※ホリック・ワーク視点


「常に勤勉であれ。」

これは真面目な父が口癖のように言っていた言葉だ。

私達の生家であるワーク家は数多くの優秀な騎士を輩出してきた名家だ。

私と兄も他の兄弟達と同じく騎士となるべく幼少の頃から訓練させられた。

訓練は厳しいものだったが、日に日に強くなっていく感覚を感じることができ辛いと思う事はなかった。

スキルを習得した時は戦闘力が飛躍的に上昇し今まで出来なかった事を出来る様になった事もモチベーションの向上に大いに貢献した。

それは他の兄弟達も同じだろう。


兄、ヘイト・ワークを除いては…


兄の性格を一言で言い表わすならばまさしく父の口癖でもあった勤勉そのものだ。いや、勤勉であったと言うべきか。

兄は小人族の先祖返りで体が小さく、お世辞にも戦いに向いてるとは言えない身体だったが幼少の頃から誰よりも真剣に騎士を目指していた。

最初こそ期待されていなかったが諦めずに努力する兄の姿勢に誰もが期待した。

そんな兄を父は「まさに勤勉な騎士の鑑である」と褒め称えた。私達兄弟もそんな兄を尊敬し目標にした。


時が流れ兄は少年と呼べる年齢にまで成長した。

その頃だ兄の異常が発覚したのは。

何故か兄にスキルが発現しなかったのだ。誰よりも真剣に打ち込み、誰よりも多く剣を振り、誰よりも努力した兄だったが『剣術』や『体術』と言った基礎的なスキルすらも発現することはなかった。


それから兄は今までよりも更に努力に努力を重ねた。

寝る間も惜しんで鍛錬した。それはもう常軌を逸している内容だった。

毎日気絶するまで剣を振り体を鍛え目覚めたらまた剣を振り体を鍛える。この繰り返しだった。


そして遂に兄にスキルが発現した。

スキルの効果は相手のステータスの低下という体を鍛えて習得したとは思えないスキルだったが、スキルが発現したことでスキル習得にも希望ができた。

その時の兄の顔は年相応の笑顔だった。


兄は更に体を鍛えた。

しかし習得するスキルはステータス強化系でも技術系でもなく、相手のステータス低下系といった兄の目指していた気高い騎士道に反するものばかり。


そして兄にステータスを封印する結界を張るスキルが発現した時、

兄の心が折れた。


誰よりも己を高めるべく鍛錬を重ねたと言うのに、手に入るスキルは相手を己より低くさせるスキルばかり。

どんなに努力してもその努力が報われることは無かった。


その日を境に兄は変わってしまった。

覇気に満ちていた雰囲気は気だるそうに、鍛えられていた身体も衰え、前向きで勤勉な性格も後ろ向きで怠惰な性格にと最早別人というレベルで変わってしまった。


やる気を失った兄は毎日を寝て過ごした。

しかし、そんな兄を勤勉であることを重要視する父が許せる訳もなく、遂に兄はワーク家を勘当されてしまった。

兄を慕っていた私は兄について行き共に冒険者として世界を回った。

冒険者として結果を残せば父も兄の事を認めてくれると私は考えていた。

様々なことがあったが遂に私たちはXSランクまで上り詰めた。


しかし、実家から便りが来ることはなかった。


ワーク家という騎士を輩出する家系の当主である父がXSランクの存在を把握していないはずがない。

つまり、冒険者として最上まで上り詰めても父は兄の事を認めてはくれないのだ。


どうすればいいのか、どうすれば兄は認められるのか。

分からない。

そう途方に暮れていた頃、勇者様が召喚されたと聞いた。

暫くして件の勇者様がギルドを創設し団員を募集していると聞いた。

これしか無い!

これが最後のチャンスだと。確信した私は勇者様本人に直談判することにした。


しかし、結果は不採用。

失敗出来ないチャンスを失敗してしまったのだ。

もう二度と同じようなチャンスは訪れないだろう。兄が認められる日は来ないのだろう。

現実はいつも非情だ。


※たいち視点


ホリック・ワークの絶望した顔を見てどうにも違和感を感じる。

もしかしたら自分が思っている以上に勇者の仲間とは名誉な事なのかもしれない。この人は勇者至上主義なのかもしれないとも思った。

しかし、そうでは無いと直感が言う。

別に直感が必ず当たる訳でも未来予知に似た能力がある訳でも無いが、何故か今回は違うとこの人にも理由があると確信出来る。

そう思い隣にいたダイトにこっそり聞いてみた。

すると、推測ではあるがと前置きをした上で教えてくれた。

この兄弟の生家は騎士を輩出してきた家系である事。

ヘイト・ワークの幼少の頃とその後に起こった事。

おそらくホリック・ワークは兄であるヘイト・ワークの評価を回復させようとしている事。

それらを聞いた後、自分はこの兄弟を仲間にしようと思った。


同情と言われれば否定は出来ない。

でも、こんなに頑張っている人が報われないのはおかしい、間違っている。

本来この人たちはこんな茨の道なんか歩まなくてもよかったはずなんだ。


「でも、そのどんなスキルも発動できなくする結界の能力は唯一無二の能力だよね。俺は採用するべきだと思う。」


全員が驚いた表情で俺を見る。当たり前だ不採用にされた人物を採用しようだなんて普通じゃない。


「正気か!?集団行動との相性が最悪なんだぞこいつらは!?確かに結界の能力は唯一無二の能力かもしれないがその力も運用出来なければ意味ないんだぞ!?」


当然の反応だ。でも、もう決めてしまったんだ。


「もしかしたらこの能力が役に立つ日が来るかもしれないじゃないか。未来は誰にも分からないんだよ。それに俺の元いた世界にはこんな言葉があるんだ『備えあれば憂いなし』ってね。」


勝手な事だとは分かってる。本当申し訳ない。


「…たいちがそう言うのであれば仕方がない。採用だ。」


「本当ですか!?」


「あぁ。その力を貸してほしい。」


「勿論です。必ずやお役に立って見せましょう!!」


その時のホリック・ワークの顔は少しだけ何かから解放されたような顔をしていた。


その後、

その甘さはいつか身を滅ぼすかもしれんぞ。と

仲間達は俺の甘すぎる性格に警告してくれた。


「分かってる。でも放っておけなくて。」


「仕方がない。その分俺たち(私達)がしっかりしないとな(ね)」


そう言ってくれた。

俺は本当に良い仲間を持ったなと思った。

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