反省
ルサレベ王国の王城のとある一室にて、6人の男女が机を挟んで1:5に分かれて座っていた。
「ーーそれで、勇者様の容態はどうですか?」
1:5の1の方の男ーーこの国の宰相が勇者である太一の容態を前に座る5人ーー先のクエストで太一とパーティーを組んだ騎士と冒険者達ーーに尋ねる。
「屋敷を出る時にはまだ起きてはいませんでしたが、心配ないかと。」
宰相の質問に答えたのは『鈍重』の二つ名を持つ騎士オハン・アースレウス。
他にも、もう1人は騎士、他の3人はSランク冒険者といったなかなか豪華な面子だが、その表情は暗かった。
「ふむ、確か片腕を失ったと聞きましたが、治癒出来たのですか?」
「はい、ミザリー達治癒を得意とする者達のおかげで、腕は元通りに完治しました」
その報告にホッとした顔をした宰相。
だが、直ぐに顔を引き締め、真剣な表情になった宰相は太一とパーティーを組んでいた5人にもう一つの質問をする。
「しかし、あの森に出現する魔物は強くてもグレイトウルフくらい…確かに油断ならない存在ですが、貴方達がいれば問題ないはず、何故勇者様の片腕が無くなるという事が起きたのですか?」
その質問に5人ともビクリと肩を震わせた。
特に戦意喪失したせいで太一の足を引っ張ってしまったと後悔しているリーン、グラス、ヴィンダの3人は宰相に責められるのではないかと思い椅子の位置までズレるほどに肩を震わせた。
実の所、現在進行形で寝ている太一は3人が足を引っ張っただなんて毛ほどにも思わないのだが…。
少しの沈黙のあと、グラスが口を開く。
「…全ては、私のせいです。私が戦意を失ったばかりにたいち様の足を引っ張ってしまいました。」
それに続けて、慌ててリーンとヴィンダが、
「グラスだけのせいではありません!私もたいち殿の足を引っ張ってしまい結果、治ったとわ言え片腕を失わせてしまいました。」
「私も同罪です!グラスだけが悪いわけじゃありません。」
その返答に一瞬眉を挟めた宰相だったが、直ぐに優しい笑みを浮かべて、
「自分の失態を認めるとは感心です。次からは、この事を教訓により勇者様のお役に立ちなさい。」
「「「は、はい!」」」
その返事に満足そうな宰相。しかし、3人は納得がいかない様で、
「ですが、本当に何もお咎め無しなのですか?正直たいち様の……ギルド?の除名処分も覚悟していたのですが、」
とそう言えば、ギルドの名前決めていなかったななどと思いながらグラスが聞く。
「私個人としてはそれくらいしたい気持ちですが、そんなことは何よりも勇者様が望まないでしょう。まだそこまで長い付き合いではありませんが、あのお方は今迄の勇者様方と同じく優しいお方だというのは分かります。」
そして宰相は懐かしむ様に虚空を見上げて、
「今迄の勇者様方も同じでした。どんな状況でも仲間を決して見捨てず、自分が傷付くのも厭わなかった。」
今迄の勇者達の事を振り返る。
騒がしい者、静かな者、剣を得意とする者、魔法を得意とする者、性格や武器などは全然違うが、どの勇者も仲間を決して見捨てない優しさと強大な敵にも立ち向かう勇気を兼ね備えた正しく『勇者』という称号に相応しい人物であった。
『惜しい人達を死なせてしまった。』
太一を傷付けてしまったと後悔している5人の後悔を足してもより深い後悔を胸に刻んでいる宰相は、今度こそは絶対に死なせないと再び決意を固める。
と、そこで今迄の勇者達のことを思い返していた宰相に一つの疑問が浮かび上がる。
それは、騎士やSランク冒険者の戦意を喪失させ、勇者太一の片腕を奪った存在についてだ。
確かに太一はまだ召喚されて日も浅く、あの謎の爆殺事件でレベルが上がったとは言え、今迄の勇者達と比べるとまだまだ力不足だ。
それでも、トスレフォ大森林に生息する魔物に遅れをとるほど弱くは無い。
「一つ質問が、勇者様も貴方達も弱くは無い。それなのに勇者様が片腕を失うとは、貴方達が足を引っ張ったと言っていましたが一体何があったんですか?」
その質問にヤーングールが答える。
「グラディックスが出やがったんです。」
「なんだと!?あの暴食の魔獣がか!?」
その内容に宰相は目を見開きながら机をバンと叩き、立ち上がった。
その拍子に椅子が後ろに倒れたが宰相はどうやら気付いていない様だ。
「勇者様よくぞご無事で!場所はトスレフォ大森林だったな!?直ぐに観測隊を結成し、グラディックスの動向を監視する!」
「既に冒険者ギルドにはその旨を連絡してあります。」
「分かった!私は王にこの事を報告して、国民にもこの旨を知らせる!お前達は他の者とも協力して観測隊の結成を急げ!」
「「「「「ハイ!」」」」」
勇者太一の3代目勇者の後始末の為に向かった旅は、暴食の魔獣グラディックスから逃げただけではまだ、終わらなさそうである。




