夜襲
「エハァッ!!」
今日も半ば強制的に起床する。
何故半強制的に起床するのかは言わずもがな、見た目も発言も恐ろしい化け物に夢でも遭遇したからだ。
…最近はあまり良い夢を見ていない気がする。
悪夢を見せる類のモンスターのせいだと言われたら納得できるんだけどな。
本当にそうだったらぶっ殺してやる!
寝るのを邪魔するのだけは絶対に許さないからな!
なんてことを考えていたら、今日は反応が無いことに違和感を感じた。
周りを見ると部屋には誰も居なかった。
窓を見た感じどうやら夜中らしい。
まぁ昼に寝落ちしたしな。
「…」
…退屈だ。
もう一度寝るにしては目が覚めてしまったし、夜中に城を歩き回るのもなぁ。
あぁ何か起きないかなぁ。
「敵襲ー!!敵襲ー!!」
「えっ!?」
…俺のせいじゃないよね?こんなの展開はお望みで無いよ?
でも丁度起きていたし、なんか責任を感じるから部屋を出ると、慌ただしく兵士や騎士が走っていた。
「敵襲って聞こえたんですけど?」
「勇者様!どうやら空からの敵襲の様で、申し訳ありませんが一緒に来てもらえませんか?」
「分かりました。」
部屋から武器を持って兵士達に付いて行く。
屋上に着くとそこでは既に戦闘が始まっていた。
敵は主に蝙蝠の様な翼の生えた人型のモンスターと大きい鳥の様なモンスター、あと少数ながらワイバーンやグリフォンっぽいモンスターまでいた。
「たいち!来てくれたか!」
「ダイト!」
声をかけてきたのは騎士序列8位の白炎の騎士ダイト・ライクシー、ウチのギルドメンバーのひとりだ。
「なかなか強力な面子だ。これは勇者であるたいちを殺しに来たのかも知れん。しかし魔王が居ない今どうやって知ったんだ?」
なんてことを言いながら炎で敵を焼きまくるダイト。
他の騎士や兵士達も負けじとモンスターをどんどん討伐していく。
ここで何もしない訳にもいかないので、俺も弓矢や魔法とかの遠距離攻撃で攻撃していく。
剣とかと違って傷付けた感覚があまりないから慣れるのには丁度いい。
…日本じゃ絶対に無い考えだ。もうこっちの世界に染まってきたのか?
「お?」
身体の調子が良くなったと思ったら、どうやら誰かがバフをかけてくれたようだ。
そういえば付与術士の職業があったんだった。
「『クイック』!」
素早さアップのバフをかける。
連射力が上がってより早く多く敵を倒せる様になった。もっと早くに気付けよ俺!
全体にバフが行き渡り、倒す速度が上がりこのまま何も無ければ全て倒しきるのも時間の問題だと思ったその時、強風と共に巨大なドラゴンが現れた。
どう見てもこの集団のボス格なのは間違いない。
「『必中の矢』!」
スキルで放たれた矢はあり得ない軌道でドラゴンの腹に飛んでいくが、鱗に弾かれてしまった。
「硬っ!」
バフがかかっているのに弾かれるってかなり防御力を高いんじゃないか?
「一般兵士では分が悪い!騎士はこのドラゴンを、一般兵士は残りのモンスターを倒せ!」
「「「「「おう!」」」」」
騎士序列1位で聖光の騎士シャイトの指示で騎士がこっちに、兵士達が他へ向かう。
この聖光の騎士シャイトは貴族出身で無いのに英才教育を受けた貴族出身の騎士達より強く、毎年変動する騎士序列で長年1位の座に君臨する最強の騎士だ。
ただこの人は残念ながらウチのギルドメンバーでは無い。
「『ブレイクガード』!」
防御力ダウンのデバフをかける。
これで騎士の人達は勿論俺の攻撃も多少は通るだろう。
「『シャインスラッシュ』!ハァッ!」
シャイトの『シャインスラッシュ』が決まり、鱗を砕いて肉を切る。
「グギャアアァァァァ!!!」
思わず耳を塞がそうになる大音量で悲鳴をあげるドラゴン。どうやらかなりのダメージを与えられたようだ。だが安心したのも束の間、ドラゴンの口が少し開きその隙間から紅い光が漏れている。
「!!ブレスが来るぞ!全員防御体勢!」
「『プロテクト』!」
「『フレイムガード』!」
「『ウォーターアーマー』!」
全員がかけられるだけのバフをかけて全力で防御体勢を堅める中ドラゴンも準備が整ったのか口を大きく開いた。
「来るぞ!」
その言葉と同時にドラゴンから炎のブレスが放たれた。
「『ホーリーウォール』!」
目の前に半透明の壁が出現し、炎の勢いをかなり緩める。
「熱っ…くない?」
バフの恩恵か一面の炎の中に居るのに全然熱くなかった。
ドゴォォン!
「グギャアアァァァァオオォォォ!!!!!」
いきなり轟音が響き、ブレスを放っているはずのドラゴンの悲鳴があがった。
「なんだ!?」
ブレスが中断されて晴れた視界に映ったのは、魔法を撃たれ、全身に矢が刺さり、無数の切り傷の付いたドラゴンの姿だった。
下を見るとギルドの冒険者勢が集まっていた。
「『シャインコンビクション』!」
「『ホーリーフレイム』!」
「『ブライトピアース』!」
そんな隙を見逃さず、騎士達の必殺技が次々とドラゴンに放たれる。
「ギャアアァァァ…ァァ……ァ………」
これだけの攻撃に晒されたら流石に耐えられなかった様で、絶命し城の庭に墜落した。
「「「「「うおおぉぉ!!!!」」」」」
兵士達はもう全てのモンスターを倒し切った様で、ドラゴンが派手な音を立てて落ちると、勝ち鬨を上げた。
強い騎士が集まっているのにさらにトップクラスの実力を持った冒険者まで来たらもうその後は圧倒的で、ドラゴンは行動する暇も無くボッコボコだった。
ドラゴンを見た時はもう少し苦戦するかと思ったが、楽勝では無いが、案外アッサリ終わったな。
「総員!死体の処理に取り掛かれ!あと少しだ頑張れ!」
全員が近くの死体に近付き慣れた手付きで解体していく。
「たいち、こっち来い。」
ダイトに連れられ、一体のモンスターの死体の元に着いた。
これってもしかしなくても…
「解体の仕方を覚えないとな。」
やっぱりね。
「ほれ。」
そう言って解体用のナイフを渡された。
その後は苦戦しながらもなんとか解体出来た。
手が血や内臓のかけらがこびりついて気持ち悪いです。
うぇ〜。
「よし!それじゃあ次行くぞ!」
今回の戦闘で慣れたのか、血とかが気持ち悪いとは思うけど、気分が悪くなることは無かった。
そんなこんなでモンスターの解体も終わり、消毒消臭をして解散した。
「あぁ〜疲れたぁ〜。」
最近はほんと一日一日が濃いなぁ。
そんなことを考えながら深い眠りに落ちた。
その日は夢を見ることもなく、ぐっすり眠れました。




