心の底からの恐怖
最近ではもう見慣れた天井を見て、目を覚ました俺は城の部屋で寝ていたことに気付く。
だが、昨日にここで寝た記憶が無い。
それどころか昨日何があったのかまで朧げだ。
えーっと昨日は…あぁそうだ、確かミジェントルにゴーレムマスターを教えて貰ったんだった。
それでその後は城に帰ってから…あぁ宴会!そうだ宴会があって、俺も宴会に行って…あれ?どうしてもその後が思い出せない。
「お目覚めになられましたか勇者様?」
必死に昨日何があったのかを思い出そうとしていると、横から声をかけられた。
「?…あっおはようございます。」
「おはようございます勇者様。」
声をかけてくれたのは猫耳と猫シッポが可愛い茶髪のメイドさん。
あのよく俺のせいで不幸な目に遭っているメイドさんだ。
名前はなんだっか…ただでさえ人の名前を覚えるのが得意では無いのに今は更に原因不明の頭のモヤモヤで思考能力が低下しているので全く思い出せない。
やばい、頭が痛くなってきた。
「お身体は大丈夫ですか?」
「ちょっと頭が痛くて…」
「あら〜二日酔いですかね?」
「二日酔い?」
どういうことだ?俺未成年なんですけど。酒飲めないんですけど。
「覚えていらっしゃいませんか?昨日は皆さんで宴会を開いたんですよ。そこで勇者様はペインさんから渡されたお酒を飲んでそのまま酔って倒れてしまったのですよ。」
マジか!
「えっ!でも俺未成年…」
「こちらの世界では15歳で成人なんですよ。」
そういえばそうだった気がする。
「そういえば…ッ!」
ヤバい頭痛が本格的になってきた。
「大丈夫ですか?えっと二日酔いには迎え酒と言いますし、こちらのお酒を少しお飲みください。」
聞いたことがある気がする。
「でも昨日一杯目でぶっ倒れたんですよね?」
「ペインさんが注いだお酒は特に強いお酒ですので、この酒は弱いので大丈夫だと思います。」
「そ、それじゃあ…」
チビチビとコップの酒を飲む。
あっこの酒は美味しい。それになんか頭がポワポワする。
「勇者様飲みながらでいいのでお聞きください。宰相様が昨日話せなかったことを話したいので体調が良ろしければ、来ていただきたい。とのことですが、あまり体調は良くなさそうですのでまた明日にしましょうか。」
「いや〜体調は大丈夫だし今日行くよ〜。」
「大丈夫ですか?」
「だ〜いじょうぶ大丈夫。」
「そ、それでは案内しますので。」
「いや〜覚えているし。大丈夫だから。」
さっすが迎え酒あんなに頭が痛かったのに今はぜぇ〜んぜん感じない。むしろ心地良い感じだぁ〜。
「本当に大丈夫ですか?」
「大丈夫ってぇ〜。えっとごめん名前はなんだったけぇ?」
「えっあっラナです。」
「お〜ラナちゃんかぁ〜。じゃあこの部屋の掃除とかしててよ〜。」
「か、かしこまりました。」
「それじゃあね〜。」
「いってらっしゃいませ。」
部屋を出て廊下を右に行く。
※本当は左
宰相さんの部屋はコッチだ!コッチに違いない!絶対そうだ!
※違います
えっと〜確か一階だったな!
※そこは合ってます
一階に降りてぇ〜。左!
※違います
そうだこのドアだ!
※違います
「こんにちチワワ!アッハッハ!宰相さ〜ん話って何〜。」
そう言いながら、バン!と勢いよくドアを開ける
※この人は今酔っているんです。皆さんその可哀想な人を見る目を止めてあげてください。
「アレ〜なんでこんなにこの部屋暗いんだ〜?宰相さんってば引き籠りか〜?」
宰相さんと話をする為に奥に進んで行く。
「ちょっと奥過ぎだろ〜。引き籠りはダメだぞぅ〜。」
途中に幾つか大きなカプセルがあったりと不思議な部屋だけどどんどん奥に進む。
※酔っているんです皆さん。前と明らかに違うのに違和感を感じて無いんです。
「おっ!ドアが鉄になったぞぅここか〜?…!クッ!」
鍵がかかっていた。なんだよぅ自分で呼んでおいて鍵とかないでしょう?
でもざんね〜ん俺は盗賊の職業を習得してるんだ解錠くらい出来るぜ!
※出来ません。
「針金は〜おっ!あったあった。」
鍵の形にちょいちょいっと形を変えて、鍵穴に刺す!回して、ほら開いた!
※嘘でしょ!?
「宰相さ〜ん!鍵閉めっぱなしにして〜。俺じゃ無ければ入れなかったよ〜。」
「…ん?君は誰だね?悪いが私は忙しいのでね、付き合ってられないのだが?」
「ん〜誰だ〜あんた〜。…ヒッ!?」
※何度でも言います。この人は酔って…ヒッ!?
ヤバい今まで酔ってた。でも目の前の化け物を見た瞬間に一気に酔いが覚めた。
この化け物は白衣を着て、生身の腕二つに金属製の腕が四つ、右目はター○ネーターの様な目で、そして頭はガラスで脳味噌が丸見えだ。
「君は…なんと!勇者か!しかも、『器用貧乏』か!興味深い!フハハハハ!…しかし、流石に解剖は出来ないか、いや回復魔法をかけながらなら…いやダメだ傷が塞がってしまう。ならば!生命力強化の付与をかければ殺さずに解剖が出来るぞ!」
生きたまま解剖とか怖いんですけど!?この人ヤバイよ!は、早く逃げなきゃ!そう思っているのに腰が抜けて動けない。ヤバイヤバイヤバイヤバイ。
「フハハハハ!」
動け動け動け動け動け!!!!!!
《ーーー早く逃げろ!》
「ッ!?」
どこからともなく声が聞こえてきて、一気に体が動くようになった。
そのまま俺は全力でその場から逃げ出した。
後ろから声が聞こえるが、全部無視して突っ走る。
「ハァッハァッハァッ!」
最後のドアが見えた。脇目も振らずに駆け込む。
「うわぁーーー!!!」
「うおぉ!?」
ドアの前には丁度レイザルさんがいた。誰でもいいから助けてくれ!
「ど、どうしました勇者様!?」
「二日酔いで迎え酒が酔って化け物が!」
「お、落ち着いてください勇者様!」
「えっとこの部屋に間違えて入ったら化け物が俺を解剖するとか言って…」
「この部屋は…ハァー。」
レイザルさんがしまったという感じで額を押さえてため息を漏らす。
「すみません勇者様。この部屋に居るのは私の兄のマッドパス・カノスールです。」
「あ、兄?えっ人!?」
「まぁそれは追々話します。まずは勇者様お部屋にお戻りください。怖かったでしょう?」
あぁレイザルさんなんていい人だ!俺はこの人のことを誤解していた。
この日は結局レイザルさんの好感度が激増して俺はトラウマを上書きされて部屋で震えていた。
ちなみにこの時、宰相さんにこの事を報告するレイザルさんは胃がキリキリと痛み、宰相さんもこの報告を受けて頭を抱えたそうな。
だが、そんなことはベットの上でとても勇者とは思えない情け無い姿で震えている俺こと高川太一は知る由も無いのであった。




