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94、ロバタージュ 〜 特定登録者

 僕は、どんよりしていた。いや違う、めちゃくちゃどんよりしていた。あんなに頑張って、うさぎ狩りもしたのに、体力がほとんど上がってなかったんだ。


 それに、ギルマスが、僕を特定登録者というものに推薦するから、セシルさんに承認してくれとか言い出して…。


 セシルさんが承認すると、推薦者のギルマスの階級が上がるらしいんだ。


 その反面、セシルさんは、同じ魔導士が魔導士を承認するということは、その人に自分が劣る部分があると認めることになるそうだ。


 そんなことは、セシルさんにとって不利なことでしかないのに、何かまだ裏がありそうだった。




「あまり上がっていなかったようですな」


 ギルマスは、残念そうにそう声をかけてきた。そういえば、3つの条件が揃えば断れないと言ってたっけ?


 話の流れからして、特定登録者の説明に書いてた、能力成長の著しい人、特殊な能力を持つ人、特殊な種族の人、ってことだよね。


 そっか、僕は、ふたつ当てはまるんだ。女神様から与えられた特殊な能力があるし、神族って特殊な種族だもんね。



「もうちょっと上がってるかと思っとってんけどな。ほんまここまで残念やと、逆にオモロイわ」


「……おもろないですよ……はぁ」


「ライトさん、ゆっくり頑張りましょう。またご一緒しますから」


「レンさん、優しい。ありがとうございます」


「そんなに残念だったのかい? なんだか逆に気になってしまうよ」



「あ、はぁ…。あ! そういえば、タイガさん、セシルさんが洗脳されてるって知ってたんですか?」


「なんや? いきなり話、変えよって…。そんなに隠したいくらいなら、もっと鍛えろや」


「……はい」


「セシルは、だいぶ前から挙動がおかしかったからな。おまえの変なポーション、まずセシルに飲ませたろと思っとったんや」


「そうなんですね、洗脳解除できるなら……あ!」


「なんや?」


「あ、いえ、ナタリーさんのお兄さんの配下も洗脳されてる人達がいて、内乱になってたなって…」


「はぁ? あー、確かに、せやな。あっちは、かなりの数が洗脳されとるで」


「このポーション、あのお兄さんに売ってこようかな」


「ふふん、ええ考えやな。アイツは、たんまり持っとるから、いいカモになりそうや」


「ですよね」



「ライトさん、待ってるんだけど、見せてくれないのかい?」


「えっ」


 タイガさんと大魔王様の話をしていると、セシルさんが、話をぶった切ってきた。やっぱり、見る気なんだ。ギルマスは諦めた顔してるんだけどなぁ。


「セシル、ギルマスは諦めたようやで?」


「それはそれで。単純に興味あるんですよ。フリード王子の呪詛を消し去るということは、白魔法の能力がかなり高いはずですよね」


「回復魔法力は、他のより一番高いです」


「それに、私の頭の中から、術式模様を切り取ったときの技術も素晴らしかった。もしや、私より能力が高いのではないかと、興味がありましてね」


「はぁ」


「おまえ、黒魔導系やから、当たり前やろ。ライトは白魔導士や」


「一応、蘇生魔法まで、すべての白魔法も使えるんですよ」


「そら、上級魔導士やからな」


「習得には苦労しましたけどね」


「はぁ、みんな苦労しとんねん、おまえだけ特別ちゃうで」


「手厳しいですね」


 そう言いつつも、セシルさんは、僕の方をじーっと見ている。タイガさんと、迷宮だっけ?の捜索の話をすればいいのに…。あ、サーチなのかな?


「セシルさん、サーチされてます?」


「おや、気づかれてしまいましたか。コッソリ見てみようと思ったのですがね〜。ゆるいサーチだと見えませんね、闇で阻害されてるのですね」


(別に阻害なんてしてないんだけど…)


「……じゃあ、どうぞ」


 僕は諦めて、登録者カードをセシルさんに渡した。ギルマスも寄ってきた。結局、見るのかよ。


 セシルさんが、ステイタスを表示させて、その後ろから、ギルマスが覗いている。セシルさんは上から下に、ギルマスは下の方だけを見ていた。



「これは、想像以上でしたね。番犬ですよね?」


 セシルさんは、僕のカードをジッと見ながら、さらりと、聞いてきた。これはどう答えれば…?


「セシル、ライトは俺と同じやって、言わんかったか?」


「それは、肯定だと受け取っても構いませんか?」


「あぁ、構わへん」


「それなら、ノームさんは推薦をされないようですから、私の方から…」


「ちょっと待ってくださいよ? 推薦しないなんて言ってませんが?」


「なら、さっさと書類を作ってきてください」


「もう用意してましてね」


 ギルマスは、先程の本棚から、書類を取り出して、セシルさんに渡した。


「え、あの、僕は…」


「能力、著しく上がっているじゃないですか、ライトさん。もう断れませんよ? 特定登録者が嫌なら、さっさとLランクに上がってください」


「はぁ、ライト、俺は知らんからな」


「タイガさん、どういうことですか」


 その間に、セシルさんは、書類に魔法でサインをしていた。承認されるということ…だよね。


「セシルさん、ありがとうございます。ライトさん、特定登録者の手続きが完了しました。カードにも、情報を入れておきました」


 ギルマスは、嬉しそうにそう言うと、僕に登録者カードを返してくれた。あ! 顔の横に見慣れないマークがついている。目立つじゃん…。


「あの、この目立つマークは?」


「特定登録者のマークですよ。目立つのは役に立つ印です」


「は?」


「同じ職種が承認すると、マークは大きいのですよ」


「はぁ」



「ライトさん、私の補佐も義務ですから、よろしく」


「えっ? セシルさん、どういうことですか?」


「負けを認めて承認したのですから。私の補佐は、経験値かなり多くもらえると思いますよ。ですよね? ノームさん」


「ええ、ご説明が後になってしまいましたね。ライトさんには、ギルドの守護者と、セシルさんと、ノームの補佐という、トリプル補佐を受けていただきました」


「え…」


「ギルドの補佐は通常の1.5倍、王宮のセシルさんの補佐は通常の2倍の経験値を差し上げることになっています」


「はぁ」


「セシルさんの補佐をされるときは、事後になるかもしれませんが、王宮からギルドへ、ミッションとして依頼をしていただきますので、報酬も出ますよ」


「はぁ」


「ということで、早速ですが、明日からの迷宮捜索の補佐をお願いしますね」


「は?」


「おい、セシル、ほな俺はいらんな?」


「タイガさんは剣士として必須です。それとも、ライトさんはタイガさん並みの剣術の腕をお持ちで?」


「アホか、さっきステイタス見てたやろ。忘れたんか? おまえ、もうボケてきたんか」


「冗談ですよ」


「だが、相手によっては、ライトの方が俺より強いで」


「まさか」


「まぁ、ノームは、わかるわな」


「アンデッド相手なら……でしょうね」


「あぁ」


「迷宮は、アンデッドはたぶん居ないですよ」


「せやろな、もっと厄介な奴らが居そうや」


「僕は、そんな…」


「ライト、無駄や、拒否権はないんや。ジャックも、特定登録者やらされとったで」


「ジャックさんも…」


「まぁ、はよ上がるけどな、ランクは」


「はぁ…。でも、僕、明日からというのはちょっと…」


「何か、用事があるのかい?」


「セシルさん、薬草と水を補給しに、イーシアに行きたいんです」


「あー、往復だけで丸一日かかるね。ポーションの素材かい? それもないと、王宮も困るな」


「おまえ、自分の配下を使えば、すぐやんけ」


「薬草を摘む時間も、考えてくださいよ」


「まぁ、せやな」



「ライトさん、配下をお持ちなのですか?」


 突然、ギルマスが妙な所に食いついてきた。僕はどうしようかと、レンさんを見た。レンさんはタイガさんを見る。


「なんで、俺にヘルプやねん。ノーム、変なこと聞くなや」


「ですが、不思議で…」


「はぁ、もう、なんで俺に聞くねん。ライト、自分で答えろや」


「でも…」


「何か、訳ありな配下なのかい? 女の子?」


「セシル、おまえがそう言うと、なんかエロいで」


「えっと…」


「ライトには、女の子に見える配下がおるんや」


「女の子に見えるって? あ、ライトさんみたいな可愛い男の子ですか?」


「いや、アイツらは性別不明や」


「アイツらって? そんな何人も配下をお持ちなのですか! ライトさんっていったい…」


「数は、わからん。平均的には族あたり500万前後やろな。誰も数えへんから、神も知らんやろ」


(え! 生首達、そんなにいるの?)



「ま、まさか、それって……ワープワーム?」


「セシルさん、アマゾネスがこの国に渡ってきた元凶ですよね、その虫。ギルドでも調査中の正体のわからない虫ですが」


「なんや、あいつらワープワーム飼っとるんか」


「タイガさん、その虫って、基本的に魔族がすべての所有権を持っているのではないのですか? ギルドの情報ではそうなっています」


「王宮でも、人族ではアマゾネスの女王しか、ワープワームの所有者はいないと言われています」


(魔族、取り返しに来たもんね…)



「アマゾネスは、人族というよりは魔族に近いでしょう?ギルドではアマゾネスは魔族とみなしていますよ」


「彼女達は、人族だと言ってますよ」


「人族の枠からは外れた戦闘能力ですから。それより、どんな虫なのですか? ワームというくらいだから、青虫や毛虫のような感じですか?」


(ギルマス、興味津々…)


「王宮にいるのは、いかつい剣士のような感じですよ。サイズは手のひらに乗るくらいの、男性に見えるこびとです」


「え? 虫なのに、こびとなのですか?」


「擬態しとんねん、主人に媚びとるんや」


「常に怒った顔をしているこびとなんですよ。弱い虫ですが、男が近寄ると火を吐くので、厄介でしてね」


(ん? 生首じゃないの? こびと?)


「ライトのとは、全然違うタイプやな」


「あ、性別が主人とは逆なのですね。女の子だから、そこまで凶暴にはならないんですね」


「何言うとんねん、男より女の方が凶暴な奴、多いやんけ」


(タイガさんのまわりは、そうかも…)


「そうですか?」


「セシルは、世間知らずなんや」


「ははっ。まぁ、今日はもう遅いですし、捜索は、明後日からということでよろしいでしょうか」


「あぁ、ええで。それから、アイツにはライトを同行させるとは言うなよ?」


「アイツとは?」


「フリード王子の専属護衛の、カルシウムの足らん剣士や」


「あー、血の気の多い彼?」


「アイツは、ライトに命を救われたくせに、ライトの評判を落とすことしか考えとらん」


「まぁ、フリード王子がライトさんを褒めるのが面白くないんでしょうね」


「男の嫉妬は、ねちこいからな」


「女性の嫉妬も、そうじゃないですか?」


「ほんま、セシルは世間知らずやで。男に嫉妬されたことあるやろ?」


「いや、私は、そっち方面は…」


「どアホ! 単なる能力の嫉妬の話をしとんねん」


「あー、なるほど。それなら……まぁありますよね、いちいち気にしてませんが」


「はぁ、これやからエリートは嫌いなんや」


「お褒めの言葉、ありがとうございます」


「ライト、レン、飯いくで」


「へ?」「はーい」


(急に、ごはんって…)


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