9、ロバタージュ 〜 主人公ライトのステイタス
商業の街、ロバタージュ。
この国で最も栄えているといわれる、活気に溢れる街である。有名な商店は、ほとんどすべてこの地に本店または支店を置いているそうだ。
また、露店商や行商人も多く、いつも活発に取引が行われている。闇市もある。裏の顔を持つ店もある。そのため、この街で手に入らないものはないと言われているらしい。
そして、この地に店を構えていない商人も、その商品を転売するために、この地に買い付けにやってくることがあるようだ。
ここ、ロバタージュは、ギルドの規模も大きい。
毎日たくさんのミッションの依頼があり、それを目当てにたくさんの冒険者が集まる。
そして特徴的なのが、採集や狩猟のミッションが多いことだそうだ。
商人が必要とする素材には、希少価値の高いものも少なくない。そのようなものを入手するには危険を伴うため、高い報酬が約束されている。
ふだん、魔物の討伐で荒稼ぎをしているような高ランクの冒険者も、この報酬を目当てにロバタージュに集まってくるらしい。
そのため、傭兵のスカウトにと、地方の貴族が自ら出向いてくることも少なくない。
すなわち、ここは人と物が集まる街、そして、眠らない街なのである。
昼夜関係なく、赤い太陽のときも青い太陽のときも、ずっと活動している街なのだ。
「このポーションは、いったいどこで?」
ギルドの買取担当の職員は、ポーションのラベルを確認し、驚いている。
「驚くのはまだ早いぞ。1本、中身の検査をしてみな。味も、な」
僕がマゴマゴしていたら、警備隊の隊員レオンさんが僕の代わりに交渉し始めてくれた。
(レオンさんが付き添ってくれてて、ほんと、助かった)
「レオンさん、あの…」
僕はお礼を言おうとしたのだが、別の意味だと勘違いされた。
「あ、検査の分は、ギルドが買い取ってくれるから大丈夫だ。だよな?」
「はい、こちらで取り扱ったことのない品を検査するために消費した場合は、もちろん買取させていただきます」
「あ、はい。ありがとうございます」
ギルドの職員さん達は、奥からも人を呼び、ちょっとした騒ぎになっていた。
買取の列に並ぶ他の冒険者達も、興味深いらしく、僕の方を見て、なんだかんだ話している。
僕は、レオンさんに、さっきのはレオンさんにお礼を言いたかっただけだと告げた。
「じゃあ、お礼がわりに、価格査定で価格が決まったら、10本、俺に優先的に売ってくれ!」
「え! そんなの、お礼にならないじゃないですか」
「坊やが、お金ないのがわかってるのに、くれとは言えねーからな。わははっ」
「わかりました。ありがとうございます」
「おうっ!」
ポーションの査定に待たされている間に、登録者カードの発行完了の呼び出しがあった。
僕は、どうしようかと迷っていると、レオンさんが、ここは任せて、カードを貰ってこいと言う。
僕は、再びレオンさんにお礼を言って、発行カウンターにカードを受け取りに行った。
「これにて、冒険者登録は完了です。ライトさん、新人冒険者おめでとうございます」
「あ、ありがとうございます」
「登録時に説明があったかと思いますが、登録から半年の間に1度もミッションを成功されなかった場合には、資格を喪失することになりますから、気をつけてくださいね」
「はい」
「他に何か疑問点やご質問はありますか?」
「いえ、特には」
「では、ミッションの受注をお待ちしております」
「はい」
(え? それだけ? チートに驚くとかないのかな? あ、能力は隠すもんだっけ……だから知らないフリしてるのかな)
何を言われるかと、身構えていた僕だったけど、特に何もなく、事務的に登録者カードを渡されただけだった。
なんだか、複雑な気持ちになりつつも、レオンさんのところに戻った。
まだ、ポーションの価格は決まらないようで、ちょっと外して、飯でも食おうということになった。
「あの僕、まだお金ないです。買取が終われば…」
「飯くらい、おごらせろよ、命の恩人!」
「あ、いや、あれは、僕がただのピエロだった事件じゃないですかー」
「ピエロ? ってなんだ?」
「あ、道化師というか、勘違い野郎というか…」
「あー! ははっ。確かに、ほんと驚いたぞ。まさか、あの守護獣を、俺らから庇おうなんてな。俺らのこと、どんだけ強いと思ったんだ? ぶははっ」
「あははっ……はぁ」
また思い出したくないピエロ事件を鮮明に思い出し、さらにアトラ様との…。はぁ……ダメだ。ポジティブにいこう、うん。いや、さっさと、忘れよう、うん。
レオンさんのおごり、ということで、ギルドの横にある冒険者御用達だという店に入った。
中はとても広かった。フードコートのような感じだ。
今はランチタイムのようで客で溢れていた。冒険者っぽい人が多いが、商人っぽい人も多い。とてもガヤガヤと騒がしい店だったが、居心地は悪くなかった。
「あー、この時間は、メニュー選べないんだった。坊や、好き嫌いは大丈夫か?」
「あ、はい。たぶん大丈夫です」
そして、1種類しかないランチ定食が運ばれてくる。その場ですぐお会計なんだ!
店員さんは、定食のお盆をテーブルに置くと、すぐ、レオンさんからお代を受け取っていた。
たぶん僕はポカンとしていたんだと思う…。
「あー、食い逃げ対策だと思うぞ」
「なるほどー」
(食券はないんだ。まぁ、定食1種類ならいらないか)
お盆の上には、でっかいパンと、シチューっぽいものと、紅茶っぽい飲み物が乗っていた。
この世界での初めてのまともな食事に、僕はちょっとワクワクした。
レオンさんを見ると、顔をしかめている。
「ん? どうしたんですか?」
「あ、いや、な。ここに入ってる豆、嫌いなんだよな…」
レオンさんはそう言うと、シチューっぽいものの中から、何かをポイポイ取り出していた。
(なんか、意外。嫌いなもの、食べれないんだ)
思わず、ちょっとニヤついてしまった。
「坊やは、嫌いな食べ物はないのか?」
「たぶん、だいたい大丈夫だと思います」
そして、僕達は食事を始めた。パンはけっこう固くて、パサパサしている。あ、レオンさんは、パンをシチューっぽいのにつけて食べてる。なるほど、パサパサだもんね。
僕も、真似をして、シチューっぽいのにつけてみた。うん、パサパサパンはしっとりしたけど……あまり味がないなー。
この世界は、味覚が違うのだろうか?
シチューっぽいものは、野菜と豆と塩の味しかしない。ルゥとかバターが入ってるような色なのに、味気ない。
前世は、恵まれすぎていたのかもしれない。
「坊や、どうだ? 味は、大丈夫か?」
「あ、はい。温かいものは嬉しいです」
「そうか、俺は、ちょっとイマイチだな……食えなくはないが」
「あ、豆の匂いがダメですか?」
「いや、それもあるが、肉が入ってないから、味気ないじゃねーか」
「確かに。すごくあっさりしてますよね」
(なーんだ。やっぱ味気ないんだ。ちょっと安心)
「ミッションで遠出したら、肉を食えるんだがな」
「狩りをするんですか?」
「ああ、さばきたてだと、生で食えるのもあるんだぞ。まぁ、火を通す方が安全だけどな」
「へぇ。楽しそうですね」
「お? じゃあ、査定終わったら行くか? 晩飯は、やっぱり肉食わねぇとな」
「えっ、あ、でも、僕、しばらくはパーティ入らないとダメとか言われましたけど」
「あん? 高ランクの冒険者とならお出かけ可って言われなかったか?」
「あ、はい、言われました。本職の冒険者さんなんて……って、もしかして?」
「おうよ、俺のカード見るか?」
「は、はい!」
ポンっと、渡されたカードには、レオンさんの顔写真つきで、
「えっと……Aランク?」
「おう。もうちょっとで、Sランクだ。あと1年くらいかな」
「あ、あの……ランクって、どこまであるのですか?」
「今のところ、一番上は、Lランク、レジェンドだな。その下が、S S ランク、そしてSランク」
「えっと、僕は…」
登録者カードを見てみた。
あ! 僕の顔写真! 僕ってこんな顔なんだ。やはり、男か女かわからない中性的な感じ。
(はぁ、目、半分つぶってるし)
ギルドで見た人達も、この店にいる人達も、こんな中性的な顔はいない。この街にいる人達と僕は、違う人種なんだろうな。
「Gランクなんだ」
「ああ、まぁ、最初のうちはサクサク上がるぞ。Cランクまではな。そこから先はなかなか上がらん。めちゃくちゃな経験値が必要なんだよ」
「じゃあ、レオンさんって、凄いんだ!」
「むふふ。まぁな。あ、坊やの能力、見せろよー」
(き、きた! えっと……こんな人が多いとこで…)
「えっと、どうやって見るんですか?」
「顔写真のとこに魔力こめてみな」
「魔力こめてが難しい。ちょっと待ってください」
僕は、イライラしたり、わたわたしないと魔力が込められない。顔写真に触れて、触れて、触れて……あ、なんか出てきた。
それを、レオンさんが覗き込む。
[名前]ライト
[ランク]G
[HP:体力] 750
[MP:魔力] 700
[物理攻撃力]50
[物理防御力]100
[魔法攻撃力]15
[魔法防御力]500
[回復魔法力]1,050
[補助魔法力]200
[魔法適性]火 水 風 土
(うーん。よいのか悪いのかわからない…)
「おい、坊や、おまえ、すごいな!」
「えっ? これ、すごいんですか?」
(やった! やっぱり、転生者はチートなんだ)
「ああ、一般的な成人の基準値が、HPは1,000だが、それ以外は、100なんだ。それに魔法適性が4つすべて出てるなんてめちゃくちゃ珍しいぞ」
「えっ? じゃあ、僕、あれこれ、低くないですか?」
「魔力は7倍。回復魔法力なんて10倍超えじゃねーか! 防御力も問題ないし、体力ないのはこれから鍛えればいいんだよ」
「鍛えれば、数値上がるのですか?」
「ああ。ただ、まぁ、4属性あるのに、魔法は攻撃には使えなさそうだな…」
「15って……普通の人の15%しかないってことですよね」
「まぁ、な」
「物理攻撃も、半分…」
「あ、そっちは鍛えればある程度、上がるぞ。魔法はなぁ……結局、一番得意な属性しか伸びないから、回復特化って感じだな。魔力高いし、いいんじゃないか?」
「はぁ。じゃあ、僕は、狩りとか厳しそうですね…」
「まぁ、でも、回復役は必要だからな。坊や、回復魔法は使えたのか?」
「えっと、よくわかりません…」
「もしかして、魔法の記憶もなくしたのか…」
「……うーん」
「ま、まぁ、大丈夫だ! 忘れたなら、また習得すればいいだけだから、な」
「え? あ、はい…」
(全然チートじゃないじゃん。ってか、逆に普通にダメなやつじゃん。……まじか。ちょっと涙でてきた…)




