81、ヘルシ玉湯 〜 ヘビ髪のレアモンスター
皆さま、いつもお読みいただきありがとうございます! ブックマーク、評価もありがとうございます。めちゃ嬉しいです。
実は昨日から、最初の方を少しいじり始めました。と言っても内容を変えているわけではなく、(カッコ)の使い方が最近変わってきたことと、?や!マークの後ろを空けずに、見にくい文章になっている部分が気になりまして…。
もしお話の内容を変えることがあれば、更新時の最新話でお知らせします。基本的に見やすくするだけの予定です。
空いてる時間にたまに触るつもりです。よろしくお願いします。
「おい、おまえ、なにザコ連れて来とんねん」
僕が、セイラさんを助けに行ったときに囲まれたメドゥーサの子供のような魔物が、あのときは5〜6体だったのに、いまは、20体を軽く超えてるほど集まってきていた。
「さっきは5〜6体だったんですけど」
「こんなにたくさん! レン、どうしよう…」
「な、なんとかする! セイラのことは守るから」
(レンさん、かっこいい)
「こんなにたくさん、レアの子供がいるなんて」
「ライト、おまえアホか? レアは水属性や。なんでその子供が火の玉飛ばすんや」
「そういう魔物じゃ?」
「そんなわけないやろ。このザコ達は、自分達がレアに狩られんように擬態しとんねや」
「ん? 擬態? マネしてるってことですか?」
「あぁ、化けとるだけで、使える力が変わるわけちゃう。もともとは火山におるザコや。突然現れたレアに媚びとるだけや」
「へぇ、そういう身の守り方があるんですね」
「あぁ」
「それより、タイガさん、レアはどうなったんですか?」
「はぁ? なに言うとんねん。そこにおるやないけ」
「はい、あの、てっきり交戦中かと思ってたんですけど…」
「手出しするなと怒鳴られたからな……見守り中や」
(あ、ミサさんにかな…)
「きゃーっ」
あ、セイラさんとレンさんが完全に、僕達から離れてしまった。セイラさんが急に変な方向に逃げたために、それを追ったレンさんと、分断されてしまったんだ。
「あ、目を離した隙に…」
「はぁ? おまえな、なんでミッション中に目を離すんや。アホか。あちこち常に見とけや」
「はい…」
「心配せんでも、レンは弱くはない。彼女の前で、逆に見せ場ができてよかったくらいや」
「はぁ」
「そんなことより、あっちのアホや…」
タイガさんは、レアと交戦中のパーティの方を見ていた。
「ミサさんとセイラさんって同じパーティなんですよね? なぜセイラさんが置いてけぼりに?」
「魔力切れの白魔導士を連れて、レアに挑むわけないやろ。たぶん、片付けてくるから待ってろってことやと思うわ」
「え、でも…」
「こんだけ、冒険者がわんさかおったら、弱って転がってる方が安全や。火属性の魔物は好戦的なんや。弱っておとなしく寝てるヤツより、この地を踏み荒らす冒険者の方が襲われるからな」
「なるほど」
「あー、もう見てられへんわ。なんであんなショボいんや、アイツら。あんなんに、任せておかれへん」
(…タイガさん、なんだか父親っぽい発言)
「でも、いい勝負に見え…」
「アホか。完全になめられとるで。体力削られたところにブレスでもくらうと全滅するわ」
「ブレス? 火を吐くんですか?」
「どアホ! 水属性やって言うとるやろ。麻痺毒のブレスや。体力削られたあとに猛毒をくらうと、下手すりゃ即死やで」
「わわっ! 大変じゃないですか」
「はぁ、もう、しゃーないな…」
(やっとタイガさんが参戦?)
「おまえ、行ってこい!」
「へ? 僕ですか?」
「あぁ、あのヘビ、サクッと狩ってこい」
「いやいや、回復してこいの間違いでしょ」
「はぁ? 回復しても無駄や、アイツらには狩れへん。こんだけ時間かけて狩れないなら、体力あるうちに逃げるべきなんや」
「はぁ」
「おまえ、片付けてきたれ!」
「いえいえ、タイガさん、どこかで頭打ったんですか?」
「なにババアみたいなこと言うとんねん。さっさと行ってこい。俺、もうストレス限界や」
(なら自分で行けばいいじゃん…)
僕がジト目で睨んでいても、タイガさんは気にせず、ほれほれ、はよ行けと、アゴをクイクイと突き出している…。こういうとこ、ほんと、女神様とそっくりだよね…。
(はぁ……まじか。行って回復しようか)
と、うじうじしていたら、タイガさんの読みが当たってしまった。奴は、ブレスを吐いたのだ。
レアを取り囲んでいた7人全員が一斉に崩れるように倒れた。
みんなが倒れたのを見て、レアモンスターは、他の冒険者達がいる崖の上を睨んでいた。
そして、新しい獲物を狩るべく、この場から離れ、崖へと近づいていった。
「うわっ! 行ってきます!」
「あぁ」
僕は、バリアをフル装備で張り直し、倒れた人達の元へと走った。
あ、ゲージサーチだ。僕は、みんなの様子を見た。体力ゲージがみんなオレンジか赤になっている。それにどんどんゲージが減っていってる!
(やばっ! 猛毒なんだ!)
「なっ? 何? あんた、危ないで」
「ミサさんこそ。失礼します」
僕は、ミサさんの身体にスッと手を入れて回復!した。それでも少しずつゲージが減っている。毒が消しきれていない。
僕はクリアポーションを渡した。
「すぐ、飲んで!」
「へ? え、うん」
僕がポーション屋だと覚えていた彼女は、安心感もあったんだろう。ラベルも見ないですぐに蓋を開けて飲み干した。
「甘いビールやん」
「毒消しです。消しきれないかもだけど改善はされるはずです」
「いや、治った気がするで。助かったわ」
「ポーション係、お願いできますか」
そう言って、ミサさんにクリアポーションを6本渡した。
「体力ヤバイ人から回復していきます。ミサさんは皆さんの毒消しをお願いします」
「えっ?」
「ブレス、まずいんですよ。みんなすごい勢いで体力が減っていってます」
「え! わ、わかった、まかせとき」
僕は、倒れていた人達を次々と回復していった。そのあと、ミサさんがポーションを配ってくれた。
そして、6人の回復が終わったと思ったら、再び、ブレスがきた。
ハッとして、水辺を見ると、崖の上には人は居ない。逃げたのかと思ったら……レアモンスターの髪のヘビ達が異常にふくらんでいた、そう、人の形に…。
「あ、アイツ、人を丸呑みしたんか?」
さっき倒れていた冒険者が、呟いた。
僕は、ヘビを『見る』と…人が飲み込まれていた。飲み込まれた人達は、体力ゲージは黒……死んでいる。
人を飲み込んでいないヘビが、なんだか騒いでいる。どうやら、奴らの食事時間に突入してしまったらしい…。
飲み込まれた人は、みるみる消化されて、ヘビは元の髪のサイズに戻った。
ブレスをくらって、ここにいた人達の体力は、また大幅に下がった。でも、まだ飲んだばかりのポーションの効果が残っていて、毒は体力を減らしただけで消えたようだ。
「アイツ、殺してから丸呑みする気じゃねぇか」
「やばいんじゃ……食事時の魔物は、やばいだろ」
「完全に、俺達のこと、エサだと思ってる…」
「さっきタイガさんが、逃げる体力があるうちに逃げないといけないって言ってました。撤退しましょう」
僕が、そう呼びかけたけど、誰も撤退しようとしてくれない。
「ここまできたら、殺るか、やられるか、しかないっしょ」
(やられるしかない…じゃん)
「あんたの回復には感謝するけど、白魔導士なら、引っこんどき。怪我するで」
「次のブレスくらうと、また瀕死状態になりますよ!」
「その前に片付けるだけだぜ!」
そして、彼らは、またレアに対峙している。
(タイガさんが回復しても無駄って言ってたのは、こういうことか…)
「行くぞ!」
彼らは、またレアに向かっていった。レアは、触手のようなもので、彼らをあしらっている。奴の、人のような頭は、楽しそうにヘラヘラしている。
(アイツに完全になめられてるって、わからないのかな)
僕は、だんだんイライラしてきてしまった。僕は剣を抜いた。タイガさんがストレス限界って言ってたのがわかった気がする。
次のブレスを防げないくせに、僕が回復しなかったら、反撃なんてできなかったくせに、なんで、自分達の身の程をわきまえないんだ。
タイガさんじゃないけど、僕には、彼らの行動が、どアホに見えた。こんな無鉄砲は、勇気じゃない。ただの意地だ、ただのバカだ。
アイツが、人のような頭が、上を向いた。さっきも、このアクション……ブレスがくる!
「ブレスがくる! 下がって!」
僕は、とっさに叫んだ。ミサさんだけ、え?っと反応し、防御の構えをとった。他の6人には、完全に無視された。
僕が仕方なく、彼らの回復に行こうとしたときに、ブレスが吐かれた。
キーヒャッヒャッ!
妙な笑い声が聞こえた。人のような頭が、ブレスで倒れた冒険者達をあざ笑っていた。そして、髪のヘビが倒れた彼らに襲いかかろうと身体を縮めた。
(やばい! 止めなきゃ、丸呑みされる)
僕は、無意識に、手に持っていた剣を、奴に向かって、下から斜め上に振り上げた。剣がまるで勝手に動いたかのようだった。
(あっ! あれ?)
いつの間にか、僕の闇を吸収していた剣から、黒い雷撃が、もの凄い勢いで、奴に向かって飛んで行った。奴には当たらなかったが、ヘビは動きを止めた。
奴の、人のような頭が、初めて僕を見た。しかも、ヘラヘラしていない。無表情……いや、違う。怒りに震えている…。
だが、僕だって怒っているんだ。レアモンスターに対しても、そしてバカな行動をする冒険者達に対しても。
(奴が怒っているということは、やはり、雷に弱いんだな…)
そして僕は、さっき放った黒い雷撃を見た。そう、放った黒い雷撃は、奴の頭の上空にいるんだ。
まるで小さな黒い雷雲のように、チリチリと光りながらとどまっていた。
そして、この黒い雷雲は、僕に何かを語りかけているようだった。さらに、この黒い雷雲は、まるで僕を誘うかのように、奴の頭の上をゆるゆると旋回し始めた。
僕は、何かに取り憑かれたかのように、剣を握る手に力を込めた。ブワッと剣から火、氷、風、土、様々なものが、黒い闇のイナズマに絡まるようにして立ち上る。
そして、僕は、奴に向かって走り出した。剣が、黒い雷雲が、僕を走らせた。
奴も、僕を仕留めようと触手を伸ばした。たくさんの触手が僕を叩き潰そうとするが、僕には当たらない。奴の攻撃はすべてバリアが弾く。
そして、僕の剣が奴の頭をとらえた。僕は、思いっきり剣を突き立てた。剣から、黒い雷撃が絡まった黒い炎と黒い氷が噴き出した。
ズバババッ! シューッ、キィィン!!
僕が奴の頭に剣を刺すと同時に、黒い雷雲が無数の黒い雷撃となって奴の身体に次々と突き刺さった。
ガッ!スパスパ! ドドドッ! バーン!!
僕は、ものすごい爆発音で、フッと我に返った。
そこには、黒い炎で焼かれ絶命している何かが居た。そして、まわりにいた人達が、シーンと静まり返っている。
(あれ? 僕、何をしてたんだっけ? これは…)




