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71、ロバタージュ郊外 〜 人面ラビッツ

たくさんのブックマーク、評価ありがとうございます! めちゃ嬉しいです。


突然ですが「夕凪」→「夕凪ナギ」に、改名しました。活動報告にも書いてみましたが、同名の方が何人かいらっしゃるのがわかり、私が一番「書き手」デビューが遅いと思い、ご迷惑にならないよう変更させてもらいました。


これにより、いつも読んでくださっている皆様を混乱させてしまったら申し訳ありません。ごめんなさい。


今後ともどうぞよろしくお願いします。

「ライト、玉湯に着くまでバリア禁止やで」


「は? な、なんでですか」


「バリアを張るから、相手が弱いかどうかがわからんねや」


「ええ〜…むちゃぶりですよ」



 僕はいま、タイガさんと受注したミッションの目的地、ヘルシ玉湯を目指して歩いていた。


 ヘルシ玉湯は、この国でも特に女性に人気の高い温泉なんだそうだ。美肌効果が高く、アンチエイジング効果も期待できるらしい。

 だから、女性グループ目当ての男性グループも多く訪れるため、いろいろとトラブルも多いそうだ。


 僕は、というかタイガさんが勝手に、道中の玉湯付近の魔物討伐も、受注していたため、僕は珍しく…いや初めて、剣を腰に下げていた。


 それから、僕が今まで魔法袋やカバンを引っ掛けていたベルトは、本来なら剣を装着するためのものだと、タイガさんから教わった。

 なるほど、そう言われてみると確かに剣を装着できるようになっている。さすが剣と魔法の世界だな。



「おい、来たで。お客さんや、火に弱いから楽勝やろ」


「えっ!」


 タイガさんが指差している方を見ると、何かが飛び跳ねていた。


 すると、タイガさんが自分だけにバリアを張った。


「ちょ、なんでタイガさんがバリア張るんですか。僕には禁止しておいて、ズルくないですか」


「はぁ? おまえアホか。俺の認識阻害のためのバリアやで。なんも張らんかったら、あんなザコ、逃げ出しよるやんけ」


「ん? 意味が…」


「野生の魔物は、危機感知の能力が高いんや。自分より強いもんに近づくバカはおらへん」


「あ〜、なるほど…」


「来るぞー」


 そう言うとタイガさんは、僕からスッと離れた。


「な、なんで避けるんですかー」


「邪魔せんようにや」


 ぴこぴこと飛び跳ねていたのは、能面みたいな人顔のうさぎみたいな魔物だった。


(顔こわ…)


 僕を敵だと認識したらしく、飛び跳ねるのをやめ、ジリジリと近寄ってきた。そして突然、ピョーンと飛び跳ね、僕に強烈な蹴りをいれてきた。


「痛っ!」


 僕は、右足の太ももを蹴られ、あまりの痛さに、立っていられずにしゃがみ込んでしまった。骨折れたかも…。


「さっさと回復して応戦せーや。またすぐ来るで」


 僕は、必死に回復!して立ち上がった。そして剣を抜こうとしたら、横からまた蹴りを食らって、僕は倒された。


「くっ…」


 再び、回復!そして僕は剣を抜いた。すると、奴は少し警戒したらしく、すぐには飛びかかってこなかった。


 でも、ジリジリとまた近づいてきた。これは、さっきの強烈な蹴りの前触れか…。

 と思った瞬間、奴は、ピョーンと飛び跳ね、強烈な蹴りをいれてきた。

 今度は僕は、剣で防ごうとしたのが間に合わず、腹にモロに食らってしまった。


「げほっ」


 一瞬、息が止まるかと思った…。頭がチリチリする。僕は回復!を唱え、奴の姿を探した。


(あれ? いない?)


 と思ったとたん、背後から腰に強烈な蹴りを受け、僕は前に勢いよく転んで 頭を打ってしまった。おでこを切ったらしく血がタラリと流れてきた。


「ちゃんと、目で追えや」


(っく、そんなこと言われても…)


 僕は、回復!し、立ち上がった。うさぎに舐められている…。くそっ、腹が立ってきた!


 突然、奴がまた目の前に現れた。ジリジリと近寄ってきた。


(これはまた飛び跳ねる)


 僕は、剣を横に振った。するとたまたま、ちょうど奴が飛び跳ねたところをかすった。


(当たった!)


 奴は、僕が振り回した剣では、無傷だったようで、また能面のような怖い顔でジーっとこちらを睨んでいる。


(火に弱いって言ってたっけ)


 また奴は、ジリジリと近寄ってきた。はずしたからか、さっきよりも近くに寄ってきた。


 僕は、剣に火を纏わせた。一瞬、奴は怯んだようだが、すぐ立ち直ったらしく、ピョーンと飛び跳ねた。


 空振りするとまた強烈な蹴りを食らうが、僕はコイツの攻撃力を知っている。

 散々、舐められて腹が立っていた僕は、覚悟を決めて、飛び跳ねた奴に向けて、剣を振った。ボゥオッ!


(まともに当たった!)


 奴は、僕が放った火の玉に包まれ、ポテッと転がった。


「トドメ刺さな、また動くで!」


「え! あ、はい」


 僕は、転がった奴に火を纏わせた剣を突き立てた。奴は、ギュェ〜っと気持ち悪い奇声をあげて、動かなくなった。


(や、やっと倒せた? はぁ、はぁ)


「おい、何をボーっとしとんねん、討伐した魔物はギルドに提出や」


 そう言うと、タイガさんは、僕に魔法袋を放り投げてきた。ん?デカイな、これ…。


「これに入れるんですか?」


「あぁ、ギルドが渡して来たやつは小さいからな、それに入れとけ」


「あ、はい」


「ほな、行くで」


「ちょ、ちょっと休憩を…」


「アホか、なに甘っちょろいこと言うとんねん、放ってくで」


「えっ、わっ、待ってください!」



 それからの道中、やたらと、この能面うさぎが出没した。というか能面うさぎしか出てこない。


 僕は、ボロボロになりながらも、なんとかすべて討伐できた。奴の動きがだいたいつかめてきた頃には、空振りして強烈な蹴りを食らう回数も減ってきた。



「うさぎ何体や?」


「か、数えてません…」


「アホか、魔法袋に表示させてみー」


「え? これ、中身がわかるんですか?ダンジョン産?」


「あぁ、だから、それを使わせとんねや」


 僕は、魔法袋に、中身を聞いた。



 人面ラビッツ 21



(わー! 表示でた!)


「これ、人面ラビッツっていうんですね。21体です」


「まだ21かいな…」


「マズイですか?」


「いや、別に構わへん。数の指定はないからな」


「コイツばかりなんですね、この道中…」


「いや、いろいろ出てくるで」


「でも、うさぎしか…」


「あー、他のは全部、追い払ってるからな」


「へ? なんで?」


「おまえが倒せへんもん、出てきても仕方ないやろ。それに同じもんばかり討伐する方が、戦い慣れて効率ええからな」


「…た、確かに…」


「うん? おまえ、魔力切れかけちゃうか? ババアの胃薬飲んどけや」


「え? あ、はい」


 確かに目がかすむ…けど、疲れたのかと思っていた。でもかなり回復と火魔法を使ったから、魔力だいぶ使ったよね。僕は、1,000回復の魔ポーションを魔法袋から出して飲んだ。うん、胃薬味だね。


「まだ回復足りてへんぞ」


「え? 見えるんですか?数値」


「数値は見えへんけど、色は見えるやろ」


「色?」


「おまえも見えるやろが。『眼』あるやろ」


「えっ? どうやって見るんですか?」


「ゲージサーチや」


「ゲージサーチ? あ! タイガさん、緑と緑、ふたつのバーが心臓あたりにあります」


 ゲージサーチと言ってタイガさんを見たら、ぼんやりした棒状の光が2本見えた。


「心臓やなくて、核ってとこに情報入ってるらしいで。おまえは、青と、オレンジや」


「えっと…上が体力で下が魔力ですか?」


「あぁ」


「80%以上が青、60%以上が緑、40%以上が黄、20%以上がオレンジ、20%を切ると赤や。ゲージの長さが残量や」


「ゲージの長さ?」


「あぁ、青でゲージの長さ半分なら90%ってことや」


「半分かどうかって…どうわかるんですか?」


「戦ってたらわかる。ダメージ与えると色が変わる瞬間でだいたい、そいつのゲージの長さが判断できるんや」


「へぇ、じゃあ、あとどれくらいで倒せるかもわかるんですね。めちゃくちゃ有利な能力ですね」


「あぁ。でも、相手も知能の高いやつは、こっちの状態を見れるヤツも かなりおるからな。人族でも、ざらにおるで」


「えっ? よくある能力なんですか?」


「あぁ、警備隊のエリートは全員、見れるらしいしな」


「そ、そうなんだ」


「胃薬、もっと飲まへんのか? 25%ぐらいやぞ、おまえ」


「えっ! わ! 飲みます」


 僕は、うでわを開けた。


「はぁ? うでわに入れてたら、とっさに使えんやろが。全部魔法袋に移しとけ」


「あ、はい…」


 僕は、うでわから、全部…は抵抗があったので、3本残して20本、魔法袋に移した。そして、2本飲んだ。


「おーい、まだ黄色いで。このあともまだまだ魔力使うやろ」


「うっ…はい」


 僕は、もう1本飲んだ。


「これで緑ですか?」


「あぁ」


「胃薬、数を飲むとキツイです」


「ババアは、毎日何百本とか飲まされとるで〜」


「ですよね。あの、城には、10%の魔ポーションとか、もっと回復値の高い魔ポーションってないんですか?」


「固定値3,000のはあるけどな……ドブの味やからな」


「あー、ドブ味より、胃薬 3倍飲む方がいいですね」


「せやろ。だからと言って、おまえから買い占めようともせんけどな…」


「女神様は、どうして買い占めないんでしょうか」


「おまえもわかっとるやろ? あいつの性格」


「僕を縛ることになるから…ですか?」


「あぁ、そうやろな。意地っ張りで不器用やからな…。自由を守るのがあいつのポリシーらしいから、それに反する行動は、したくても我慢しとんねやろ」


「自由を守る…ですか」


「俺の自由は……ないに等しいけどな。ったく、下手に結婚したのが敗因や…」


「素敵な奥さんじゃないですかー」


「まぁ、嫁はええねん。コンビニも全部やってくれてるしな。ただ、娘がな……うるさすぎるんや」


「あはは…」



「しかし、真面目な話な、ババア、そろそろ回復魔法を撃たんとマジでヤバイんや。これ以上、あいつの最大魔力値が下がると、撃っても魔力不足で星の全回復しか出来んかもしれん」


「星の全回復が出来れば、女神様のステイタスも戻るんですよね? それでいいんじゃないですか?」


「アカンあかん。あちこちから難癖つけられて、集中放火を受けておしまいや。回復と同時に絶対防御を張らんと意味ないんや」


「そ、それなら、すぐにでも撃たないと?」


「まだ足らんのや、あいつの魔力値が下がりすぎたからな。宝玉、いまの倍あれば、数年先になっても楽勝やろけどな…」


「じゃあ、集めないと!」


「いやいや、倍も…この星には存在せーへんのや。それに派手に集め始めるとバレるからな…。他の星から別の魔力エネルギーを奪うとか何かせな厳しいんちゃうか」


「他の神々にバレる…。でも略奪は…」


「あいつの性格からしてないやろな。はぁ、マジで世紀末やで。あ!なんちゃらの大予言、どうなったんや?」


「へ?」


「あっちの星、滅亡するとか言うてたやつ、1999年の…」


「あー、特に何も…」


「なーんや。あれにビビっとった連れ、多いんやで」


「タイガさんも、ビビってたんですか」


「いや、俺は、どうせ滅亡するならと思って、派手に遊んどったな。でもなんか、たまたま買った株が上がって、働かんでも金には不自由せんかったわ」


「バブリーですね」


「その分、いま、めちゃくちゃ働いとるわ」


「あはは…」


 そうして僕達は、ヘルシ玉湯に到着した。

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