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66、女神の城 〜 ポーションの目印をゲットする

「じゃあ、次は向かいのお店ねー」


「えっ?」


「ライトがポーションを出すから悪いのじゃ」


「えーっ」



 僕は、いま、冒険者ショップのような店を、はしごしようとしていた。


 さっきの店では、剣をなんだか上手くのせられて5本買った。そのときのお代の一部を店主に言われてポーションで支払ったのだ。だからかはわからないけど、剣を収納する魔法袋をサービスでもらえた。



「同じ物を扱う店の片方だけにポーションを渡すと、客のバランスが崩れちゃうのよ〜」


(なるほど…)


「あの店主は、始めからライトのポーション狙いだったんちゃうか?」


「はよ、魔法袋を買って、晩ごはんを食べに行くのじゃ」



 僕達は、向かいの冒険者ショップのような店に入っていった。すると、さっき、表で、タイガさんと剣を試していたときにずっと見ていた通行人らしき人がいた。


「いらっしゃいませ。剣は購入されましたか?」


「あ、はい」


(通行人じゃなくて、お店の人だったんだ!)


「さっき、ずっと見とったんか」


「ははっ。ええ、おもしろそうだなと思いましてね」


「商魂たくましいやんけ。見てますアピールされたら、買い物を分散させるしかなくなるからな」


「ありがとうございます」


(否定しないんだ……図星なのかな)


「小さめの魔法袋は、ありますか?」


「ん?ライトくん、小さめがいいの?」


「はい。売り物だけを入れる魔法袋が欲しかったんですよ」


「はい、こちらに取り揃えておりますよ」


「あ! このタオルは?」


 僕は、コペルの旗だけでは行商しにくいから、ポーション屋だとわかる印を探していた。

 クレヨンっぽいもので描いた、可愛らしい大きな瓶のマークが入ったタオルを見つけた!


「それは、少し前の祭で配った残りなんですが?」


「売り物じゃないのですか? 僕、これ欲しいです」


「こんなものでよければ、どうぞ。差し上げますよ」


「ありがとうございます!」


「こんなタオル、何に使うのかしら?」


「栄養ドリンクの瓶か? 目印に使う気やろ」


「はい! 何の行商人か、わからないと声をかけてもらいにくいので…」


「まぁポーションには見えへんけどな、何かの瓶を売ってるくらいは、わかるやろ」


「そんな目印に使ってくれるんですか!」


「え、あ、構いませんか?」


「もちろんです! この絵、うちの子が描いたんですよ。花を描くようにと頼んだのに、出来上がりが花瓶の方でして…」


「花瓶なんですね」


「ええ。なんだか栄養ドリンクの瓶みたいですがね」



 そして、魔法袋を何種類か出して見せてもらった。中に入る容量がわかるようにと、箱で説明を受けた。そしてポーションなら、何本入るかも教えてくれた。


 一番小さい物でも、5〜6千本くらいは余裕だというので、一番小さい物にした。


 中身が表示できるものが欲しかったが、それはダンジョン産などの特殊な物になるので、地上じゃないと手に入らないと言われた。


 ここの居住区では、中身をサーチする魔法を使う人もそれなりにいて、中身の表示機能がついて高い物は売れないらしい。



「他には、必要な物はないですか? できれば銀貨50枚くらいの買い物をしていただけると…」


「向かいのお店に、ポーションが50本渡されたのを見てたのねぇ〜」


「あはは、偶然、見えてしまいまして」


「はぁ? 見えたんちゃうやろ? 『見た』んやろ」


「あははは」


(この人、ほんと、商魂たくましい…)


「じゃあポーション50本、買ってくださいますか? 1本銀貨1枚ですが」


「あ、はいはい! もちろん! 仕入れさせていただきます!」


「じゃあ、魔法袋、一番小さい物を2つお願いします」


「かしこまりました」


 僕は、店のカウンターに、モヒート風味のポーションを50本出した。魔法袋が1つ銀貨20枚だったので、差額の銀貨10枚を受け取った。


「よかった! ありがとうございます」


「こちらこそ。あの、ダンジョン産の魔法袋って、ロバタージュにもありますか?」


「常時あるかはわかりませんが、魔道具の店をまわれば、見つかると思いますよ」


「わかりました。ありがとうございます」





「買い物が終わったら、晩ごはんじゃ!」


「あ、はい。お待たせして、すみません」


 店を出るとすぐ、女神様はズンズンと歩きだされた。ちょっと小走りでついて行くと、見慣れた場所に出た。

 他のふたりは行き先がわかっていたのか、のんびり歩いて来ていた。


「どっちにするかの〜」


 女神様は、ふたつの店を見比べながら、悩み始めてしまったらしい。そこに、他のふたりが追いついてきた。


「なんや? まだ決まってへんのか」


「いろはちゃん、あの季節のパフェを制覇するのは諦めたのかしら?」


 すると、女神様は、ハッとした顔で、回れ右をしてカフェ風の店の入り口に向かわれた。


「ふふっ。決まったみたいねー」


「おまえが誘導したんやんけ」


「だって、リュックの話とか、個室の方がいいでしょ? ポーション整理するにも、ね〜」




「いらっしゃいませ」


「いらっしゃったのじゃ! 個室は空いておるか?」


「はい。どうぞこちらへ」


 店員さんに案内されて、個室に向かう。あれ? この前に来たファミレス風の店かと思ってたら、なんだか少し違う。ファミレス風には違いないが…似た店が多いのかな?


 席に座るとすぐ、女神様はメニューを取り、その裏表紙に釘付けになってらっしゃる。


「いろはちゃん、デザートより先に、ごはんでしょう?」


「それは、ナタリーと同じものでよいのじゃ」


「ふふっ。じゃあ、私はライトくんと同じものにしようかしら?」


(なんですと? メニュー選びの責任重大じゃん…)


「僕は、店員さんのオススメにしようかな?」


 ちょうど、水を持ってきてくれた店員さんに助けを求めた。


「えっ? オススメですか? 個人的にはバーグセットとかのガッツリ系かな」


「ガッツリ食べると、デザート食べれないわねー」


「別腹なのじゃ!」


 そして僕達は、バーグセットを注文した。結局タイガさんもメニュー見るのが邪魔くさいとかで、同じものにした。


「さて、リュックから徹底的に、ポーションを出すのじゃ。異空間ストックのせいで成長しないかもしれぬのじゃ」


「じゃあ、私が魔法袋に収納するから、ライトくんはテーブルに出してくれるかしら?」


「あ、はい。助かります」


「いえいえ」


 僕は、さっき買った魔法袋2つをナタリーさんに渡した。クリアポーションと、それ以外に分けてもらうことにした。


 僕はリュックからポーションをすべて取り出し、空になったリュックを背負う。するとすぐにリュックは重くなった。

 取り出して背負うを何度か繰り返し、やっとリュックは空になった。


 ナタリーさんは、数を数えながら振り分けてくれていたが、途中で女神様に邪魔され、わからなくなったという。


「ナタリーさん、ありがとうございます」


「いえいえ。もう! いろはちゃんが、盗もうとするんだもの」


「なっ? 味見じゃ! 見たことないものは味見するのじゃ!」


 ナタリーさんが、魔ポーションをガードしてくれていたのに、女神様は、見たことないポーションの方に興味があったらしい。


 僕は、女神様に、パナシェ風味のクリアポーションを渡した。彼女は、ラベルを確認する前にさっさと蓋を開けて飲んでしまわれた。


「ん? なんだかエールみたいな味じゃな。あまり甘くないのじゃ」


 次にカシスオレンジ風味の火無効つきポーションを渡した。やはりラベルを確認せず、さっさと蓋を開けて飲まれた。


「ふむ。こっちの方が甘いのじゃ。じゃが、コーヒー牛乳の方がもっと甘いのじゃ」


(あ、そうだ、やけど芝居の分…)


 僕は、魔法袋からカルーアミルク風味の魔ポーションを3本取り出した。


「これ、やけどのときの分と、さっきのよくわからない芝居の分です」


「うむ。3本か…。あとどれくらいあるのじゃ?」


「えーっと」


 僕は、魔法袋から、魔ポーションをすべて出した。うわっ! 91本もある。うでわが47本だから、53本をうでわに移した。残り38本。


「魔法袋には、38本あります」


「うでわは、100本じゃな?」


「うっ……はい」


「ふむ。ライト、妾に教えてほしいことはあるのか?」


「へ? いきなり突然、どうされたのですか?」


「コーヒー牛乳争奪戦じゃ!」


「は?」


「あらあら…」


「なんや? それ」


 と言うと女神様は、急に固まってしまった。あれ? ナタリーさんとタイガさんも、じっとしてて、3人とも念話? 何かあったのかな…。



 僕はその隙に、魔法袋から、クリアポーションをうでわに400本移し替えた。

 よし、これで、うでわの中身が覚えやすくなった。魔ポーションが100本、他の3種が500本ずつだ。


 あと、女神様と交換した魔力1,000回復の魔ポーションが3本入っている。確かあと1本は魔法袋に入っていたよね。


(魔法袋の中身も数えようかな?)


  いや、でもモヒート風味なんて数千本あるよね。もともと2,000本以上あったはずだし…たぶん。

 やっぱり、魔法袋も中身がわかるのが必要だよね。でも…高くて買えないかもしれないなぁ。


(あ、みんな動き出した?)


「あ、ライトくん、ごめんなさいねー。急にみんな黙っちゃったかしら?」


「はい。何かあったんですか?」


「うん、ちょっとねぇ」


「隠しても、どうせわかることやで」


「だけどねぇ」



「それより、まずは、コーヒー牛乳争奪戦じゃ!」


「えっ? また同じセリフが…」


「妾に教えてほしいことは?」


(今の沈黙が気になるけど…ナタリーさんは隠したいのかな)


「女神様は、サーチ魔法は使えるのですか?」


「当たり前じゃ」


「じゃあ、魔法袋の中の3種の本数が知りたいです」


「なっ?邪魔くさいことを…。ッチ、魔法袋をこちらに見せるのじゃ」


(舌打ち?)


「はい」


 女神様は、手から白く淡い光を出して、魔法袋にかざしてらっしゃる。


「うー、『P-I 』6,895本、『F10 』3,011本、『C10 』5,588本、なのじゃ……疲れたのじゃ」


 そして、テーブルに突っ伏し、右手の手のひらを上にして、僕の目の前に置かれた。


(これは、魔ポーションくれ、ってことだよね)


 僕は、魔法袋からカルーアミルク風味の魔ポーションを1本取り出し、手のひらに置いた。その瞬間、手のひらは、パーからグーになった。


「まずは、1本取ったのじゃ!」


 そう言うと、すぐに蓋を開けて、飲み干された。


(ほんとに魔力を使って疲れたのかな?)


「魔法袋 3つの合計ですか?」


「そうじゃ。もともとの方は4,000本くらいしか入っておらぬから余裕じゃが、買った小さい方はパンパンじゃ」


「もっと大きいのにすれば良かった…」


「は? うでわに移せばよいのじゃ! うでわのアイテムボックスは、無限じゃ」


「えっ? そうなんですか!」


「そうなんじゃ」


 そう言うと、また、手のひらが出てきた。


「えっ? 今ので1本ですか?」


「争奪戦タイムじゃ!」


 僕は仕方なく、また1本、魔ポーションを手のひらに置いた。


(早く争奪戦タイム、終わってくれないかな…)

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