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64、女神の城 〜 リュックの異空間ストック

 僕は、タイガさんと共に、ギルドの外へ出た。


 ギルドは、とても居心地悪く、ものすごく長い時間を拘束されていたような気がしていた。

 タイガさんと僕は、街の中を門に向かって、ゆっくりと歩いていた。


「おまえ、なんか顔つき変わったな」


「えっ? そうですか?」


「あぁ、まぁいろいろと、あちこちから無理難題を押し付けられとったら、そうなるわな」


「ん? 変な顔ですか?」


「いや、なんか急に老けたんちゃうか?」


「ええーっ?」


 タイガさんは、自分の頭をガシガシと かいて、なにかを考えているような顔をしていた。


(ん? なんだろ? あ、念話してるのかな?)


「そういえば、おまえ、ギルドランク上がって、能力測ったやんな。ちょっと見せてみ〜」


「え、あ、はい…」


 僕は、登録者カードに魔力を流してステイタスを表示し、タイガさんに渡した。


「おわっ! なんや、これ?」


「えーと、どの数値のツッコミでしょうか」


「体力760? チビっ子か」


「あーそこですか…。けっこう歩いたりしていたのに、上がらないんですよ」


「まぁ、おまえは、半分幽霊やからな。初期体力が低いのは、仕方ないけどな……ひどすぎるで」


「はぁ…」


「しゃーない、ランク上げ、付き合ったるわ」


「え?」


「…おまえなー。なんや? その驚きと疑いの眼は」


「いえ、突然で驚いて…」


「アホか。一応、俺はおまえの世話係やからな。こんな体力やと、何か かすっただけで死ぬやんけ」


「ですよね…」


「剣は?」


「買おうと思ってて、まだ買ってないです」


「おまえ、いくつでこっちに来たんや?」


「あ、27歳でした…」


「じゃあ、中学や高校の体育で剣道やったことあるよな?」


「はい…あまり覚えてないですけど…」


「まぁそうやろな。その感じやと、ケンカもしたことなさそうやな」


「口げんか程度ですかね」


「そんなもん、ケンカとは言わへんで」


「はぁ」


「とりあえず、ババアの機嫌をさっさと直して、ミッション行こか〜」


「はい!」


「体力、最低でも3,000に上げるで!」


「えっ…スパルタ?」


「なに言うとんねん? 俺の1割にもならんで?」


「タイガさん、どんだけあるんですか」


「さぁな〜」


「秘密ですか…」


「おまえが体力3,000超えたら、カード見せたるわ」


「…がんばります」



 そして、ロバタージュの街の門をくぐって、外に出た。すると、そこには、あの猫っぽい女神様がいた。


「なんや、おまえ、迎えに行けぬとか言うとったんちゃうんか」


 だが、この猫っぽい女神様は、喋れないので…ただジーっと睨んでいるだけだったが。


 気づいたら、真っ白な光に包まれていて、僕はグラッと強いめまいを感じた…うっ気持ち悪い。

 そして僕はいつものように意識を手放した。





「起きるのじゃ! 起きろと言ったら起きるのじゃ!」


「もう、いろはちゃん、そんなこと言っても仕方ないじゃないの〜」


「なぜタイガは平気なのに、ライトはすぐ寝るのじゃ!」


「こいつ、体力ないからやろ。その辺のチビっ子より低いで」


 僕は、あまりにもにぎやかすぎる声に頭が痛くなって目が覚めた…。


(うっ、気持ちわる…)


「やっと起きたのじゃ! 寝すぎなのじゃ。何回起こしたかわからぬではないか」


「ううっ…すみません。声、もう少しポリューム下げてください。頭いたい…」


「あらあら、お腹減ってたのかしら? 気持ち悪そうねぇ」


「確かに腹は減ってるやろな」


「そんなことより、リュックを見せるのじゃ!」


「え、あ、はい」


 僕は、リュックを下ろして、女神様に渡した。


「どわっ! 重いのじゃ、コイツ、ライト以外には意地悪をするのじゃ。ライトがきちんと教育しないから悪いのじゃ」


 そして、中を開けようとされたが、リュックくんの紐がほどけないらしい。


「ライト、リュックを開けるのじゃ。コイツ、反抗期確定なのじゃ!」


(は? 反抗期って言った?)


「いろはちゃん、ライトくんが困ってるわよ〜。説明してあげないとー」


「あ、ナタリーさん、こんにちは」


「ふふっ。こんにちは〜」


「ライト、妾には、こんにちはを言わぬのか?」


「え、あ、イロハカルティア様、こんにちは」


「うむ。じゃ、さっさと開けるのじゃ」


 僕は、リュックを開けた。うん、どっちゃり入ってる。でも重いだろうけど、女神様が騒ぐほど持てない重さではないよね。


 あれ?でもこんだけ入ってたら…何十キロかな? これを片手で持てるほど僕には力はない。僕が持つと軽くなるのかな?


「何を呆けておるのじゃ」


「いえ、中身の重さと、リュックくんの重さが違う気がして…。そういえば、これだけ瓶が入ってれば持てないくらい重いんじゃないかなって」


「何を当たり前のことをいまさら言うておるのじゃ? 頭でも打ったのか?」


「…いえ、打ってません」


「いろはちゃん、説明できてないんじゃないのぉ?」


「なっ? 妾は、ちゃんと説明したのじゃ! 完成品をさっさと移し替えないライトが悪いのじゃ!」


「あ、確かに完成すると重くなって知らせるって聞きましたが」


「ほれ、やっぱりライトがどんくさいのじゃ」


「でも移し替えなくても、重さは変わらないので…」


「当たり前なのじゃ! どんどん重くなると背負って歩けないのじゃ。お知らせ程度の重さにしかならないに決まっておるではないか」


「へぇ、そうだったんですね」


「さっさと移し替えないと、素材だけじゃなく完成品も異空間にストックされてしまうのじゃ」


「異空間にストック?」


「そうじゃ。そうなると、リュックは中身を出してもすぐに重くなるのじゃ。リュックに空きができるとストックがリュックに戻るのじゃ。リュックが完成品だらけだと生産量が減るのじゃ!」


「えっ? まじっすか」


「だから、重くなったらすぐに出せと言ったではないか」


「えっと…そうでしたっけ…」


 僕は、とりあえず、リュックからポーションを出して、魔法袋に入れていった。中身をすべて移し変えてもリュックは空のままだった。


「異空間ストックはなさそうです」


「背負ってみるのじゃ」


 ん?触れているだけでもリュックくんには魔力流れてるんだけどなぁと思いつつ、リュックを背負った。

 特に軽いままで……おわっ!


「異空間ストックされとるやんけ」


 僕の表情を読み取ったタイガさんに、すかさずツッコミを入れられた。


 僕は、再びリュックを下ろして中を見た。うん、どっちゃり入っている。


「あらら、その様子だと、今の魔法袋では足りなくてなるかもしれないわね」


「買い物に行くのじゃ。ついでに晩ごはんなのじゃ!」


「あ、はい」





 城の居住区には、商業エリアがある。僕は飲食店が並ぶ場所と、タイガさんのコンビニには行ったことがあった。それぞれの店の種類ごとに区画が分かれているようだった。


 この居住区の商業エリアは、居住区に住む人達の唯一の買い物場所だから、競争はないのかと思いきや、逆なのだそうだ。



 ここの住人は、女神様の転生者、すなわち神族で『落とし物』係の役割を終えた隠居者と、その家族しかいない。

 地上や地底で暮らす隠居者も多いが、ここにも住む場所があり、頻繁に行き来する者もいる。


 ただその数は多く、女神様自身も住人が何万人いるかわからないという。約4〜5千年に渡って、毎年数人の転生者が増えているそうだ。


 そして、神族はそもそもの寿命が長く、さらに一定のレベルに達すると、時に逆らう術を身につける者も多く、寿命がないに等しい者もいるという。



 神族は基本的に人族よりも高い能力を持ち、地上や地底にも自由に行き来することができる者が多い。

 居住区の商業エリアの店に魅力がなければ、みんなこの星の他の街へと買い物に行ってしまうのだそうだ。


 だから、この居住区の商業エリアは、おそらくこの星で最も客の目が肥えていて、商業が難しいのだという。



「とりあえず、基本装備をいろいろ扱っているお店がいいんじゃないかしら〜?」


「あー、チビっ子が御用達の店やな。それでええやろ」


(チビっ子…)


「ライトくんは、必要な魔道具さえ持ってないから、まずは揃えることが大事よね〜」


「高い店やと、貧乏な行商人には手も足も出んやろからな」


(た、確かに…)



 そして、僕は、この居住区のチビっ子が御用達の店だという冒険者ショップのような店に来た。

 なるほど、チビっ子が……いっぱい居る。


「「わっ! いろはちゃんだ! 」」


「いろはちゃん、あーそーぼっ」


 女神様を見つけたチビっ子達がドッと押し寄せ、あっという間に もみくちゃになっていらっしゃる。


(す、すごい人気!)


「うむ。すまぬが今日は遊べぬのじゃ、また今度、みなと遊ぶ機会を作るのじゃ。楽しみにしておるのじゃ!」


「「わぁい! 」」 「いつー?」 「あしたー?」


「ふふっ。来週くらいかもしれないわね〜」


「わかった!」 「来週!」 「ナタリー様も?」


「ふふっ。そうねぇ、ご一緒しようかしら〜」


「うん! ご一緒しよう」 「わぁい」

 

 凄まじいチビっ子パワーに、僕はちょっとクラクラしてしまった。池の鯉にエサをやると、いっせいに もみくちゃに寄ってくる、僕はなぜかそんな光景を思い出していた。


「おい、ババア達がチビっ子を惹きつけてる間に、買い物するで」


「あ、はい」


 店の入り口にチビっ子達が群がっているおかげで、店内は、数人の学生っぽい人達だけになっていた。


「タイガ、珍しいな。もしかして、その子?」


 僕達が、店内に入ると店主らしき人が近寄ってきた。


「おう、噂のビビりのライトや」


「えっ? 僕、ビビりで噂に?」


「ライトさん、いらっしゃい。あはは、タイガの言うことをまともに受け取っちゃダメですよ。珍しいポーションを作られるリュック持ちとして噂になってるんですよ」


「あー、そうなんですね」


「俺は、ほんまのことを言うただけやで」


「えっ…」


「そんなことより、チビっ子用の剣で、魔耐性のあるやつ、置いてるか?」


「はい、ありますよ。使用属性は?」


「全種、あと闇耐性の高いやつな」


「ライトさん、全種使いですか! じゃあ、魔剣を覚えれば、けっこう戦えるようになりますよ」


「え、僕はステイタス残念なので…」


「あ、すみません…私には見えていまして。物理攻撃力90ですね。でも魔剣ならダメージ量は10倍、弱点つけば100倍いけますよ」


「へ? 物理攻撃力50かと……あ、本来の数値が90?」


「地上で50でしたか。半分くらいになってしまうんですよね〜。すぐご用意しますから、少しお待ちください」


(物理攻撃力90かぁ…50の倍の100じゃないんだ)

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