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46、魔族の国の入り口 〜 ふたりのチビっ子

 いまねぇ、私はライトくんと魔族の国の、イーシアへの出入り口にいるのよ〜。

 外から妙な魔物が入り込んできて、再生の池 二クレア池が占領されたって聞いたから、ライトくんに助けてもらってサクッと片付けるつもりだったのよー。


 なのに、バカ兄貴が暇つぶしにケンカ売りに来て、すっごく疲れたわ〜。

 それに、ライトくんが、機嫌悪くなっちゃって…。まぁそうよね、急に何も説明しないで連れて来ちゃったし、バカ兄貴がウザイし、誰でも機嫌悪くなるわよねー。

 でも、ライトくん、頑張ってたわ〜。バカ兄貴の脅しも突っぱねてたのよー。えらいえらい。


 いろはちゃんが言うように、このまま育てばライトくんは、他の星の神々に対する切り札になりそうだわ〜。

 ただ、ちょっと闇が暴走しそうになる点だけは注意しておかないといけないわねー。ライトくんはストレスがたまると…深き闇が溢れてきちゃうみたいだもの…。お姉さん心配だわ〜。




「ライトくん、イーシアに戻るってことでいいかしら?」


「はい!」


「ふふっ。急に元気になったわね〜」


「え、あ、いえ…あはは」


「じゃあ、そこの光が上に昇ってるところに……え?もう、いやーねー、なぁに?」


「ん?どうしたんですか?」


 ナタリーさんが突然、止まった。イーシアとの光の通路の手前に、ふたりの人影が見える。

 ふたりとも、待ちくたびれたという顔で、座り込んでいた。



「あー!やっと来た! ナタリー、なんで家に寄らないで帰るわけ?」


「そーよ、そーよ」


「次は、ちゃんと遊ぶって約束したじゃん」


「そーよ、そーよ」


「なんでも買ってくれるんじゃないのかよ」


「そーよ、そーよ、ん?そうなの?」



 目の前に現れたのは、ふたりのチビっ子。男の子の方がお兄ちゃんなのかな?いや女の子の方が少し背が高いかな? 見た感じは5〜6才?黒い翼が生えてて…たぶん悪魔族?


「今日は、疲れちゃったから…。また今度ね〜」


「えーっ!ヤダ!ナタリーのバカ!」


「そーよ、そーよ、ん? ナタリーはバカじゃないよ?」


 僕は、チビっ子の登場で、たぶんポカンとしていたんだと思う。ナタリーさんの…親戚?かな?


「こんなボーっとしたヤツより、俺達と遊ぶ方がいいじゃんか」


「そーよ、そーよ、ん〜、あんまり悪口はダメよ」


「なっ? 悪口じゃねーよ」


「はいはい、もう困った子達ねぇ…こんな所にいつからいたの? 門番がよく入れたわね〜」


「爺ちゃんが、ナタリーが来てるって出てったときからだよ。ここの出入り口から入ってきたのはわかってたから」


「あら、かなりの時間、待ってたのね」


「待ってたから、遊ぶんだ!」


「そーよ、そーよ」


 このふたりのチビっ子は、全く引く気はなさそうだった。会話の内容からすると、大魔王様の孫?といったところだろうか。


「はぁ、困ったわねー」


「ナタリーさん、ご親戚ですか?」


「親戚というか、まぁ一族ね〜。バカ兄貴の孫の孫くらいかしら? 」


「えっ…」


「あ! あーもう、お姉さんはそこまで年寄りじゃないからね〜」


「あ、はい」


(女性の年齢の話題は…どう答えるのが正解なのか僕には全くわからない)


「どうしようかしら? ライトくん、イーシアで待ってる?」


「えっと…うーん…」


「えー! ライトも遊ぶだろ?」


「そーよ、そーよ」


「俺の配下にしてやってもいいんだぞっ」


「そーよ、そーよ、ん?なんで?」


「こほん。だって、俺は将来有望だって、爺ちゃん言ってたから」


「ふぅん。あたいは?」


「んー、自分で聞けばいいじゃん」


「えーっ。ずるい」


 僕は、チビっ子のパワーに押されていた。もう地上に戻れると思ってたから、気を抜いていた…。

 でも、チビっ子に対しても、強気に出るのはなんだか違う気がした。


「ねぇ、名前教えてくれる?僕はライトです」


「知ってるよー。俺はクライン様だぞっ」


「あたいもライト知ってるよー。あたいはルーシーだよ」


「クライン様と、ルーシー様、だね」


「おうっ」「うんっ」


 名前を呼ぶと、ふたりがスリスリと寄ってきた。人懐っこい。いや、目つきがイタズラを考えているような…これは作戦なのかな?


「あらら、ライトくん、もう手懐けちゃったのね〜」


「へ?いえ、別にそんな…」


「家に来るだろ?」


「だろ?だろ?」


(やっぱり、作戦…だよね。魅了とか、そういう系の…?)


 ナタリーさんを見ると、お手上げよっていう仕草をされた。ナタリーさんもチビっ子のパワーには勝てないんだな…。


「ライトくん、ごめんね。ちょっと寄り道してもいいかしら?」


「はい。断わるのは無理そうですもんね」


「この子達が待ってた時点で、無理だと思ったわ〜」


「あはは、待ちくたびれた感がハンパなかったですしね〜」


「じゃあ、アトラちゃんに、見張り完了のお話をするから、ちょっと待っててね〜」


「はい、じゃあ、僕はリュックが重くなって来たので、ちょっと売り物を入れ替えますね」


「はいはーい」


 僕は、リュックを下ろし、中を開けた。うん、ガッツリ入ってる…。


 一応、ラベルを確認しながら魔法袋へとポーションを移していった。魔ポーションは、10本出来ていたのでこれはうでわのアイテムボックスへ入れた。


 他の2種は数を数えながら魔法袋へと移していたが、途中でチビっ子に話しかけられてわからなくなってしまった。ま、いっか。


「それ、何?」


「それ、何?何?」


「ポーションですよ。体力を回復する飲み物なんです」


「へぇ〜、初めてみた」


「うん、初めてみた」


「ずっと待ってて疲れてるなら飲んでみますか?」


 すると、ふたりはめちゃくちゃ目をキラキラさせつつ、ナタリーさんの方をチラチラ見ている。

 知らない物は、口にしてはいけないと教育されているのだろう。


 僕は、ふたりに2種どちらも1本ずつ、渡した。


「ラベルに魔力を少し込めると説明書きが出てきますよ。どうぞ」


 するとふたりは、両手でパッと受け取り、ラベルを触って、ふたりで話し合いをしている。


(なんだか、おとなしくなったな。あははっ)


 僕は、この隙にと、せっせとリュックから魔法袋へとポーションを全て移した。残念ながら新作は出来ていなかった。


 そして、移し替えをしていて、ハッと気づいてしまった。同じ作業をしていると、突然、何かを思い出すこと、あるよね。うん。


(塩コショウやナイフ…もしかしてイーシアに置き忘れた?)


 イーシアで、魔法袋の中身を全部ぶちまけてしまって、その時に、塩コショウやナイフを拾った記憶がない! まさか失くした…?


 僕は、魔法袋に、塩コショウとナイフって言ってみた。すると、塩コショウ2個とナイフが出てきた。


(あれ?失くしてない )


 あ、アトラ様が集めてくれたのを放り込んでたときに小瓶に紛れて拾ったのかな?もしくは服や旗と一緒に収納した?で、でもよかった。失くしてなくて…


 僕は、ホッとした。ナイフなんか草原に落としたらアブナイし、塩コショウなんて、この世界の物じゃないから、誰かが拾ったりしたらマズイもんね。


(あ、砂糖は? 1つはリュックだけど、1つは料理に使うかもと思って、魔法袋に入れてたはず.)


 僕は、魔法袋から砂糖を出そうとした。でも出てこない。砂糖カモンと言ってみた。でも出てこない…


 砂糖なんて、1キロもあるんだから、何かに紛れて魔法袋に戻った…なんてことは、よく考えたらありえない。


(え?でも、草原は見渡したけど…砂糖なんて しまい忘れたら気づくはずだよね?どういうこと?)


 僕は、塩コショウとナイフにホッとしたけど、なぜ砂糖が消えたのかわからなかった。草原に白い砂糖は絶対に目立つよね…。


(あ!いまナタリーさんがアトラ様と話してる?)


 僕は、ナタリーさんに、アトラ様に聞いてもらおうと思った。砂糖は、タイガさんのコンビニで買ったけど、たぶんこの世界にもある物だから、失くしてもマズイことにはならないだろうけど…。


「ナタリーさん、あの、お話は…」


「あ、うん、アトラちゃんは終わったんだけど、いまちょっと他の隠居者と話してるから……もう少し待ってくれるかしら?」


「は、はい」


(……終わったんだ…)


 チビっ子達を見てみると、まだポーションで遊んでいる。ラベルが読めないのかもしれないなぁ…でも、キャッキャと楽しそうだから、邪魔するのも悪いかな?


 すると、僕がふたりを見ていたのに気づいたルーシーは、クラインをツンツンと突いた。そして何かコソコソと話している。


「ライト、おまえ、暇なんだろ?」


「暇なんだろ?」


「えっ?あ、はい。ナタリーさんはまだお話中みたいですしね」


 するとふたりは、またコソコソと内緒話をしている。このふたりは、兄妹なんだろうか?


「あの、おふたりって、お友達なんですか?それとも…」


「ルーシーは、俺のいいなずけってやつらしいぞ」


「そーよ、そーよ、ん?いいなずけって何?」


「わかんない」


「えーっ!クラインにもわからないことあるの?」


「うっ…少ししかないぞ!」


「よかった〜」


「おうっ」


 僕は、危うく いいなずけの説明をしそうになってしまった。ヤバイ…。クラインが知らないことを説明しちゃダメだな、あははっ。


「おい、ライトは、いいなずけってやつ、いるのか?」


「いるのか?」


「えっ?僕にはそんな人、いないですよ」


「そうか。俺はいるから、俺の方がエライな!」


「あたいは?いるの?いいなずけってやつ」


「わか…うーん…爺ちゃんに聞いてみればいいじゃん」


「じゃあ、聞いてみるっ」


「おうっ」


 ヤバイ、ふたりがかわいい。僕は、にやけないようにするのに必死だった。



「お待たせ〜。ライトくん、さっきの…もしかしてアトラちゃんとお話したかったのかしら?」


「え、あ、はい。あの…」


「いや〜ん、ごめんなさぁい。ふふっ」


「いえ、そういう意味ではなくて、あの、イーシアで砂糖を失くしてしまったみたいなんです」


「ん?どういうこと?」


「イーシアで、魔法袋の中身を全部ぶちまけてしまって…整理して、しまい忘れがないか確認もしたはずなのですが、砂糖は、そういえばぶちまけてから見た記憶がないんです」


「あら…じゃあ、さっきアトラちゃんが言ってた蜜塚って…そのせいね〜」


「えっ?なにか異変が?」


「うーん、草原から森に入る所に、大きな蟻の巣があるらしいんだけど、その巣が、蜂蜜のような蜜を被った状態になってるらしいのよ〜」


「それ、マズイのですか?」


「ん〜、一部の虫が大繁殖するとマズイかもね〜」


「そんなところに、なぜ砂糖が?」


「あー、ぶちまけたときに、盗られたんじゃない? 蟻と言っても、イーシアの蟻は魔物だからね〜」


「どうしよう…」


「まぁ、気にしなくて大丈夫よ〜。虫が大繁殖したら、ギルドが動くでしょうから」


「それならいいんですけど…」


「じゃ、ライトくん、ごはん食べに行くわよ〜」


「えっと、お家ですか?」


「まさか!バカ兄貴いるし…。 まぁウチの村には行くけど…あの子達でも入れる店で、お食事してから地上に戻りましょう」


「はい」


(魔族の国のごはんかぁ。ちょっとワクワクするよね)


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