44、二クレア池 〜 猛毒を撒き散らす魔物
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ブォコッ! シューッ!
突然、二クレア池から、大きな音と共に何かが空気中に放出された。
ブォコッ、ブォコッ…
大きな泡ぶくが、出来てはハジける…。
今、大量の猛毒が空気中へと放出されているのだ。
ここは、魔族の国の、死霊やスケルトンが暮らす村。この村の中心には、二クレア池と呼ばれる 月明かりの下でも鮮明な赤色だとわかる大きな池があった。
この池のまわりには、再生を待つ魂が放つぼんやりとした灯りがいくつも浮かんでいて、幻想的な不思議な雰囲気をかもしだしていた。
血池とも呼ばれるこの池は、死んだ魔族が生まれ変わることのできる特殊な場所だった。
魔族には、自分で自己転生ができる者もいたが、知能や魔力の低い者にはそれはできない。
死んでもまだこの世界に未練がある者は、屍をこの池に投げ込むことによりアンデッドとして生まれ変わることができるのだ。
いま、この池が、星の外から来た何者かによって占領され、そして猛毒を撒き散らす源となっているのだった。
「また、始まった…」
「さらにこの辺りの空気は悪化するので、お気をつけて!」
ナタリーさんと大魔王メトロギウス様の兄妹げんかに呆然としていたこの地の住人達だったが、いまは、池の変化に警戒していた。
ちょくちょくこのような泡ぶくが出てきて、空気を汚染しているのだそうだ。
「やはり、直ちに爆破して焼き払わねば」
大魔王メトロギウスは、手を天にかざし、毒消しの魔法を唱えた。このあたりの空気中の猛毒を一瞬で消し去ったが、すぐにまた、泡ぶくがハジける。
「爆破すると、ゼリー化した猛毒もかなりの範囲に飛び散るわよ。その範囲をすべて封鎖し、残らず解毒できるわけ?」
「多少の被害は、この際、仕方のないことだ」
「これを私達が始末できれば、神族への態度を改めるかしら? 貴方にできないことが出来るなら…。チカラのある者には従うのよね?」
「ナタ…じゃなかった、女神様、出来るものならやってみるがよい。どうせ爆破して焼き払うしか手はないのだ。おまえが、ここまで偉そうに言って、失敗したときにどんな顔をして誤魔化すのか…。くっくっ、楽しみだよ」
(ちょ、ちょっと…もしかして僕……。なんだか責任重大すぎるような…)
ふたりはキッと睨み合っている。この地の住人達が、どんどん集まってきて遠巻きに様子を見ていた。
「ライト様、あの…」
先程からいろいろと教えてくれている死霊の人が、僕に声をかけてきた。ん?人?…ま、いっか…
「はい」
「あの…このおふたりは、その…このままでは…」
「ケンカの仲裁を、ということですよね」
「はい、こうなると口げんかでは収まらなくなるので…」
(まじか…。ナタリーさんって、タイガさんもびびってるよね? そんな人が暴れたら、それこそ地形が変わるんじゃ…やばい)
「ナタリーさん!」
「ん?なぁに?」
「ついでに、ビー玉も拾ってきていいですか?」
「え? あ、あー、池の中ね? 落ちてるのね」
「はい、光が3本ほどあります」
「そう、任せるわ」
「じゃあ、行ってきます。ケンカしないで様子を見ててくださいね」
「…わかったわ〜」
「おい、本気か? 猛毒のゼリーは触れるとまとわりつくぞ? いくらガードしてもガードを溶かすのだぞ」
「あ、はい、気をつけます。では!」
僕は、池の方へとふわふわ飛んで行った。
ただ、飛び込む前に一応確認しておこう。僕は半分霊体化を解除した。そして池の水に触れてみた。
池の水、いやゼリー、というか寒天に近い…。かなり固い。そして、池のまわりに不思議な幻想的な灯りがあるから夜なのによく見える。
(なんだか、ぶどうの寒天みたい…)
池の水は本来なら鮮明な赤色のはずだが、猛毒を吸収したためか、赤紫色になっていた。
女神のうでわは、通常の毒や呪いは弾く。そして今ライトはあらゆるバリアを張っていた。
それにそもそもライトにはどんな毒も呪いも効かない。しかし心配性のライトは、過剰に防御する癖があった。
(マグマよりはたぶん移動しやすいよね)
僕は、完全に霊体化!そして念のため透明化!
そして、重力魔法を使って、池の中へと沈んでいった。
池の中は、あちこちに小さな毒の気泡のようなものがたくさんあった。少しずつ気泡同士がくっつき、だんだん大きな気泡になりながら上に上がっていく。
他には生き物らしきものは居ない。水面の方を見ると、月明かりと池のまわりの不思議な灯りとでキラキラしていて、とても綺麗だった。
僕は、まずビー玉、すなわち宝玉を集めることにした。底にへばりついて寝ている魔物以外は、何もいないので透明化を解除し、綿菓子状態でふわふわと泳いでいった。
(うん、マグマより動きやすいな)
ビー玉は、池の側面にひとつ、底に2つあるようだった。
まず、側面のものと、底のうちの1つを拾った。もう1つは、魔物の近くにある。
とりあえず落とさないうちにと、池の側面の壁の中へと入った。土の中を少し進むと、大きな木の根があった。
その中に空洞があるのを『見た』僕は、念のため自分にシャワー魔法をかけてから、木の空洞の中へと入った。
土の中を進むうちに毒ゼリーは僕の身体からはがれたはずだが、もし残っていると木に毒を持ち込んでしまう…念には念を入れなきゃね。
そして霊体化を解除した。
(女神様!イロハカルティア様! ビー玉2ついれますよー。毒ついてるかもしれませんから気をつけてくださいねー)
そして僕は、うでわの中の小箱に、ビー玉2つを入れ、うでわを閉じた。
『な、なんじゃ?これは!ヌルヌルしておるではないか! 気持ち悪いのじゃ』
(魔族の国の、池の中に落ちてたんですよ。たぶんヌルヌルは毒です、軽くシャワー魔法したんですが…)
『毒じゃと? ふむ…。うぉおぉ〜ライト! 妾は…』
(女神様にその程度の毒は、効かないですよね)
『むむぅ…なんじゃと? ノリが悪いではないか。おぬし、頭でも打ったのか?』
(打ってません…)
『じゃあ、おかしなものでも、く…』
(食ってません…)
『うぬぬ…ライト、ノリが悪いのじゃ! 悪すぎるのじゃ! そんなことでは、青いワンコに嫌われてしまうのじゃ』
(えっ……また覗いてたんですかっ)
『ん?な、なんのことじゃ? わ、妾は、何も知らぬのじゃ、ってことで、またね、なのじゃ!』
(……逃げたよね、いまの…)
『………。』
(…やっぱ覗いてたんだ…そんな気はしてたけど…)
僕は気を取り直して、再び霊体化! もう1つのビー玉を取りに行くことにした。魔物の近くにあるが、ヤツは底にへばりついている…というか埋まっている。
(バリアもがっつりしてるから、近づいても大丈夫だよね)
僕は、そーっと、魔物の近くのビー玉に手を伸ばした。僕は何かを拾うときは手を半分だけ実体化する。
そして、ビー玉を掴んだ瞬間、魔物は僕に気づいた。
(やばっ)
僕は、透明化!して、すぐにヤツから距離を取った。
ヤツは僕を見失って、キョロキョロしている。見つけられずイラついたのか、その場でドタドタと暴れ始めた。ヤツの身体から、毒の気泡が大量に出てきた。
(あ、そういえば、ヤツを引きずり出してって言われてたんだっけ)
僕は、透明化を解除した。すると、ヤツは僕に向かってきた。
(ゲッ!けっこう動き速いじゃん)
僕はまた慌てて、透明化!そしてヤツから離れ、水面に向かった。すると、ヤツは僕を追いかけてきた!
(な、なんでバレたんだ?)
僕は、池の側面の壁の中に入った。
すると、ヤツは、再び僕を見失ったらしく、ゼリーの池でバタバタしている。また大量の気泡が出てきた。
(あー、そっか、ゼリー状だから、動くと振動が伝わるのか…)
僕は、霊体化して透明化すれば、絶対見つからないと思っていたが、こんな場所ではそうもいかないんだな。気をつけなければ…。
『どこへ行った?なぜこの中で生きていられる?いや、死霊か…ここで、いま生まれたのか?』
(なんだ、話できるんじゃん)
「あなたは、何者ですか?」
『壁の中か…』
ヤツは、こちらに向かってきた。僕は壁の中を上へと移動した。ヤツは、僕が元いた場所あたりに頭から突っ込んでいた。
(な、何?アイツ…突撃タイプ?)
僕は、再びゼリーの中に出て、上へと上がって行った。すると、ヤツはやはり気づいて追いかけてきた。
ヤツに追いつかれる直前に、僕は水面から外に出た。
(追いつかれても、たぶん攻撃当たらないけど…やっぱコワイよね)
びびってると、特に魔物は敏感に、その恐怖を感じ取るらしい。僕はヤツの本能的な狩猟意欲をかき立ててしまったらしい。ヤツは、僕を追って池から飛び出してきた。
(うわっ!)
今の僕は透明化もしている。ゼリーの中とは違い、空気の中では、僕の居場所はバレない。
だが、またヤツに池の中に潜られないようにと、僕は透明化を解除した。
すると、ヤツは僕に気づき、ニタリと笑った。
(わっわっ!)
僕は、池から離れるようにして逃げた。そして僕を追いかけようとしてきたヤツは…… ボゥオッ!
ナタリーさんが放った強烈な炎がヤツを包んだ。
そして、ヤツはあっけなく消し炭になった。
「よし、チョロかったわねー」
まわりの住人達は、シーンとしていた。大魔王様も仕留めようとしたようだが、ナタリーさんの方が一歩早かったのだ。大魔王様は、苦虫を噛み潰したような顔をしていた。
「な、ナタリーさん、そんな強かったんですね…。いや強いのは知ってましたけど、タイガさんも怯えてましたけど…うわぁ〜」
「ん〜ライトくん、実体化してくれるかしら?」
「えっ、な、なぜですか」
「だって、綿菓子だと、顔がわからないんだもの」
「えーと…」
(なに?意味がさっぱりわからない…)
僕は、念のために自分にシャワー魔法をかけてから、霊体化を解除した。
そして、恐る恐るナタリーさんの顔を見た。
「あらら、やっぱりねー」
「えっ?何か変ですか?僕…」
「お姉さんのこと、コワイと思ってるでしょ」
「え、えーっと…」
「もう! バカ兄貴のせいで、ライトに怖がられちゃったじゃないの。どうしてくれるのよ!」
「何を言ってるんだ、おまえは? おまえが勝手にやったことだろ。普段から素行が悪いから怖がられるんだ」
「はぁ?訳わからないこと言わないで!」
(また、始まってしまった…兄妹げんか…)
僕は、この隙に、握りしめていたビー玉をうでわの小箱にコッソリと入れた。
珍しく、女神様からの反応はないが、ビー玉はサッと消えた。
(ん?おとなしいな……。なんか気味がわる…)
『なんじゃと?妾のどこが悪いんじゃ! ちょっとしか見ておらぬのに、ひどいのじゃ!』
(…何を見たんですか?)
『わ、忘れたのじゃ!』
(ほんとですか?)
『う、うぬぬ…。青いワンコが…ライトが眠っていたときに、その、あの…チューをしていたのを見ただけじゃ!あとは見てはおらぬ。聞こえてただけじゃ!』
(えっ?僕がじゃなくて…?)
『寝てるやつが、チューできるのか?』
(え? えーっ!?)
「あの、ライト様」
「あ、は、はい」
「おふたりのケンカの仲裁を…」
「へっ?ちゅー…さい? あ、は、はい、仲裁ですね、はい」
(ちょっと、どういうこと? 僕が眠ってたときって…。僕が告白する前?)
僕は、いま兄妹げんかどころではなかった。でも…頼まれると断れない…。うぅ〜




